不動産営業において、最初の面談や電話での「初回トーク」はすべての始まりです。
ここでお客様の心をつかめるかどうかが、その後の商談成功率を大きく左右します。
特に新人営業にとって、初回トークは最初の関門。
緊張してうまく話せなかったり、マニュアル通りの話し方になってしまうことも多いでしょう。
しかし安心してください。
初回トークは「センス」ではなく「型」で磨けます。
どんなに経験が浅くても、相手の心理を理解し、正しい順序で話せば結果はついてきます。
この記事では、新人営業が不動産の初回トークで信頼を勝ち取るための具体的な会話例とトーク構成の鉄板パターンを、プロ営業目線で徹底解説します。
あなたがこの記事を読み終える頃には、初回トークが怖くなくなり、
「また話したい営業」に変わるためのコツがしっかりと掴めるはずです。
初回トークの目的を理解することが営業の第一歩
新人営業が最初に覚えておくべきなのは、初回トークの目的は「売ること」ではなく「信頼を得ること」だという点です。
多くの新人は、つい早く成果を出そうとして商品の説明や物件の魅力を語りすぎてしまいます。
しかし、不動産営業では「どんな物件を紹介するか」よりも先に「誰が紹介するか」で選ばれます。
お客様が「この人なら任せてもいい」と感じなければ、どんな良い提案も届きません。
お客様が初回トークで見ているポイント
お客様は最初の3分であなたの印象を判断します。
心理学的にも「第一印象は7秒で決まる」と言われていますが、不動産営業の場合、もう少し長くても最初の3分が勝負です。
この短い時間でチェックされるのは次の3つ。
| チェック項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 清潔感 | 髪型・服装・身だしなみ | 不動産は「信用商売」。見た目が第一印象を作る。 |
| 話し方 | 声のトーン・テンポ・聞き取りやすさ | 緊張してもハキハキと話す。ゆっくりすぎるよりも明るくテンポよく。 |
| 態度 | 目線・笑顔・姿勢 | 「営業」ではなく「相談に乗る人」という立ち位置を意識する。 |
この3つが揃うだけで、スタート地点の信頼度が格段に上がります。
初回トークの最終ゴールは「次の約束」
多くの新人が誤解しがちなのが、「初回で契約を取る」ことが目的だと思ってしまうことです。
実際は違います。
不動産営業の初回トークでのゴールは、お客様との関係を築き、次の面談や内見など“次のアクション”につなげることです。
つまり、初回トークとは「営業を始める準備」の時間。
信頼をベースに、相手の希望や背景を引き出し、次の提案につなげるための情報を集めるフェーズなのです。
ポイントまとめ
- 初回トークの目的は「信頼を得ること」
- お客様は3分で印象を決める
- ゴールは契約ではなく「次の約束」
成功する不動産営業の初回トーク構成と話の流れ
初回トークがうまくいく営業には、必ず話の流れ(トーク構成)があります。
それは「流れるような自然さ」を演出しながらも、実は裏で論理的に設計された型です。
新人営業でもこの型を覚えておけば、どんなお客様にも安定して対応できるようになります。
ここでは、不動産営業の初回トークにおける基本構成を5ステップで解説します。
| ステップ | 内容 | トークの目的 |
|---|---|---|
| ① 挨拶・アイスブレイク | 笑顔と自己紹介で場を和ませる | お客様の警戒心を解く |
| ② ヒアリング | 希望条件や背景を引き出す | 「この人は理解してくれる」と思ってもらう |
| ③ 提案・共感 | お客様の話を要約し、考えを整理する | 「話を聞いてくれた」と感じさせる |
| ④ 次のアクション提案 | 内見・再訪・資料送付などを提案 | 次につなげるための“約束”を取る |
| ⑤ 締めの挨拶 | 感謝と前向きな言葉で終える | 良い印象を残す |
この5つの流れを守るだけで、初回トークの成功率が格段に上がります。
それぞれのステップをさらに具体的に見ていきましょう。
ステップ① 挨拶とアイスブレイクで場を和ませる
営業は「最初の10秒で空気を作る仕事」です。
最初の挨拶でお客様が「この人、話しやすそう」と感じれば、その後のヒアリングが格段にスムーズになります。
基本トーク例:
「本日はお時間をいただきありがとうございます。〇〇不動産の△△と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
この一言を明るく・落ち着いたトーンで・目線を合わせて言うだけで印象は変わります。
さらに、アイスブレイク(軽い雑談)を少し挟むのがコツです。
アイスブレイクの例:
- 「今日はお天気が良くて内見日和ですね。」
- 「こちらのエリア、お好きなんですか?カフェも多くて人気ですよね。」
- 「初めての不動産探しですか?皆さん最初は緊張されるんです。」
雑談は「目的」ではなく「潤滑油」。
短く明るく、共通話題(天気・場所・雰囲気)を使うと良いです。
ステップ② ヒアリングでお客様の本音を引き出す
ヒアリングで最も重要なのは、「何を質問するか」よりも「どう聞くか」です。
多くの新人は質問リストをそのまま順に読んでしまいますが、これでは会話になりません。
鉄板ヒアリングフレーム:3つのW+1H
| 項目 | 質問例 |
|---|---|
| What(何を) | 「どんな物件をお探しですか?」 |
| Where(どこに) | 「ご希望のエリアはありますか?」 |
| Why(なぜ) | 「引っ越しを考えられている理由をお聞きしてもよろしいですか?」 |
| How much(いくらで) | 「ご予算の目安を伺ってもよろしいですか?」 |
ここで大切なのは、「質問→共感→掘り下げ」の流れを守ること。
たとえば、
「駅近がいいんですね!通勤の時間、大事ですよね。普段どのあたりまで通勤されていますか?」
のように、相手の答えを“受け止めてから”次の質問に進むと、自然な会話になります。
ステップ③ 共感と要約で「理解してもらえた」と感じさせる
ヒアリングのあと、お客様は「ちゃんと聞いてもらえたか」を判断します。
ここで営業がやるべきことは、共感+要約です。
共感トーク例:
「お子さんの通学も考えると、学校の近くが安心ですよね。」
要約トーク例:
「今のお話をまとめると、2LDKで駅徒歩10分以内、家賃は10万円前後、通勤アクセスを重視されているということで間違いないでしょうか?」
このように、相手の言葉を一度“営業側の言葉”で整理して返すことで、
「この人、ちゃんと理解してくれてる」と信頼が生まれます。
ステップ④ 次のアクション提案で“つながり”を作る
初回トークの最重要ポイントです。
多くの新人はここで「では検討してみてください」で終わってしまいます。
それでは信頼は積み上がらず、関係が切れてしまうのです。
提案すべきは「次に何をするか」。
以下のような言い方で、自然に次の約束を取りましょう。
トーク例:
- 「ご希望に合いそうな物件をいくつかピックアップしますので、明日お送りしてもよろしいですか?」
- 「もし週末お時間があれば、内見のご案内もできます。」
ここで大切なのは、「提案」ではなく「提案+確認」で締めることです。
押しつけではなく、“あなたのために動きます”という姿勢を伝えるのがコツです。
ステップ⑤ 締めの挨拶で好印象を残す
最後の印象が次の行動につながります。
電話なら「感じの良い終わり方」、対面なら「安心感を残す終わり方」が重要です。
締めトーク例:
「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
お話を伺えて、より理想の物件がイメージできました。次回のご提案も楽しみにしていてください!」
この一言が、あなたを「営業」ではなく「パートナー」に変えます。
ポイントまとめ
- 初回トークは「5ステップ構成」で整理するとブレない
- 「話す」より「引き出す」が信頼の鍵
- ゴールは「次の約束」を自然に作ること
新人営業が失敗しやすい初回トークのNGパターンと改善法
営業の世界では、成功の裏に必ず「失敗のパターン」があります。
特に新人営業は、話し方・間の取り方・情報の出し方などでつまずくことが多いです。
ここでは、不動産営業の初回トークでありがちなNG行動と改善法をセットで紹介します。
NG① 最初から物件の話をしすぎる
新人が一番やりがちなのが、「物件紹介」から入ってしまうパターンです。
「本日はこちらの物件をご紹介します。こちらは駅徒歩5分で〜」
確かに説明は丁寧ですが、お客様はまだあなたを信用していません。
この段階で情報を出しすぎると、「売り込み」と受け取られてしまいます。
改善法:まず“人として”信頼されることを意識する
最初の数分は、物件の話よりも「お客様を理解する姿勢」を見せる時間にしましょう。
たとえば次のように言い換えます。
「今日は〇〇様の理想の暮らしを一緒に考えられたらと思っております。
そのために少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
この言葉ひとつで、空気ががらりと変わります。
NG② ヒアリングが「質問攻め」になっている
新人営業は「聞くことが大事」と教わるため、つい質問を連発してしまいます。
しかし、これは“尋問”に聞こえてしまう危険なパターンです。
悪い例:
「ご予算は?間取りは?希望エリアは?入居時期はいつですか?」
これでは会話が単調で、相手が疲れてしまいます。
改善法:質問は“ストーリーの流れ”で行う
質問の順番を、「現状→希望→背景→感情」の流れに変えるだけで印象が変わります。
| 質問の流れ | 例文 |
|---|---|
| 現状 | 「今のお住まいはどのあたりですか?」 |
| 希望 | 「今度はどんなお部屋に住みたいですか?」 |
| 背景 | 「引っ越しのきっかけは何かあったんですか?」 |
| 感情 | 「やっぱり通勤のストレスって大きいですよね。」 |
この順番で話すと、お客様が自然に会話に乗ってきます。
NG③ 相手の言葉をスルーする
お客様の発言を聞き流してしまうのも、新人に多い失敗です。
たとえば、
「子どもがもうすぐ小学校なんです」
「なるほど、では次の物件をご紹介しますね」
このように話を広げずに流すと、信頼関係は築けません。
お客様の発言には「反応+共感」を返すことが基本です。
改善法:キーワードを拾って“返す”
「小学校なんですね!お子さんの通学路も気になりますよね。学校の近くで探されている感じでしょうか?」
このように、相手の発言に関連する質問を返すと、
「ちゃんと話を聞いてくれている」という安心感が生まれます。
NG④ 次のステップを明確にしない
初回トークの最後に「ではまたご連絡しますね」で終わってしまうと、
関係は曖昧なままになり、フォローのタイミングを失います。
改善法:次のアクションを“明確に提案”する
「本日伺った内容をもとに、2〜3件ほど候補を明日までにご提案いたします。ご確認後、週末に内見はいかがですか?」
このように「誰が・いつ・何をするか」を明確にすると、お客様は安心して次に進めます。
NG⑤ テンプレートトークに頼りすぎる
マニュアル通りの会話は、正しいようでいて“機械的”に聞こえます。
特に不動産営業では、「その人に合わせた会話」が求められます。
改善法:相手の言葉をそのまま使う
お客様が「駅近がいい」と言ったら、「駅近ですね」と返す。
「明るい部屋がいい」と言ったら、「明るさ、大事ですよね」と同じ言葉を繰り返す。
ミラーリング(言葉の鏡写し)を意識することで、自然な信頼関係が生まれます。
ポイントまとめ
- 売り込みではなく「理解」から始める
- 質問は順番とリズムが命
- 相手の言葉を拾って“返す”ことで距離が縮まる
- 次の行動を明確に提案する
不動産営業の初回トークを強化するための実践例とテンプレート
理論だけでは、実際の現場で動けるようにはなりません。
ここでは、新人営業でもそのまま使える実践トーク例を紹介します。
実際のシーンを想定しながら、どんな順番で話せばいいかをイメージできるようにまとめました。
シーン① 来店初回対応(対面)
初めて店舗に来店されたお客様との会話では、“人としての印象”と“安心感”がすべてです。
営業トークというより、「相談相手」になる気持ちで話しましょう。
例文(対面)
「ご来店ありがとうございます。〇〇不動産の△△です。
お時間いただきありがとうございます。
本日は〇〇様の理想にぴったり合うお部屋を一緒に見つけられたらと思います。
差し支えなければ、現在のお住まいとお探しの条件をお聞かせいただけますか?」
ポイント:
- 名前を繰り返して親近感を出す
- 「探す」ではなく「一緒に見つける」と言うことで並走感を演出する
- 質問のトーンはやわらかく、詰問調にならないようにする
シーン② 電話問い合わせへの初回対応
電話は対面よりも情報が少なく、声のトーンとテンポが印象を左右します。
電話口では「短く・明るく・的確に」が鉄則です。
例文(電話)
「お電話ありがとうございます。〇〇不動産の△△です。
お問い合わせいただいた〇〇物件について、ご希望の条件など少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」
→ ヒアリング後:
「ありがとうございます。〇〇様の条件に近い物件が他にもございますので、
いくつか候補をまとめてお送りします。メールとLINE、どちらがご都合よろしいですか?」
ポイント:
- 名前を呼ぶだけで信頼感が倍増する
- “確認”ではなく“提案”の口調にする
- 「他にもございます」と言うことで、次の接点を自然に作る
シーン③ 内見前のフォロー電話
初回の会話から数日後、次の接点を作るフォロー電話も重要です。
ここでは「覚えてくれていた」と感じさせる一言が鍵になります。
例文(フォロー)
「〇〇様、先日はお話をありがとうございました。
お伺いした“駅近で2LDK”という条件にぴったりの物件が見つかりました。
今週末に内見も可能ですが、ご予定いかがでしょうか?」
ポイント:
- “覚えている感”を出すために、前回の内容を具体的に引用する
- 「提案+行動(内見)」で次のアクションを自然に引き出す
- 無理な押し売りにならないよう、相手のスケジュールを尊重する
シーン④ 初回商談の締め方
初回面談や商談の最後に、次につなげる締め方を間違えると関係が途切れます。
「次も話したい」と思ってもらうための締め方を心がけましょう。
例文(締め)
「本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。
〇〇様の理想がより明確になったので、次回までに具体的な候補を3件ご用意します。
土日あたりで再度お打ち合わせできればと思うのですが、ご都合いかがでしょうか?」
ポイント:
- “次回”を明示して終わる
- お客様の話を“反映した提案”を約束する
- 「また連絡します」ではなく「次の約束を取る」ことで商談が途切れない
トークテンプレートまとめ表
| シーン | トークの目的 | 鉄板フレーズ例 |
|---|---|---|
| 来店対応 | 信頼と安心を作る | 「一緒に理想のお部屋を見つけましょう」 |
| 電話対応 | 接点を増やす | 「他にも条件に合う物件がございます」 |
| フォロー電話 | 継続接触のきっかけ | 「先日伺った条件に合う物件が見つかりました」 |
| 商談締め | 次の行動を確定 | 「次回までに候補を3件ご用意します」 |
これらを使い分けることで、どんな状況でも“信頼ベースの営業トーク”ができます。
ステップアップのための応用ポイント
- 相手の温度に合わせて話す速度を変える
落ち着いたタイプにはゆっくり、テンポの速い人には軽快に合わせる。 - 会話の終わりに「お名前+ポジティブワード」を添える
「〇〇様、本当に明るいお考えですね」といった一言で印象が残ります。 - 毎回の会話で“記憶のフック”を作る
「前にお話していた○○の件ですが…」という入り方で、“覚えてくれてる人”になれる。
ポイントまとめ
- シーンごとに「目的」と「キラーフレーズ」を整理する
- トークは暗記ではなく、“構造”を理解して使う
- 「一緒に考える姿勢」が最強の営業トークになる
まとめ 新人営業でも不動産の初回トークは「型」で成果を出せる
不動産営業の初回トークは、「経験」や「センス」ではなく正しい型と意識で磨けます。
今回紹介した内容を整理すると、次の3つが営業として最も重要な要素です。
【1】信頼を得ることが最優先
初回トークの目的は「売ること」ではなく「信頼されること」。
相手の緊張を解き、安心感を与えるだけで次の商談の成功率が跳ね上がります。
【2】ヒアリングは“質問”ではなく“会話”
単なる質問の羅列ではなく、共感を交えたキャッチボールを意識すること。
相手の発言を受け止め、要約して返すことで信頼が深まります。
【3】次の約束を必ず取る
営業トークのゴールは「関係を続けること」。
そのために「次に何をするか」を明確に提示し、自然な流れで次のステップへ導くことが鍵です。
最後に
営業の世界では、トーク力とは「話す力」ではなく「伝わる力」です。
初回トークで必要なのは、あなたの誠実さと理解力を形にすること。
焦らず、相手のペースに寄り添いながら、会話の中で“信頼を積み上げていく”ことが大切です。
新人であっても、この記事で紹介したトーク構成と実践例を意識すれば、
初回面談の印象が大きく変わり、「また話したい営業」になれるはずです。
まとめポイント
- 初回トークは「信頼を得る」「話を引き出す」「次の約束を取る」が基本
- 型を身につければ、誰でも安定した成果が出せる
- トークは技術ではなく「信頼を形にする行為」である

