「インフラ営業って安泰らしいけど、実際の年収は? ボーナスは? やっぱりきつい?」——そんな疑問を抱く方に向け、本記事では仕事内容・年収相場・キャリアパスまで 4000字以内 にギュッと凝縮してお届けします。
さらに「インフラ=堅い・古い」というイメージが先行しがちですが、近年は脱炭素、5G、スマートシティ、データセンター拡張などの社会課題を背景に“成長産業”へと進化中。巨大な公共投資とDX需要を追い風に、市場は安定どころか拡大フェーズに入っています。
とはいえ受注まで半年〜数年に及ぶ長期戦、法律・技術の学習負荷、関係者調整の多さなど「苦労ポイント」も盛りだくさん。本記事では未経験でもチャレンジしやすい理由と、入社後にハマりがちな落とし穴まで包み隠さず解説します。転職・キャリアチェンジを検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
インフラ営業とは
電気・ガス・通信・建設など社会基盤を支えるサービスを法人や自治体へ提案・販売する営業職です。
扱う案件は数千万円〜数十億円規模。単なる“物売り”ではなく、企画段階から完工後まで伴走するコンサル × プロマネ的ポジションと言えます。
具体的な仕事内容
▼課題ヒアリング
老朽化設備や高コストといった課題を抽出。
▼提案書・見積作成
技術部門と連携し、設備仕様・工程表・費用対効果を設計。
▼社内外調整
設計会社・施工会社・金融機関など多様な利害関係者を束ね、契約締結へ。
▼契約後フォロー
工事進捗管理や追加要望対応まで担当。案件終了時には顧客と“戦友”のような関係になることも。
年収・ボーナスのリアル
分野 | 年収レンジ | 賞与目安 | 契約単価感 |
---|---|---|---|
通信 | 400~800万円 | 3~6か月分 | 法人回線:数十万~数百万円 |
エネルギー | 500~1,000万円 | 4~8か月分 | 省エネ設備:数百万~数千万円 |
建設・土木 | 600~1,200万円 | 5~10か月分 | 公共工事:数千万円~数十億円 |
歩合比率は低めですが、案件単価が大きいため上位者には年100~300万円のインセンティブが上乗せされることもあります。
やりがいと「きつさ」
◎やりがい
ポイント | 補足説明 |
---|---|
社会インフラを動かす手応え | 例:自治体の老朽化した水道管更 新を提案し、住民の断水リスクを大幅に減らせた──完工式で「あなたのおかげで安心して暮らせる」と感謝される瞬間は格別。 |
億単位の案件を完走する達成感 | 5年計画のメガソーラー案件など、携わる金額もスケールも桁違い。各フェーズをクリアし、発電開始の瞬間を現場で迎えたときの震えるような高揚感は他職種では味わいにくい。 |
専門知識が“武器”になる実感 | 電気主任技術者や施工管理技士とのディスカッションで自分の技術理解が深まり、次の提案に活きる——学べば学ぶほど営業の説得力と年収が同時に伸びる“自己投資が回収される”職種。 |
景気に左右されにくい安定感 | インフラは公共性が高いため景気後退期でも需要が底堅い。結果が出ればリストラよりヘッドハンティングの声が先に掛かるケースが多い。 |
▲きつさ
ポイント | 補足説明 |
---|---|
受注まで半年〜2年の長期戦 | 四半期ノルマを追いながら同時に2〜3年がかりの公共案件を走らせるため、スケジュール管理とメンタル維持が必須。「短期で数字が出ず自信喪失」しやすい。 |
関係者調整が“多対多” | 発注元・設計・施工・金融機関・行政許認可……メール1通の文言を巡り10人が意見を出すことも。調整が遅れるほど工期延長⇒違約金のリスクが自分に跳ね返る。 |
法改正・技術進化のキャッチアップ | 例:再エネ特措法の改定や5G基地局の規格変更。知らずに旧基準で提案すると“やり直し”で信頼を失う。勉強をサボりづらいプレッシャーが常にある。 |
ライフラインを停められない重圧 | 夜間切替工事で「誤って回線を落としたら病院のICUがストップ」など、失敗=社会問題。ミスゼロ文化に神経を削る。 |
向いている人・向いていない人
◎向いている人
特徴 | 具体エピソード |
---|---|
粘り強く信頼関係を築ける人 | 1年半追い続けた自治体案件で、毎月ヒアリングメモを共有し続けた結果「御社だけが本気で課題を理解してくれた」と逆指名を受けた――そんな“種まき”を楽しめるタイプ。 |
複雑な情報を整理し説明できる人 | 設備仕様書100ページをA4一枚のフロー図に落とし込み、技術者でも経営層でもすぐ理解できる資料を作れる人は重宝される。 |
学習意欲が高い人 | 新電力→蓄電池→PPAモデルとシフトする中で、休日にウェビナーや資格勉強を続ける姿勢が結果的に単価の高い提案を可能にし、収入アップへ直結。 |
リスクを先読みできる人 | 施工段階で想定外の地中障害物が出そう、と事前調査を追加提案し高評価。“転ばぬ先の杖”を自然に考えられる人はプロマネ適性◎。 |
✕向いていない人
苦手傾向 | 影響 |
---|---|
数字の即効性を求める人 | 受注サイクルが長いためモチベが保てず離脱しがち。SaaSの短期PDCA営業の方が向くことも。 |
調整や根回しを面倒くさがる人 | “言った/聞いてない”が命取り。連携を厭うとプロジェクト崩壊リスク大。 |
学び直しを避ける人 | 法改正や技術革新で知識が陳腐化。提案が通らず「年収頭打ち→評価ダウン」に直結。 |
プレッシャー耐性が低い人 | ライフラインを扱う責任と工期・費用のプレッシャーでメンタルを消耗しやすい。 |
未経験から転職する3ステップ
Step 1|“知る”── 業界と職種を立体的に把握
- 情報ソースは3層で収集
①国交省・経産省の統計(公共投資計画/エネルギービジョン)
②業界団体レポート(電設協会・通信事業者協会など)
③現場の声:展示会・ウェビナーで営業や技術者からヒアリング - マーケットマップを自作すると、プレイヤー/商材/案件規模が一目で整理でき、志望動機に説得力が出る。
Step 2|“学ぶ”── 資格とスキルで学習を可視化
カテゴリ | 推奨資格・教材 | 到達目標 |
---|---|---|
IT/通信基礎 | ITパスポート、CompTIA Network+ | ネットワーク図を見て基本構成が説明できる |
電気・再エネ | 第二種電気工事士、エネルギーマネジメント講座 | 受変電設備の仕組みと安全基準を語れる |
プロマネ | PMP入門、Udemy「プロジェクト管理基礎」 | WBSとクリティカルパスが作れる |
ポイント:合格まで至らなくても「勉強中+公式テキスト持参」で面接評価は上がる。
Step 3|“試す”── 営業スキルを実戦で磨く
- インサイドセールスやSaaS商材で提案~受注サイクルを体験
- 提案書リライト練習:自社製品をインフラ商材に見立てBtoB提案書を作り、先輩にFBをもらう
- 数字マネジメント:月間KPI→四半期KGIに落とし込み、進捗レポートを自動化(Excel, LookerStudio)
こうした「実績+アウトプット物」をポートフォリオにし、書類選考で差別化を図る。
+α:面接攻略
- 情熱×構造化:業界課題 → 自分の介在価値 → 数値的ゴール の3段ピラミッドで語る
- 長期案件への耐性:過去の“粘り勝ち”経験をSTARフレームワークで説明すると効果大
キャリアパス【ロードマップ完全版】
フェーズ | 目安年数 | ミッション/主責務 | 年収帯(例) |
---|---|---|---|
①ルーキー | 0–3年 | 先輩同行、見積・提案書作成補助、資格取得 | 350–550万円 |
②アカウントエグゼクティブ | 3–5年 | 単独で中小案件担当、サブPMとして工程管理 | 500–750万円 |
③チームリーダー/PM | 5–8年 | 3〜5名の営業+技術チームを統括、売上3–10億円を管理 | 700–1,000万円 |
④マネージャー/部長 | 8–12年 | 部門戦略策定、複数プロジェクトのPL・PMO、P/L責任 | 900–1,300万円 |
⑤事業開発/執行役員 | 12年〜 | 新規市場開拓、M&A・JV推進、資本政策に関与 | 1,200万円〜2,000万円超 |
横スライドキャリア
- 技術スペシャリスト:設計・施工畑に転じ、技術営業やアプリケーションエンジニアへ
- コンサル/SIer:インフラ更新の投資判断を助言し、年収+20〜30%も狙える
- 独立・代理店起業:機器メーカーと販売契約を結び、粗利25〜35%の高マージンモデルへ転身
昇進のカギ:①億単位の案件実績、②技術者からの信頼、③リスクコントロール力。この3点を定量で示せる人が早く上がる。
まとめ
インフラ営業は 「社会性 × 成長性 × 高収益性」 を兼ね備えた、数少ないBtoB 営業ポジションです。
- 仕事の本質
- 電気・ガス・通信・建設など、人々の生活基盤を守り拡張する長期プロジェクトを推進。
- 営業でありながら、技術・法規・金融を横断する“総合プロデューサー”の役割を担う。
- 市場環境と将来性
- 脱炭素投資、5G/データセンター拡張、インフラ老朽化対策が追い風。
- 公共性が高いため景気変動に強く、**「案件規模は拡大、競合は限定」**という好循環にある。
- 報酬構造とキャリアアップ
- 年収レンジは400〜1,200万円がボリュームゾーン。資格取得と大型案件実績で+200〜300万円の跳ね幅。
- ルーキー→アカウントエグゼクティブ→PM→部長→事業開発/役員へと、最短10年強でトップレンジに到達するモデルケースも。
- やりがいと課題のリアリティ
- やりがい:社会的インパクト、億単位案件を完遂する達成感、専門知識の資産化。
- きつさ:受注まで最長2年、関係者「多対多」調整、法改正・技術革新の学習負荷。
- → 粘り強さ・整理力・学習意欲・リスク感度 が成功の4大要素。
- 未経験からの攻略ロードマップ
- 業界調査:国交省統計・業界団体レポート・ウェビナーで市場を“立体把握”。
- 学習可視化:ITパスポート/電気工事士などで「勉強継続力」を証明。
- 実戦訓練:SaaS営業や提案書リライトで成果物をポートフォリオ化し、面接で差別化。
- 今すぐ動く3アクション
- 興味分野(通信・再エネ・建設)の展示会 or 技術セミナーに参加し、現場の温度感を掴む。
- 資格学習を開始し、SNSや面接で「勉強ログ」を公開してモチベを可視化。
- 転職サイトで**“プロジェクトベース営業”の求人にエントリー**し、書類選考の通過率を測定。
結論:インフラ営業は“長期戦の達人”が真価を発揮するフィールドです。社会の土台をつくりながら自身の専門性と年収を同時に高めたい人にとって、これ以上ないキャリアチャンスと言えるでしょう。