江崎グリコ(Glico)は、菓子・乳製品・健康食品など多彩な事業を展開する日本を代表する食品メーカーです。
その営業活動は、単なる商品の納品・取引先拡大に留まらず、提案型営業・業務用販路拡大・ノベルティ提案・自治体備蓄事業など、幅広いチャネルを通じて企業価値を創出しています。
本記事では、江崎グリコの営業体制の特徴、具体的な手法、営業職のやりがい・課題、さらには新任営業担当者が押さえておきたいポイントまでを、実例&最新情報を交えて解説します。
営業志望者・現場担当者にとって、日々の活動をアップデートするヒントが詰まった内容になっています。
江崎グリコの営業体制の特徴
江崎グリコの営業組織は、「市場理解」と「顧客提案」の両立を重視した構造を持っています。単に商品を売るのではなく、「どんな生活シーンで、どんな価値を提供できるのか」を明確にすることを営業の基軸に据えています。以下では、同社の営業体制を3つの観点から整理していきます。
1. チャネル別の戦略展開
グリコの営業は、BtoBとBtoCの両面に強みを持ちます。とくに以下のように多層的なチャネル戦略を展開しています。
チャネル | 主な内容 | 具体例 |
---|---|---|
量販店・小売店営業 | スーパーマーケットやコンビニへの商品提案 | 「ポッキー」「ビスコ」「アイスの実」などの陳列提案 |
業務用営業 | 飲食店・ホテル・給食会社への商品供給 | デザート用プリン、業務用チョコレートなど |
自治体・法人営業 | 防災備蓄・福利厚生用途などの提案 | 「ビスコ保存缶」などの備蓄提案 |
海外営業 | 各国の市場調査・ブランドローカライズ | アジア圏を中心にした輸出・現地販売 |
このように、市場ごとに営業アプローチを最適化しているのが江崎グリコの大きな特徴です。単に「全国展開」ではなく、地域・業種ごとのニーズに合わせて戦略をカスタマイズしています。
2. データドリブンな営業支援
グリコの営業活動では、SalesforceなどのCRMツールを活用し、商談履歴・市場データ・消費者動向を一元管理しています。これにより、担当者は勘や経験に頼らず、「データに基づく仮説提案」が可能になりました。
たとえば、小売店で「ある棚の売上が伸びない」といった課題が見えた場合、過去の陳列パターンや季節トレンドを分析し、“売れる棚割り”を提案します。これがまさに「グリコ流の営業力」の根幹です。
3. チーム制による連携強化
営業部門とマーケティング部門、さらには製造・開発部門が連携しているのも特徴的です。単独営業ではなく、チームとして顧客に向き合う体制を築くことで、商談スピードと提案品質を両立しています。
営業担当者が現場で得た声を開発部にフィードバックすることで、商品改良や新商品企画にも反映されます。いわば「現場起点のマーケティング」を体現する仕組みです。
江崎グリコの営業スタイルと提案力の強さ
江崎グリコの営業活動の最大の特徴は、「商品を売る」よりも「価値を提案する」姿勢にあります。単なる食品メーカーの営業ではなく、取引先や消費者の課題を解決する“ソリューション営業”を展開しているのです。
ここでは、グリコ営業の提案スタイルと実践例を掘り下げていきます。
1. 提案型営業の本質
グリコの営業マンは、取引先に対して「どの商品を置くか」ではなく、「どうすれば売場全体の回転率を上げられるか」という観点からアプローチします。
これはまさに、パートナーとしての共創営業です。
たとえばコンビニ向けの提案では、
- 季節トレンド(例:夏のアイス需要・秋のチョコレート訴求)
- 消費者層(学生・社会人・ファミリー層など)
- 陳列位置(目線の高さ・導線・冷蔵ケース内の配置)
などをデータで裏づけし、最適な構成を提案します。
結果、単なる“商品の導入”ではなく“売場全体の売上最大化”を目的とした商談が成立します。
2. 商品提案からブランド提案へ
グリコの営業は、商品単位の販売だけでなく、ブランドとしての価値を伝える活動にも力を入れています。
たとえば「ポッキー」や「ビスコ」などのブランドでは、販促キャンペーンやSNS施策と連動した販売戦略を実施。営業が現場で得た顧客・消費者の声をマーケティング部署に共有し、“現場発のブランド戦略”を育てています。
この営業スタイルが社内でも重視されており、実際にSalesforce導入時の公式事例でも「データ活用によりブランドごとの課題解決が可能になった」と明言されています。
3. 法人・自治体営業の拡大
もうひとつ注目すべきは、法人・自治体向けの提案型営業の広がりです。
たとえば防災備蓄用の「ビスコ保存缶」は、学校や自治体、企業の防災担当者に向けた“命をつなぐ提案”として営業展開されています。
ここでは単なる販売ではなく、
- 保存期間
- 栄養価
- アレルギー対応
などの条件を踏まえた課題解決型プレゼンテーションが行われます。
このように「人の健康と安心を支える提案」を軸に、グリコの営業は社会的価値の創出に貢献しているのです。
4. BtoB分野の成長戦略
業務用商材の分野では、ホテル・レストラン・給食事業者などを対象に、調理効率化・メニュー提案を組み合わせた営業を行っています。
たとえば業務用プリンやチョコレート原料の営業では、以下のような付加価値を提供しています。
提案項目 | 内容 |
---|---|
メニュー提案 | 自社商品を活用した新メニュー開発支援 |
原価シミュレーション | 材料コストと販売価格の最適化提案 |
安定供給体制 | 物流・在庫の安定性に基づく信頼構築 |
このように、営業担当者は“商品を届ける人”ではなく“顧客のビジネスを支える参謀”としての立場を担っています。
江崎グリコの営業職のやりがいとキャリアパス
営業という仕事には「ノルマが厳しい」「精神的にきつい」というイメージがつきまといますが、江崎グリコの営業職はその印象とは少し異なります。
同社の営業は、「人と人の信頼関係を築きながら、社会に価値を提供する」仕事として位置づけられており、やりがいと成長機会が豊富に用意されています。
ここでは、グリコ営業職のやりがい・キャリアパス・成長支援制度について具体的に見ていきましょう。
1. やりがいは「信頼関係と成果が直結する実感」
グリコの営業職の多くが共通して口にするのが、「信頼が数字につながる喜び」です。
商品力が強いことはもちろんですが、それ以上に大切なのは、取引先との信頼構築です。
たとえば、ある営業担当者がスーパーマーケットのバイヤーと長期的な関係を築き、売場改善提案を重ねた結果、担当エリア全体の販売数が前年比120%を達成したケースがあります。
このように、自分の努力と提案が目に見える成果として返ってくる点が、大きなモチベーションとなっています。
2. キャリアパスは「専門性×マネジメント」の二軸
グリコでは、営業職のキャリア形成において「専門職」と「管理職」の二方向を設定しています。
キャリアパス | 内容 |
---|---|
専門職ルート | 取引先戦略・商品カテゴリー戦略など、特定領域に特化して知見を深める。例:業務用営業の専門家としてレストラン業界を担当。 |
管理職ルート | チームを率いるリーダー、支店長、本社営業企画職など、マネジメント中心のキャリアへ。 |
このように、個人の強みや志向に合わせたキャリアデザインが可能です。
特に最近は、データ分析スキルを活かして営業戦略立案に携わる「データ営業職」も増えています。“営業×デジタル”のハイブリッド型人材が求められているのです。
3. 教育・研修制度の充実
グリコでは新入社員に対し、商品知識・提案スキル・ロジカルコミュニケーションを基礎から学べる研修プログラムを整備しています。
また、配属後も「OJT+フォローアップ研修」で継続的にスキルアップを支援します。
特に注目すべきは、「ロールプレイ商談研修」。これは実際の営業シーンを想定し、上司や先輩が顧客役となって模擬商談を行うトレーニングです。現場に即した改善フィードバックを得られるため、実践的な成長が可能になります。
4. 社風は「挑戦と信頼の両立」
グリコの営業部門は、「挑戦を恐れない文化」と「仲間を信じる風土」が共存しています。
個人プレーではなく、チームで成果を上げる組織文化が根付いているため、若手社員でも積極的に新しい提案を行うことができます。
また、管理職も「上司=監督」ではなく「上司=伴走者」として部下をサポートするスタイルが一般的です。
これが安心して挑戦できる環境をつくり、結果として高い定着率と業績安定につながっています。
5. 社員の声から見るリアルな現場
就活サイトや社員インタビューを見てみると、現場のリアルな声が見えてきます。
「担当先の店長と“次のヒット商品をどう売るか”を一緒に考えるのが楽しい」
「営業成績だけでなく、“どうお客様と向き合ったか”も評価される」
「メーカー営業は提案の幅が広く、学ぶほど自分の市場価値が上がる」
このように、数字だけでなく“顧客と伴走する営業”を評価する文化が根付いているのが江崎グリコの大きな魅力といえます。
江崎グリコの営業が生み出す市場インパクトと社会的価値
江崎グリコの営業は、単に「売上を上げる」だけの役割ではありません。
“おいしさと健康”という企業理念を社会に広める最前線の存在として、消費者・取引先・地域社会の三方向に価値を届けています。
ここでは、グリコ営業が生み出す市場へのインパクトと、社会的意義を詳しく見ていきましょう。
1. 市場を動かすデータ活用と現場洞察
江崎グリコは、営業活動においてデータと現場感の融合を徹底しています。
Salesforceなどのデジタルツールを使って消費者動向を分析しつつ、現場で得たリアルな購買行動データを組み合わせることで、より的確な提案を実現しています。
たとえば「アイスの実」や「ジャイアントコーン」などの冷菓カテゴリーでは、気温・天候・立地条件を踏まえた販売データ分析を行い、店舗ごとに“最適な在庫量と販促タイミング”を導き出します。
これにより、売り逃しを防ぎ、販売効率を最大化することが可能になっています。
さらに、営業担当者は「データを読む力」と「現場を感じる力」の両方を磨くことで、AIに置き換えられない人間的提案力を発揮しているのです。
2. 地域密着型営業の展開
江崎グリコの営業は、全国のエリアごとに「地域特性」を踏まえた提案活動を行っています。
地域 | 主な施策例 | 特徴 |
---|---|---|
関西エリア | 地元ブランドとのコラボ商品販売 | 「関西限定ポッキー」などご当地プロモーション |
関東エリア | 駅ナカ・オフィス街向け即食商品提案 | 忙しいビジネス層向けの「朝食ビスコ」提案 |
東北・北海道エリア | 冬季の販促強化・保存食提案 | 長期保存可能な備蓄食品の営業強化 |
九州・沖縄エリア | 学校・自治体への健康教育営業 | 栄養バランスと防災意識をテーマにした提案活動 |
こうした地域密着型のアプローチは、単なる販売戦略ではなく、地域社会とともに歩む共創活動ともいえます。
地域の消費行動を理解し、生活者目線で提案することが、グリコ営業の“人間味あるマーケティング”を支えています。
3. 社会貢献型営業の広がり
江崎グリコの営業活動は、社会的な課題解決とも密接に関わっています。
代表例が「ビスコ保存缶」に代表される防災・減災事業です。
災害時にも安心して食べられる商品を提案することで、自治体や企業の防災意識を高め、社会的なレジリエンス(回復力)向上に寄与しています。
また、近年では「乳製品営業部門」が学校給食向けのカルシウム強化提案を行うなど、栄養教育にも貢献しています。
このように、江崎グリコの営業は社会課題の解決をビジネスの一部として取り組む姿勢を持ち、企業理念「すこやかな毎日、ゆたかな人生」に直結しています。
4. 営業が支えるブランド価値の持続性
営業は、ブランドの“顔”として現場の第一線に立つ存在です。
グリコでは、営業担当者が収集した「お客様の声」や「市場の変化」をマーケティングや商品開発にフィードバックするサイクルを構築しています。
これにより、ブランド価値が時代とともに進化し続けるという好循環を生み出しています。
たとえば、健康志向の高まりを受けて「SUNAO」シリーズの販路拡大を推進したのも営業現場からの提案でした。
現場での声が新たな商品展開を生み出す――これこそがグリコ営業の強さの象徴です。
5. 持続可能な営業への取り組み
近年、江崎グリコは環境配慮型の営業戦略にも力を入れています。
営業車両のハイブリッド化、紙資材の削減、エコ陳列資材の採用など、サステナビリティを営業活動に組み込む動きが加速しています。
また、取引先に対しても「環境に優しい陳列什器」や「脱プラスチック包装」の提案を行うことで、業界全体の環境意識向上に貢献しています。
つまり、グリコの営業は“売るための営業”ではなく、“持続可能な社会をつくる営業”へと進化しているのです。
江崎グリコ営業職に求められる人物像とスキルセット
江崎グリコの営業は、「人」と「データ」と「ブランド」をつなぐ架け橋のような存在です。
では、実際にどんな人がグリコの営業として活躍できるのでしょうか?ここでは、求められる人物像とスキルセットを具体的に整理します。
1. 顧客志向と信頼構築力
グリコの営業が最も重視しているのは、「相手の立場で考える力」です。
商品の知識や交渉力よりも、まず「お客様が何を求めているのか」を正確に読み取る力が求められます。
具体的には、
- バイヤーや店舗担当者の要望を引き出すヒアリング力
- 顧客の課題を構造的に整理するロジカル思考
- 相手に安心感を与えるコミュニケーション力
が不可欠です。
この“人間力”こそが、グリコ営業の原動力であり、社内でも「信頼を売る営業」と表現されています。
2. データ分析と課題解決力
デジタル化が進む営業現場では、データを武器に提案を組み立てるスキルが求められます。
グリコの営業では、POSデータ・購買履歴・市場トレンドなどを分析し、論理的な提案を行うのが標準です。
スキル項目 | 内容 |
---|---|
データリテラシー | 売上・顧客データを読解し、数値の意味を把握する |
仮説構築力 | 「なぜ売れないのか」「どの層を狙うべきか」を数値から導く |
提案設計力 | データに基づいた改善案を分かりやすく伝える |
これらのスキルを通じて、営業担当者は「商品の説明者」ではなく「課題解決の専門家」として信頼を得ることができます。
3. ブランド理解と発信力
江崎グリコは、ブランドを守り、広げる営業を担っています。
したがって、自社ブランドの理念や世界観を深く理解し、それを現場で表現できる力が不可欠です。
たとえば、「ポッキー」は“シェアする楽しさ”を軸にしたブランドです。営業担当者は、ただ販促を提案するだけでなく、「どうすればこの商品の“楽しさ”が伝わるか」を考え、売場やキャンペーンを設計します。
つまり、ブランドの“伝道師”としての発信力が求められているのです。
4. 柔軟性と粘り強さ
営業の現場では、思い通りにいかないことも多くあります。
取引先の要望変更や市場変化など、想定外の出来事に直面しても、グリコの営業担当者は柔軟に対応し、粘り強く課題解決に取り組む姿勢を大切にしています。
この姿勢を支えるのが、グリコ独自の「チーム営業文化」です。困ったときに仲間と相談し、知見を共有しながら突破口を見つける。
個人プレーではなく、“チームで勝つ”マインドが現場に根付いているのです。
5. 求められる人物像のまとめ
江崎グリコの営業職に向いている人物像をまとめると、以下の通りです。
項目 | 特徴 |
---|---|
対人力 | 顧客やチームとの関係を築く信頼力 |
論理力 | データを基に仮説を立て、提案につなげる力 |
行動力 | 現場に足を運び、課題を自ら発見・解決する積極性 |
ブランド愛 | 自社商品の理念や価値を自信を持って語れる姿勢 |
継続力 | 小さな改善を積み重ねて成果を出す粘り強さ |
これらの特性を持つ人材こそ、グリコの営業として真価を発揮できます。
まとめ 江崎グリコの営業が教えてくれる「信頼で売る力」
江崎グリコの営業を通して見えてくるのは、単なる「売上至上主義」ではない、人間中心の営業哲学です。
彼らは、顧客・社会・ブランドの三者をつなぐ存在として、「信頼」と「提案」を軸に市場を動かしています。
本記事のポイントを振り返ると、以下のように整理できます。
観点 | 内容 |
---|---|
営業体制 | チャネルごとに最適化された提案型営業。データを活用し、現場連携を重視。 |
提案力 | 顧客課題に基づくソリューション提案で、ブランドの価値を拡張。 |
キャリア | 専門職・マネジメントの両方を目指せる柔軟なキャリア設計。 |
社会貢献 | 防災・健康・環境など、社会的意義を持つ営業活動を展開。 |
人物像 | 顧客志向・データ活用力・ブランド愛・柔軟性を兼ね備えた人材が活躍。 |
江崎グリコの営業は、「商品を売る」のではなく「価値を伝える」仕事です。
数字の背後には、顧客との対話、チームの努力、そして社会への思いやりがあります。
これこそが、100年を超えてグリコが支持され続ける理由であり、営業として学ぶべき普遍の原理です。