営業電話で一番最初の壁――それが「受付突破」です。
どれだけトークが上手くても、受付で止められた瞬間に商談のチャンスはゼロになります。
特に新人営業にとって、「担当者にすらつながらない」日々が続くのは大きなストレスですよね。
しかし、営業のトップ層はこの壁をあっさり超えていきます。
その違いは、センスではなく“受付突破トークの型”を知っているかどうか。
つまり、再現性のあるスクリプトを持っているかどうかで成果が分かれるのです。
本記事では、現場で実際に成果を出してきた営業プロの経験をもとに、
新人営業でもすぐ実践できる「受付突破トーク術」を徹底解説します。
具体的なフレーズ例・NGトーク・突破率を上げるマインドセットまで、すぐに試せる実践内容です。
なぜ新人営業は受付で止められるのか
まず理解しておくべきは、受付担当者の立場です。
彼らは「営業電話を断る」ことも仕事の一部。
つまり、あなたが嫌われているのではなく、仕組みとして拒まれているのです。
では、なぜ新人営業ほど受付で止められやすいのか?
その理由は、トーク内容や声の出し方以前に、「言葉の設計」と「目的意識」が甘い」ことにあります。
よくある新人営業のNGトーク
以下のような言い回しをしていませんか?
| NGトーク例 | 受付側の印象 |
|---|---|
| 「営業のご案内でお電話しました」 | 「あ、営業か。お断りです」 |
| 「担当の方におつなぎいただけますか?」 | 「どの担当?目的が不明…」 |
| 「資料をお送りしたいのですが」 | 「FAXで結構です」 |
| 「少しだけお時間よろしいでしょうか?」 | 「少しでも時間はないです」 |
これらの共通点は、「誰が・なぜ・何のために電話しているか」が曖昧なこと。
受付側に「リスクを取る理由」がないため、当然ながら断られてしまいます。
受付の心理を理解する
受付担当者は、電話をかけてくる人を3パターンで判断しています。
| 分類 | 受付の行動 | 通過確率 |
|---|---|---|
| ① 知り合い・取引先 | 担当者にすぐ取り次ぐ | 高 |
| ② 業務に関係ある相手 | 内容次第で判断 | 中 |
| ③ 営業・不明な電話 | 原則ブロック | 低 |
新人営業が勝負するのは、③から②にどう格上げしてもらうか。
つまり、「この電話は必要かもしれない」と思わせるトークができれば突破率は一気に上がります。
受付突破に必要なのは「信頼」と「理由」
結論から言うと、受付突破の鍵は次の2つです。
- 一瞬で信頼される自己紹介の仕方
- 担当者につなぐ“理由”を明確に伝えること
この2つを押さえるだけで、受付突破率は20%→60%へと跳ね上がります。
次の章では、そのための具体的なトーク設計とフレーズ例を紹介します。
成功する受付突破トークの基本構成
受付突破トークには、「魔法の言葉」など存在しません。
しかし、構成には明確な勝ちパターンがあります。
トップ営業が無意識に使っているトーク構成を分解すると、以下の4ステップに整理できます。
ステップ1 名乗りと目的をセットで伝える
最初の3秒で「営業かどうか」を判断されるため、名乗り方がすべての分かれ道です。
NG例:
「お世話になっております。株式会社〇〇の△△です。」
この言い方だと、「あ、営業だな」と即判断されます。
受付突破を狙うなら、名乗りと目的を同時に伝えましょう。
OK例:
「お世話になっております。株式会社〇〇の△△と申します。
〇〇(担当部署)様の□□の取り組みについて、確認でお電話いたしました。」
この一文で、受付側は「単なる営業ではなく、用件が明確な連絡」だと感じます。
最初の“確認”や“ご案内”という言葉は、営業臭を抑える効果があります。
ステップ2 担当者を特定する
担当者を曖昧にすると、「どの担当ですか?」と返され、受付ブロックが発動します。
この段階で詰まる新人営業が非常に多いです。
コツは、「具体的な部署名」+「想定される担当者」を組み合わせて伝えること。
例:
「御社の営業企画をご担当されている方におつなぎいただきたく存じます。」
「新卒採用の施策についてお伺いしたく、人事ご担当者様をお願いできますか?」
このように伝えると、受付側も判断しやすくなり、突破率が上がります。
ステップ3 “理由づけ”で突破の口実を作る
受付突破の最重要ポイントがここです。
人は「理由がある要望」には応じやすいという心理を活用します。
| フレーズ例 | 効果 |
|---|---|
| 「御社のサイトを拝見し、採用活動の内容を確認させていただきました。」 | 調べた上での電話だと伝わる |
| 「既に同業の〇〇社様にも導入いただいておりまして…」 | 実績トークで信頼を得る |
| 「担当の方にご確認だけでもお願いできますか?」 | 担当者への取次を促す柔らかい言い回し |
大切なのは、「取り次いでもらう理由」を受付に与えることです。
“お願い”ではなく、“自然な流れ”で担当者につながる設計にしましょう。
ステップ4 断られたときの切り返しを準備する
受付で断られたときに焦る新人営業は多いですが、想定内です。
重要なのは、「想定問答」を用意しておくことです。
| 受付の返答 | 切り返しトーク例 |
|---|---|
| 「担当は席を外しております」 | 「失礼いたしました。お戻りは何時ごろでしょうか?」 |
| 「営業の方にはおつなぎできません」 | 「承知しました。内容だけお伝えいただけますか?」 |
| 「メールでお願いします」 | 「ありがとうございます。ご担当者様のお名前だけお伺いしてもよろしいでしょうか?」 |
“引かないけど食い下がらない”。
このバランスを保つことで、受付からの印象が悪くならず、次回のチャンスも残せます。
受付突破トーク構成のまとめ
| ステップ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 1. 名乗りと目的 | 営業臭を抑えつつ信頼を得る | “話を聞く価値がある”と思わせる |
| 2. 担当者特定 | 受付の判断を容易にする | 誰につなぐべきかを明確化 |
| 3. 理由づけ | 担当者につなぐ口実を与える | 自然に突破する |
| 4. 切り返し | 断られても印象を保つ | 次につなげる |
この構成を意識するだけで、突破率は確実に上昇します。
次章では、これをさらに磨くための「シーン別トーク例」を具体的に紹介します。
シーン別で使える受付突破トーク実例集
ここからは、実際の現場で使われている「突破率の高いトーク」を、シーン別に具体的に紹介します。
新人営業がそのまま使っても違和感が出ないよう、自然な言い回しにしています。
トークを“暗記”するより、“使いどころ”を理解することが大切です。
ケース① 初回架電で相手を知らない場合
最も多いパターンがこれです。
初めて電話する企業では、「不審に思われない言い方」を徹底しましょう。
NGトーク例
「営業のご提案でお電話しました」
→ 一発アウト。営業だとバレた瞬間、拒否されます。
突破トーク例
「お世話になっております。株式会社〇〇の△△と申します。
御社の営業企画について少しお伺いしたく、ご担当の方をお願いできますでしょうか?」
ポイントは、“聞きたいことがある”トーンを出すこと。
「提案したい」ではなく「確認したい」「お伺いしたい」で突破率が上がります。
ケース② 以前に資料送付や接点がある場合
すでに資料を送っている、または一度問い合わせた企業には、「続きの話」を印象づけるトークが有効です。
突破トーク例
「以前、弊社から〇〇の資料をお送りしておりまして、その件で確認のお電話を差し上げました。
〇〇部の△△様はいらっしゃいますでしょうか?」
“確認”や“フォロー”といった言葉は、受付が「営業目的ではない」と感じるキーワード。
過去の接点を利用して自然に突破できます。
ケース③ 紹介・実績をフックにする場合
実績を持ち出すトークは、受付の信頼を一瞬で勝ち取る効果があります。
突破トーク例
「〇〇業界の企業様にも多数ご利用いただいておりまして、
貴社の〇〇部門でもお役に立てるかと思いご連絡いたしました。
ご担当の方をお願いできますでしょうか?」
“御社と似た企業でも導入されている”という情報は、心理的ハードルを下げる鉄板フレーズです。
ケース④ 受付が強固でつなげてくれない場合
どれだけ上手く話しても、鉄壁の受付は存在します。
そんなときは、「相手の立場を尊重する」一言が突破の鍵です。
突破トーク例
「いつも対応ありがとうございます。ご迷惑でなければ、
内容だけご担当の方にお伝えいただけますでしょうか?」
または、
「承知しました。改めてお電話させていただきたいのですが、
ご担当者様のお名前だけお伺いしてもよろしいでしょうか?」
突破できなくても、担当者名を得られれば次回以降の突破率は格段に上昇します。
「情報を1つでも取る」という姿勢が重要です。
ケース⑤ 上場・大手企業で受付が複数いる場合
大手企業は「総務受付」「部門受付」などが分かれており、通すまでのプロセスが複雑です。
ここでは、企業構造を理解している感を出すことがポイントです。
突破トーク例
「〇〇事業部様の△△様宛でお電話しております。
ご所属の部署までおつなぎいただくことは可能でしょうか?」
“部署名+個人名”を明確にすることで、受付側も「確認してみます」と応じやすくなります。
ケース⑥ すでに断られた企業への再架電
一度断られても、再アプローチで突破できるケースは多いです。
この場合は、「情報更新」や「提案変更」を切り口に」すると効果的です。
突破トーク例
「以前お電話差し上げた件でございますが、
ご提案内容を一部アップデートいたしましたので、再度ご連絡差し上げました。」
新情報・改善・新機能など、“前回と違う”ことを伝えるのがポイントです。
ケース⑦ 受付が外部委託(BPO)の場合
BPO受付は“取り次ぎ権限がない”ため、強引な突破は無意味です。
ここでは、丁寧に次のステップを引き出しましょう。
突破トーク例
「ご担当部署に直接おつなぎいただくことは難しいでしょうか?
もしご連絡方法がございましたら、教えていただけますと幸いです。」
この場合、受付を突破するより、正しい導線を聞き出すことが成功です。
これらのトーク例を使うときのコツは、「自信のあるトーン」で話すこと。
同じ内容でも、声のトーンが弱いだけで「不審者」に聞こえてしまいます。
営業トークは“内容”より“空気感”が伝わる仕事なのです。
受付突破率をさらに上げるプロの心理テクニック
トーク内容を整えても、最後に差が出るのが「心理的な立ち回り方」です。
受付担当者は日々数十件の営業電話を受けています。
その中で突破できる営業は、単に言葉が上手いだけでなく、“相手の心理を読む力”に長けています。
ここでは、心理学と現場の実例をもとにした「受付突破の裏ワザ」を紹介します。
テクニック① “権威性”を利用して信頼を得る
人は、「自分より権威がある相手」には自然と従いやすくなります。
営業電話でもこれは同じで、権威性の演出が突破率を大きく左右します。
効果的なフレーズ例
| フレーズ | 意図 |
|---|---|
| 「〇〇社様にもご導入いただいております」 | 実績を伝えて信頼感を高める |
| 「弊社の代表がご挨拶の機会を頂戴できればと」 | “代表”というワードで格上感を出す |
| 「〇〇部長に一度お目通しいただければと」 | 上位者からの要請風に聞こえる |
これは決して“嘘”ではなく、相手に安心感を与える表現の工夫です。
新人でも「代表」「上長」「他社事例」を上手く使えば、堂々と話せるようになります。
テクニック② 受付を“味方化”する
多くの新人営業は、受付を“敵”だと思っています。
しかし、受付は敵ではなく、担当者への入り口を握る味方です。
例えば、こうしたトーンで話すと印象がまったく違います。
❌ 悪い例
「担当者におつなぎください」
⭕ 良い例
「いつもご対応ありがとうございます。
ご迷惑でなければ、ご担当の方におつなぎいただけますでしょうか?」
このように一言「感謝」と「気遣い」を加えるだけで、人としての印象が大きく変わります。
受付は“冷たい壁”ではなく、“突破のパートナー”と捉えましょう。
テクニック③ 声のトーンと話す速度を意識する
受付突破で最も軽視されがちなのが「声の使い方」です。
声は、トーク内容以上に信頼を左右します。
トップ営業が意識しているのはこの3点です。
| 要素 | 意識するポイント |
|---|---|
| トーン | ワントーン低めで落ち着いた印象を出す |
| 速度 | 少しゆっくり、ハキハキと話す |
| 間 | 要所で2秒の間を置くことで余裕を演出 |
声が高く早口だと、「焦っている」「信用できない」と判断されがちです。
“落ち着いた自信”を演じるだけで、受付は安心して取り次いでくれるのです。
テクニック④ 「聞かれたら困る質問」を先回りして話す
受付の断りフレーズは決まっています。
「どんなご用件ですか?」
「営業のご案内でしょうか?」
この瞬間に詰まる営業は、突破できません。
プロは、聞かれる前に自分で答えてしまうのです。
例:
「営業企画の△△様にご確認でお電話しました。
弊社でご対応している〇〇の件で、5分ほどお時間を頂戴できればと存じます。」
“営業”という言葉を使わずに、用件を先に示すことで、受付が質問する必要をなくします。
この「先読みトーク」は、突破率を2倍以上に上げるテクニックです。
テクニック⑤ 断られた後の“リカバリートーク”を準備する
受付突破は一発勝負ではありません。
断られた後の対応こそ、次のチャンスを生む大切なステップです。
よくある断り文句と返し方
| 受付の言葉 | リカバリー例 |
|---|---|
| 「担当者は外出中です」 | 「ありがとうございます。失礼ですが、お戻りのご予定をお伺いしてもよろしいでしょうか?」 |
| 「メールでお願いします」 | 「承知しました。念のため宛名だけお伺いしてもよろしいでしょうか?」 |
| 「営業は全てお断りしております」 | 「かしこまりました。ちなみに、今後のご連絡はどちらに確認すればよろしいでしょうか?」 |
ここで大事なのは、情報を1つでも残して終わること。
次のアクションにつながる情報を取れれば、敗北ではありません。
テクニック⑥ “感情のトーン”を切り替える
電話口の相手が冷たいと、つい自分もトーンを下げてしまいがちです。
しかし、営業は“感情を操る仕事”。
相手のテンションが低くても、自分は一定の明るさを保ちましょう。
理想のトーンは、「冷静 × 柔らかさ × 誠実さ」。
たとえば次のような一言を添えるだけで、空気が変わります。
「急にお電話してしまい申し訳ございません。
少しだけご確認させていただけますか?」
“申し訳なさ”と“誠意”を合わせたトーンは、どんな受付にも共通して好印象です。
これらの心理テクニックを組み合わせれば、
あなたの受付突破率は単なる「運任せ」から「再現性のある戦略」へと変わります。
まとめ 受付突破は“話術”ではなく“設計”で勝つ
営業電話の第一関門である「受付突破」。
多くの新人営業がここで苦戦しますが、実は突破できる人とできない人の差は「話術」ではなく「準備と設計」です。
本記事で解説したように、突破率を上げるためには以下の要素が不可欠です。
- 名乗りと目的を明確に伝える
- 担当者を具体的に特定する
- 取り次ぐ理由を“自然に”伝える
- 断られたときの切り返しを用意する
- 受付を敵ではなく味方として扱う
さらに、声のトーン・話す速度・心理的な立ち回り方などを磨くことで、
「担当者につながらない」日々は確実に減ります。
営業の成否は、商談ではなく受付の3秒から始まっている。
新人営業であっても、“突破の型”を理解し実践すれば、必ず成果を出せます。
あなたの架電が、今日から“突破の電話”に変わることを願っています。

