営業を始めたばかりの新人が最初にぶつかるのは、「分からないことが分からない」という壁です。
トーク、商談、アポイント、社内共有――すべてが初めての連続。
上司や先輩に聞くにも、何を聞いていいのかすら迷ってしまうことがあります。
しかし、営業の悩みは誰もが通る共通ルートです。
つまり、「よくある質問(FAQ)」を理解しておくだけで、成長スピードは劇的に上がるのです。
この記事では、現役営業マネージャーが実際に新人からよく受ける質問をカテゴリ別に整理し、
それぞれに対して「プロ営業ならどう考えるか」を丁寧に解説します。
営業を始めて3か月以内の方、もしくは「今のやり方で合っているのか不安」という方にこそ読んでほしい内容です。
営業活動の基本に関するよくある質問
新人営業がまず最初に悩むのは、「営業って結局何をすればいいのか?」という根本的な部分です。
ここでは、営業の基礎動作や日々の考え方に関する質問をまとめました。
Q1. 営業の仕事って、何を目的にして動けばいいですか?
A. 目的は“お客様の課題を解決し、信頼を得ること”です。
売上や契約はその結果にすぎません。
最初のうちは「数字を上げること」ばかり意識して空回りしがちですが、
本質は「相手が必要とする提案をすること」です。
具体的な意識ポイント
| 観点 | 意識すべきこと |
|---|---|
| 目標 | 売ることではなく、相手の課題を理解すること |
| 行動 | 1日1件でも「ありがとう」をもらう |
| 成果 | 信頼→紹介→成約という流れを作る |
Q2. 何から手をつけたらいいか分かりません。
A. まずは「行動の型」を作ることです。
営業は経験がものを言う仕事なので、まず「やる→振り返る→修正する」のサイクルを回しましょう。
おすすめの1日の基本ルーティン
| 時間帯 | 行動 | ポイント |
|---|---|---|
| 午前 | 新規アポ獲得(テレアポ・メール) | 朝は集中力が高く行動が早い |
| 昼 | 商談・訪問 | エネルギッシュに動く時間 |
| 午後 | フォロー・資料作成 | 精度を上げる時間 |
| 夜 | 反省・改善 | 日報+翌日の戦略立案 |
「まずやる」→「記録する」→「改善する」。
この繰り返しでしか、営業力は身につきません。
Q3. 売ることに抵抗があります。どうしたら克服できますか?
A. その感覚は正常です。
なぜなら、「売る」という言葉には“押しつける”イメージがあるからです。
しかし営業の本質は“売ること”ではなく、“相手のために提案すること”です。
考え方の切り替え
- ×:「商品を売りたい」
- ○:「この商品で相手を助けたい」
相手が「話を聞いて良かった」と思えば、それはもう立派な営業成果です。
売る=信頼を届ける行為だと考えましょう。
Q4. 上司が怖くて質問できません。
A. それもよくある悩みです。
しかし、「質問しない営業」は一番成長が遅いです。
質問をするときは、“丸投げ質問”ではなく“自分の仮説を持って質問”しましょう。
悪い質問
「どうしたら売れますか?」
良い質問
「こういうトークを試したのですが、どこを改善すれば良いですか?」
上司は“考えている部下”にアドバイスしたくなります。
質問力=成長スピードです。
Q5. 自信が持てません。
A. 自信とは「経験の積み重ね」でしか得られません。
つまり、行動量が自信を生みます。
- 10件電話すれば、1件は興味を持ってもらえる
- 10回話せば、1回は成功する
- その1回の成功体験が、自信になる
失敗を怖がるより、「小さな成功を積み上げる」ことに集中しましょう。
アポイント・商談に関するよくある質問
営業活動で最も悩みが多いのが、アポイント獲得と商談の進め方です。
新人営業が直面しやすい「アポが取れない」「商談が続かない」といった悩みを、プロの視点で解決します。
Q6. テレアポで話を聞いてもらえません。どうすればいいですか?
A. 最初の10秒が勝負です。
営業だと悟られた瞬間に切られます。
相手の関心を引く“理由づけ”を最初に伝えましょう。
悪い例
「突然お電話失礼いたします。株式会社〇〇の△△と申します。」
良い例
「御社のホームページを拝見して、〇〇の取り組みが素晴らしいと感じました。
1点だけ確認したくお電話差し上げました。」
“あなたの会社を見ています”という一言だけで、会話の温度が変わります。
営業色を消す導入トークが鉄則です。
Q7. アポイントが取れても、当日キャンセルされます。
A. 原因は2つあります。
①相手の「会う理由」が弱い、②リマインド不足です。
対策はシンプルで、「目的+確認連絡」を徹底すること。
対策例
- アポ取得時:「御社で導入事例が出ている○○の件を、15分だけ共有したい」
- 前日リマインド:「明日の打合せ、予定通りでよろしいでしょうか?
短時間でお役に立てる情報をお持ちします。」
キャンセル防止のコツは、「あなたと会うメリット」を言語化しておくことです。
Q8. 商談でうまく話せません。
A. 「話す」より「聞く」ことに集中してください。
新人営業は話しすぎる傾向があります。
相手に“自分の話をさせる”ことが信頼の第一歩です。
商談で意識すべき3つの質問
- 「現状どんな課題を感じていらっしゃいますか?」
- 「それを解決できたら、どんな状態が理想ですか?」
- 「理想に近づけるために、今どんな施策をされていますか?」
この3ステップを守れば、自然に相手が課題を話し、あなたの提案に耳を傾けます。
Q9. お客様に断られるのが怖いです。
A. 営業で「断られない人」は存在しません。
重要なのは、断られたあとに“何を学ぶか”です。
断られた時に考えるべき3点
| 観点 | 自問する質問 | 改善アクション |
|---|---|---|
| タイミング | 今が提案の適期だったか? | 再アプローチ日を設定 |
| 相手の興味 | 相手の課題に触れられていたか? | 話題を業界課題に寄せる |
| 信頼度 | 自分が信用されていたか? | 情報提供や実績共有を増やす |
断られた回数=成長の回数。
失敗の記録を「改善メモ」に残す営業ほど、数字が伸びます。
Q10. 商談の最後に「検討します」と言われて終わります。
A. それは「決断できない状態」で終わっている証拠です。
「検討します」は“断りの予備動作”。
このフレーズが出た瞬間こそ、フォロー質問を入れるタイミングです。
例:
「ありがとうございます。ちなみに、どのあたりが一番気になるポイントでしょうか?」
「社内でどなたとご相談されるご予定ですか?」
「次回、決裁の場にご一緒させていただくことは可能でしょうか?」
“検討”の中身を具体化する質問を入れることで、次のステップを作れます。
営業は“沈黙で終わらせない勇気”が大切です。
社内対応・報告に関するよくある質問
新人営業にとって、社内報告や共有も大きな悩みの一つです。
「どうまとめればいいのか」「何を報告すべきなのか」が分からず、結果として上司から注意されるケースも多くあります。
ここでは、社内コミュニケーションのFAQを解説します。
Q11. 商談後の報告はどのくらい詳しく書くべきですか?
A. 結論から言うと、“第三者が見ても状況が分かるレベル”が理想です。
報告書やCRM入力は「自分のため」ではなく、「チーム全体の資産」にするためのものです。
商談報告の基本構成(5W1H)
| 項目 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| Who | 相手は誰か | 株式会社ABC・営業部長 |
| What | 何を話したか | 新プラン導入の概要説明 |
| Why | なぜこの話になったか | 業務効率化ニーズあり |
| How | どんな反応だったか | 前向き、社内稟議予定 |
| Next | 次のアクション | 1週間後に再提案 |
報告書=未来へのメモ。
“次に誰が見てもすぐ動ける内容”を心がけましょう。
Q12. 商談がうまくいかなかったとき、正直に報告したほうがいいですか?
A. 正直に書くべきです。
なぜなら、失敗報告こそチームの改善材料だからです。
「失敗を隠す営業」は、次に同じミスを繰り返します。
上司が知りたいのは、「結果」ではなく「原因と次の行動」。
「うまくいきませんでした」ではなく、次のように書き換えましょう。
悪い報告例
「お客様の反応が悪く、話が進みませんでした。」
良い報告例
「提案資料の内容が合わず、ニーズの把握が不十分でした。
次回はヒアリングを中心に再訪予定です。」
誠実な報告は信頼を生み、信頼は成長のチャンスを生みます。
Q13. 上司に相談するタイミングが分かりません。
A. 迷ったら早めに相談してください。
営業現場では、“報連相の遅れ=損失”につながります。
相談の目安
| 状況 | 対応すべきタイミング |
|---|---|
| 商談で予期せぬ要望が出た | その日のうちに共有 |
| 見積り内容が不明 | 提出前に確認 |
| クレーム発生 | 即時報告(メール+電話) |
営業マネージャーは、「早めの相談=危機管理ができている」と評価します。
報告の速さも営業スキルの一部です。
Q14. 社内で成果を出している先輩に質問しづらいです。
A. 優秀な営業ほど“聞かれるのが嬉しい”ものです。
ただし、質問の仕方にコツがあります。
良い質問の流れ
- 「〜という状況で悩んでいます」
- 「自分ではこう考えていますが、先輩ならどうされますか?」
- 「実践してみていいですか?」
この3ステップで聞けば、相手は“頼られている”と感じて快く答えてくれます。
“質問力=可愛がられる力”です。
Q15. 営業日報はどう書けば評価されますか?
A. 「行動+気づき+改善案」をセットで書くと印象が変わります。
日報のフォーマット例
| 項目 | 記入内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 今日の行動 | 架電50件、商談2件 | 具体的に数字を入れる |
| 成果・反省 | テレアポ1件成功、反応率低下 | 事実ベースで記載 |
| 気づき | 朝の時間帯は反応が良い | 分析視点を加える |
| 明日の改善 | 業種別で話題を変えてテスト | “行動の次の一手”を明確に |
上司が見たいのは「やる気」ではなく「考えて動いている姿勢」。
日報は“営業の思考ログ”です。
書けば書くほど、自分の営業スタイルが見えてきます。
成果を出すためのマインド・成長に関するよくある質問
営業という仕事は、成果だけでなく「心の持ち方」で結果が大きく変わります。
ここでは、新人営業が長く活躍するために必要なメンタルと考え方に関するFAQを紹介します。
Q16. 成果が出ないとき、どうモチベーションを保てばいいですか?
A. モチベーションは「上げる」ものではなく「整える」ものです。
営業には波があります。成績が出ない時期ほど、習慣で自分を動かすことが大切です。
習慣でモチベを維持する方法
| 行動 | 効果 |
|---|---|
| 毎朝10分、昨日の成功を振り返る | 自信を積み上げる |
| 週に1度、自分のトークを録音して聞く | 改善点を冷静に見る |
| 成功した営業の真似をする | 成果を出す感覚を掴む |
モチベーションは“感情”ではなく、“リズム”で作るものです。
行動を止めなければ、数字は必ず追いついてきます。
Q17. 同期や他の営業と比べて落ち込みます。
A. 比べるのは「他人」ではなく「昨日の自分」です。
同期の数字は、その人の背景・得意分野・タイミングが違います。
比較の矛先を間違えると、成長が止まります。
比較の対象を変える考え方
- ×:「あの人はすごい」
- ○:「先週より1件多くアポが取れた」
- ○:「昨日より1分長く話せた」
“小さな成長”を認識できる人ほど、長く成果を出せる営業になります。
Q18. クレームが怖いです。どう対応すればいいですか?
A. クレーム対応は「誠実さを見せるチャンス」です。
逃げずに向き合えば、信頼関係が強くなります。
クレーム対応の3原則
- 即対応する(スピードが命)
- 言い訳をしない(共感→解決の順で)
- 報告・共有を徹底(社内連携で防止策を明確に)
例:
「この度はご不便をおかけし申し訳ございません。
状況を確認の上、最短で対応いたします。」
クレームは「嫌われる原因」ではなく、「信頼を作る機会」。
誠実さが伝われば、むしろファンになります。
Q19. ノルマがプレッシャーでつらいです。
A. ノルマは“ゴール”ではなく“ペースメーカー”です。
重要なのは「数字を見る頻度」と「分解の仕方」。
ノルマの分解法
| 指標 | 分解の例 | メリット |
|---|---|---|
| 月間目標100万円 | 週25万円 → 日5万円 | 到達イメージが明確になる |
| 商談数20件 | 1日1件アポ+週末調整 | 行動ベースで管理できる |
大きな数字を見ると焦りますが、分解すれば「1日やること」が見えます。
焦りを小さく、行動を具体的にするのがコツです。
Q20. 将来、営業としてどう成長していけばいいですか?
A. 営業のキャリアは、“数字の先”にあります。
目先の売上よりも、「信頼をどれだけ積み上げたか」が次のステージを決めます。
成長のステップイメージ
| ステージ | 成長テーマ | 次のキャリア |
|---|---|---|
| 新人期 | 話す・聞く・提案の型を覚える | 自立した営業担当 |
| 成長期 | チーム目線で動く | リーダー・教育担当 |
| 熟練期 | 顧客課題を体系的に解決 | コンサル・マネージャー |
新人時代に意識すべきは、“数字より信頼”と“速度より誠実”。
その姿勢が、どんなキャリアを選んでも通用する基盤になります。
まとめ
新人営業が抱える悩みの多くは、「知識不足」ではなく「方向の迷い」です。
つまり、“正しい考え方と行動の型”さえ分かれば、誰でも成果を出せるようになります。
この記事で紹介したFAQを振り返ると、営業における本質はすべて次の3つに集約されます。
| カテゴリ | 核心ポイント | 鍵となる行動 |
|---|---|---|
| 基礎行動 | お客様の課題理解と信頼構築 | 話すより聞く・即行動 |
| 商談スキル | アポ・提案・リマインドの型化 | トークを磨き続ける |
| マインド | 比べない・誠実に・継続する | 習慣で自分を動かす |
営業は才能ではなく、積み重ねと検証の仕事です。
今日うまくいかなかったことも、明日の成功の種になります。
そして、FAQの答えを“読んで終わり”ではなく、“自分の行動に変換する”ことで初めて力になります。
質問が出るうちは伸びる証拠。
悩みを抱えながらも前進しているあなたは、すでに営業としての一歩を踏み出しています。
「分からない」を放置しない営業が、最速で成長する。
今日の一つの答えが、あなたの次の成果につながります。

