営業を始めたばかりの新人が最初に悩むのが、「上司への報告の仕方」です。
「何を、どこまで、どの順で伝えればいいのか分からない…」と感じる方は多いはず。
しかし、営業において報告は単なる義務ではなく、“信頼を築くスキル”の一つです。
上司が安心して任せられる営業ほど、昇進も早く、成績も伸びやすい傾向があります。
この記事では、現役営業マネージャーが教える「上司への報告フォーマットと実践例」を紹介します。
日報・商談報告・週次報告の3種類のテンプレートを用意し、状況別に使い分けられるように解説します。
今日から「報告上手=信頼される営業」への第一歩を踏み出しましょう。
新人営業が上司への報告で意識すべき3つの基本
営業における「報告」は、ただ情報を伝えることではありません。
報告の質は、上司からの信頼・チーム内の評価・自身の成長スピードを左右します。
まずは、報告において新人が押さえるべき基本原則を整理しましょう。
1. 報告の目的を「共有」ではなく「判断支援」と考える
新人がやりがちなミスは、「報告=自分の記録」だと思ってしまうことです。
しかし、上司にとっての報告の目的は、「次の判断をしやすくすること」です。
悪い報告の例
「今日は3件訪問しました。反応は微妙でした。」
良い報告の例
「3件訪問し、うち2件は課題ヒアリングで好感触。次回提案の方向性を相談したいです。」
このように、「何を伝えたいのか」「どんな判断をしてほしいのか」を明確にすると、
上司も迅速にサポートできます。
2. 「事実・意見・感情」を分けて伝える
報告が曖昧になる最大の原因は、「感情」と「事実」が混ざること」です。
上司は客観的な判断をしたいので、報告は次の3区分で整理しましょう。
| 区分 | 内容 | 例文 |
|---|---|---|
| 事実 | 実際に起きたこと | 「B社から価格見積り依頼を受けた」 |
| 意見 | 自分の考え | 「価格競合は厳しいが、提案次第で勝てる」 |
| 感情 | 感じたこと | 「少し自信を失ったが、次に繋げたい」 |
この順序で伝えると、上司が「何が起きて」「どう考えて」「どう支援すべきか」を瞬時に理解できます。
3. 「報連相(ほうれんそう)」のタイミングを守る
営業の報告は、内容だけでなくスピードが重要です。
特に新人のうちは、次のようなタイミングで報告する習慣を持ちましょう。
| タイミング | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 事前報告 | 商談・提案の前に共有 | 上司のアドバイスを得る |
| 途中報告 | 想定外のトラブル発生時 | リスク回避・迅速判断 |
| 事後報告 | 商談・提案・トラブル解決後 | 次回改善・学び共有 |
報告が遅い=信頼を失うサイン。
逆に、早く・簡潔に・正確に伝えられる営業は、どんな上司からも頼られます。
新人営業向け 上司への報告フォーマット一覧
上司への報告は、状況によって求められる情報量や目的が異なります。
そこで、ここでは代表的な3つの報告フォーマットを紹介します。
どれもそのまま使える構成になっており、「何を・どの順番で伝えるか」を迷わず整理できます。
【1】日報フォーマット(毎日の活動報告)
新人営業が最も頻繁に使うのが「日報」です。
目的は、1日の行動を整理し、次の改善につなげること。
「報告しながら振り返る」姿勢を持ちましょう。
日報フォーマット例
| 項目 | 内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 日付 | 報告日 | 10月28日(月) |
| 訪問・商談件数 | 本日の実績 | 訪問3件/商談2件/架電25件 |
| 成果・進捗 | 具体的な成果 | B社:次回提案依頼、C社:検討保留 |
| 良かった点 | 成功要因 | 午前のアポ時間変更が効果的だった |
| 課題・改善点 | 反省・次回対応 | 提案資料が長すぎたので要簡略化 |
| 上司への相談事項 | 支援が必要な点 | 次回提案の見積り内容を確認したい |
| 明日の目標 | 行動目標 | 架電30件・アポ3件・商談1件 |
書き方のコツ
- 「結果」だけでなく「原因」も書く(良い・悪い両方)
- 定量+定性の両方を入れる(数字+気づき)
- 上司に“相談できる報告”にする(一方通行にしない)
【2】商談報告フォーマット(1件ごとの案件報告)
商談後の報告は、「上司の判断を助ける」ことを目的にします。
感想ではなく、「今どの段階にあり、次に何をすべきか」を明確にします。
商談報告フォーマット例
| 項目 | 内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 顧客名 | 企業名・担当者名 | 株式会社エイブル 営業部 佐藤様 |
| 商談日 | 実施日 | 10月28日 13:00〜14:00 |
| 商談目的 | 目標・意図 | 新サービス提案・導入検討確認 |
| 商談結果 | 概要 | 導入時期は12月以降、条件提示を依頼された |
| 顧客の反応 | ポジティブ/ネガティブ要素 | 前向き。ただし費用感に懸念あり |
| 次のアクション | 次回の行動 | 来週金曜に見積り再送・競合比較資料提出 |
| 上司への相談事項 | 支援を求める点 | 提案書の価格表現を見直したい |
書き方のコツ
- 「状況+感触+次アクション」をセットで報告
- 事実と印象を分ける
- 文章ではなく箇条書きで要点を明確にする
上司は“判断材料”を求めている。
感想ではなく、「次にどう動けばいいか」を導き出す報告を意識しましょう。
【3】週次報告フォーマット(週ごとの振り返り)
週次報告は、1週間の行動をまとめて改善点を洗い出すフォーマットです。
上司との1on1やチームミーティングの資料としても使えます。
週次報告フォーマット例
| 項目 | 内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 今週の目標 | 週の行動方針 | 架電100件・商談6件・成約2件 |
| 実績 | 実際の数値 | 架電92件・商談5件・成約1件 |
| 成功事例 | 上手くいった行動 | 朝9時の架電時間が効果的だった |
| 課題 | うまくいかなかった点 | 商談の事前準備が不十分だった |
| 改善策 | 次週に取り組むこと | 商談ごとに「課題3行メモ」を準備する |
| サポート要望 | 上司に相談したいこと | 提案書テンプレートの共有をお願いしたい |
書き方のコツ
- 成果よりも「成長の過程」を意識
- 数字を出すことで改善点が見えやすくなる
- 書くことが目的ではなく「次週をより良くする」ことが目的
報告の質を高める実践テクニックと失敗しないコツ
フォーマットを用意しても、「どう書けば伝わるか」が分からない新人は多いです。
ここでは、上司に信頼される報告を作るための実践的なコツと、ありがちな失敗パターンを紹介します。
1. 報告は「上司が求める粒度」で書く
上司ごとに「どの程度詳しく知りたいか」は異なります。
そのため、まずは上司の報告スタイルを観察することから始めましょう。
上司タイプ別報告スタイル
| タイプ | 特徴 | 報告のコツ |
|---|---|---|
| 数字重視型 | 成果・進捗を明確に見たい | 件数・率・売上など数値で報告 |
| プロセス重視型 | 行動・努力を確認したい | 具体的な行動と気づきを中心に書く |
| 指導型 | 改善点を導きたい | 「うまくいかなかった原因」を重点的に書く |
| 放任型 | 必要な時だけ確認したい | 要点だけ簡潔に(長文NG) |
報告とは“相手へのプレゼン”です。
自分が書きたいことではなく、相手が判断しやすい形に整えることが信頼構築の基本です。
2. 上司が喜ぶ“読みやすい報告”の3原則
- タイトルをつける
→ 「A社商談報告(結果:前向き)」のように、概要をひと目で伝える。 - 1行1テーマで書く
→ 複数要素を詰め込まない。読み手の理解負荷を下げる。 - ネガティブ情報も隠さない
→ トラブルほど早めに共有。信頼を失うのは「報告漏れ」です。
例:上司が読んで理解しやすい報告文
【件名】B社商談報告(結果:導入見込み高)
本日の商談で導入前向きな反応を得ました。
条件面での確認事項が1点あります。
明日、見積りを再送の上、再ヒアリングを実施します。
ポイント:
上司が1分以内に「状況」「課題」「次の行動」を把握できる報告が理想です。
3. 「報告→アドバイス→改善」を1セットにする
報告の目的は、「上司のアドバイスをもらい、改善につなげること」です。
“報告して終わり”では成長しません。
報告の流れ(理想形)
- 状況報告:「A社の商談、条件交渉まで進みました」
- 課題共有:「価格競合が厳しい印象です」
- 相談依頼:「価格以外の訴求ポイントを相談したいです」
こうすることで、上司が具体的なサポートを提供しやすくなります。
報告とは“助けをもらう技術”。
自分を守るだけでなく、チームの力を引き出すきっかけにもなります。
4. 「文章で伝える」+「口頭で補足する」
日報やフォーマットの提出だけでは、誤解が生まれることがあります。
特に大事な報告は、提出+口頭で補足するのが理想です。
例:
「日報にも記載しましたが、B社の導入時期が早まりそうです。
追加のサポート体制について一度相談させてください。」
上司から「助かる、状況がよく分かった」と言われる営業ほど、
信頼残高がどんどん貯まります。
5. 報告で信頼を落とすNG行動3選
| NG行動 | 理由 | 改善策 |
|---|---|---|
| ① 報告が遅い | 上司が次の判断を下せない | 「当日中」報告を習慣化 |
| ② 主観的な感想だけ述べる | 具体性がない・事実確認ができない | 数字・行動をセットで報告 |
| ③ 言い訳が多い | 責任感がない印象を与える | 「次にどうするか」を書く |
報告とは“信頼の貯金”。
スピード・具体性・前向きさがそろえば、上司は安心して任せてくれます。
6. 報告を「学びの記録」に変える
報告フォーマットは、単なる義務書類ではなく、「自分の営業ノート」として活用しましょう。
書くと成長が加速する項目例
- 今週一番うまくいったトーク
- 商談で刺さった質問
- 顧客が関心を示したキーワード
- 次週に試したい改善案
報告を“成長メモ”に変えれば、数か月後には自分専用の営業マニュアルが出来上がります。
報告を「面倒」から「財産」に変える。
これがプロ営業への第一歩です。
まとめ
新人営業にとって、上司への報告は単なる“義務”ではなく、信頼を築くためのスキルです。
「何をどう伝えるか」で、上司のサポートの質も、あなたの評価も大きく変わります。
本記事で紹介したポイントを振り返ると、次のように整理できます。
| カテゴリ | ポイント | 効果 |
|---|---|---|
| 基本姿勢 | 報告は“判断支援”のために行う | 上司が動きやすくなり信頼が生まれる |
| 構成 | 事実→意見→感情の順に整理 | 論理的で分かりやすい報告ができる |
| フォーマット | 日報・商談・週報を使い分け | 状況に応じた精度の高い共有が可能 |
| テクニック | 数字+行動+改善策で報告 | 成長サイクルが早く回る |
| 信頼構築 | スピード・具体性・誠実さ | 「任せられる営業」へと成長できる |
営業の報告スキルは、数字と同じくらい重要です。
上司に「報告が分かりやすい」「次が見える」と言われる営業ほど、チームで信頼され、成果を出せるようになります。
報告とは、上司との信頼を積み上げる“日々の営業活動の延長”である。
今日からあなたも、「報告力=営業力」として磨いていきましょう。

