営業で「良い提案をしたのに決まらなかった」という経験、ありませんか?
その原因の多くは、“決裁者(意思決定者)を誤っていた”ことにあります。
どんなに魅力的な商材でも、判断権を持たない相手に話していては、永遠に契約には至りません。
特に新人営業の場合、「担当者=決裁者」と思い込んでしまうケースが多く、
これが成果が上がらない最大のボトルネックになっています。
しかし、決裁者の確認にはコツがあります。
本記事では、現場で結果を出してきたプロ営業が実践している、
「決裁者を特定・確認・接触するまでの実践ステップ」を徹底解説します。
組織構造の読み解き方から、自然に決裁者を聞き出すトーク例まで、
新人営業でも今日から使える内容をお届けします。
なぜ「決裁者確認」が営業成果を左右するのか
営業活動の中で、もっとも大きな無駄は「決裁権のない相手に提案している時間」です。
どれだけトークが上手くても、どれだけ資料を作り込んでも、
最終的に決める権限を持っていない人に話している限り、契約は進みません。
担当者と決裁者は違う
多くの新人営業が混同しがちなのが、「担当者=決裁者」という思い込みです。
企業には明確な意思決定の階層が存在し、担当者はあくまで“情報の橋渡し役”であることが多いのです。
| 役職 | 役割 | 決裁レベル |
|---|---|---|
| 担当者 | 情報収集・社内調整 | 低 |
| 係長・主任 | 案件の選定・比較検討 | 中 |
| 部長・課長 | 予算承認・最終判断 | 高 |
| 役員・社長 | 戦略的判断・最終決裁 | 最高 |
この構造を理解せずに「担当者がOKだから大丈夫だろう」と思い込むのは、
営業における典型的な“勘違い失注”パターンです。
なぜ新人営業ほど決裁者を見誤るのか
新人営業が決裁者を特定できない理由には、主に3つの要因があります。
- 企業の意思決定構造を理解していない
→ どの部署が予算を持っているのかを把握していない。 - 担当者への遠慮
→ 「上司に話を通していいですか?」が言えず、踏み込めない。 - 確認の仕方が不自然
→ 決裁者を聞こうとして「誰が偉いのか」を尋ねるような印象になる。
つまり、決裁者確認がうまくできないのは能力不足ではなく、
「情報の取り方」と「聞き方の設計」ができていないだけなのです。
決裁者確認ができると営業はこう変わる
決裁者を明確に特定できるようになると、営業成果は一気に安定します。
その理由はシンプルで、「正しい相手に、正しい話ができる」ようになるからです。
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 決裁者が不明のまま提案 | 提案が“社内検討止まり”で終わる |
| 決裁者を確認して提案 | その場で具体的な返答が得られる |
| 決裁者の関心を把握して提案 | 契約率・単価ともに上昇する |
営業は「説得の技術」ではなく「意思決定の構造を理解する技術」だと言っても過言ではありません。
次章では、実際に決裁者を見抜き、確認するための具体的なステップを紹介します。
決裁者を特定するための実践ステップ
営業において、決裁者を「なんとなく」ではなく明確に把握できているかどうかが成果の分かれ目です。
ここでは、実際の営業現場で効果のある「決裁者を特定するための5ステップ」を紹介します。
新人営業でもすぐに実践できる具体的な行動レベルに落とし込んでいます。
ステップ1 企業情報を事前にリサーチする
まずは、架電や訪問前に企業の意思決定構造を把握しましょう。
多くの新人営業は「電話してから調べる」傾向がありますが、これは非効率です。
リスト作成時点で以下の情報をチェックしておくことが理想です。
| 情報項目 | チェックすべき内容 | 入手先 |
|---|---|---|
| 企業規模 | 従業員数・売上規模 | 公式サイト・Musubuなど |
| 組織構成 | 部署構成・上位職の存在 | 会社概要ページ・IR資料 |
| 役職者情報 | 部長・課長などの名前 | LinkedIn・プレスリリース |
| 過去の意思決定傾向 | 導入・提携事例など | ニュース・企業ブログ |
特にBtoBでは“誰が予算を握っているか”が鍵。
たとえば人材系サービスなら「人事部長」、営業支援なら「営業本部長」が決裁者になりやすい傾向があります。
ステップ2 担当者の“発言レベル”を観察する
実際に担当者と話す中で、決裁者の手がかりは必ず現れます。
その際に注目すべきは、担当者の発言の“決定権レベル”です。
| 発言タイプ | 決裁権の有無 | 意味すること |
|---|---|---|
| 「上に確認してみます」 | 決裁権なし | 上司が最終判断者 |
| 「予算的にはちょっと…」 | 部分的権限あり | 決裁権限は限定的 |
| 「来期の方向性次第ですね」 | 決裁層に近い | 経営層と連携している可能性 |
| 「導入するとしたら〇〇部長ですね」 | 情報提供者 | 決裁者を知っている |
この観察を怠ると、「担当者が興味を持ってくれたのに決まらない」という典型的な失敗に陥ります。
担当者の発言を“情報源”として、次に進むためのヒントを拾いましょう。
ステップ3 自然なトークで決裁者を聞き出す
決裁者を聞くときに、「御社で決めているのは誰ですか?」と直球で聞くのはNGです。
相手に“探られている”印象を与え、信頼を損ないます。
代わりに、自然な流れで聞き出すフレーズを活用しましょう。
おすすめの質問フレーズ集
| シーン | トーク例 |
|---|---|
| ヒアリング中 | 「こちらの内容は、どのあたりの方が最終的にご判断される形でしょうか?」 |
| 商談前 | 「この件は、社内でどなたまでお話が上がるご予定ですか?」 |
| 見積提出前 | 「お見積りを作成する際に、承認の流れも確認させていただいてよろしいですか?」 |
| 商談後 | 「ご提案の際は、〇〇部長様にも同席いただいた方がよろしいでしょうか?」 |
これらの質問は「確認のため」という建前があり、
相手に圧を与えずに決裁者を特定することができます。
ステップ4 決裁ルートをマッピングする
決裁者が分かったら、社内の意思決定ルートを明確に把握します。
特に中堅〜大企業では、複数人が関与する“合議制”が一般的です。
下記のような簡易マップを作ると、営業戦略が立てやすくなります。
| 役職 | 立場 | 行動方針 |
|---|---|---|
| 担当者(A氏) | 情報収集・初回接触 | 丁寧にヒアリング・関係構築 |
| 課長(B氏) | 評価・比較検討 | メリット強調・導入効果提示 |
| 部長(C氏) | 決裁・予算承認 | ROI・リスク削減を訴求 |
| 役員(D氏) | 最終決裁 | 戦略的意義・他社実績提示 |
「誰がどの段階で関与するか」を見える化することで、提案の内容とタイミングを最適化できます。
ステップ5 決裁者との接点を作る工夫をする
決裁者は忙しいため、直接アプローチしても反応が得にくいことがあります。
ここで重要なのが、「間接的な接点作り」です。
代表的な手法を挙げておきます。
| 方法 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 上司同行での再商談 | ベテラン・上長を連れて行く | 決裁層との信頼構築が早い |
| 共通の知人・取引先を活用 | つながりを経由して紹介 | 受付突破率・信頼感アップ |
| 企業イベント・セミナー参加 | 決裁層が参加する場に顔を出す | 直接接触のチャンスを得る |
| SNS・PR投稿での関心喚起 | 企業投稿に反応・コメント | 相手に名前を覚えてもらう |
決裁者は「話す相手を選ぶ」立場ですが、
こちらが適切なルートで接触すれば、むしろ好意的に受け入れてもらえるケースも多いです。
決裁者確認のトークテクニックと実例集
決裁者を特定するには、単に「誰が偉いか」を聞き出すのではなく、
“自然な流れで必要情報を得る”トーク設計が必要です。
ここでは、実際に現場で使われている決裁者確認のトーク例を、シーン別に解説します。
ケース① 初回架電で担当者が不明な場合
まず、最初の電話で「誰に話せばいいのか分からない」とき。
この時点で「決裁者の名前」を引き出せるかどうかが勝負です。
NGトーク例
「御社の決裁者の方をお願いできますか?」
→ 圧が強く、警戒されるだけ。
OKトーク例
「〇〇に関するご担当者様におつなぎいただけますでしょうか?」
(担当者につながったら)
「こちらの件は、最終的にどの方までご確認が必要になりますか?」
ポイントは、“決裁者”という言葉を使わないこと。
“確認”や“ご承認”といった柔らかい表現で尋ねると自然に聞こえます。
ケース② 商談中に決裁者が曖昧な場合
商談を進めている中で、「誰が決めるのか」が見えないまま話しているケースも多いです。
ここを曖昧にしたまま提案すると、必ず失注します。
突破トーク例
「非常に前向きにご検討いただけてうれしいです。
このあと社内で進める際には、どなたにお話が上がるイメージになりますか?」
この質問を入れることで、相手が自然と「上司の名前」や「決裁プロセス」を話し始めます。
相手に説明させる形をとるのがコツです。
ケース③ 担当者が「自分で判断できる」と言っている場合
新人営業が特に勘違いしやすいのがこのパターン。
担当者が自信満々に「私の判断で大丈夫です」と言っても、
実際には上司承認が必要なことがほとんどです。
確認トーク例
「ありがとうございます。承認手続きなどは特に必要ない形でしょうか?」
「導入時のご確認は、上長の方にも共有されるイメージですか?」
こうした一言を入れるだけで、決裁フローの裏側を自然に把握できます。
ケース④ 見積り提出のタイミングで確認する場合
見積り提出時は、「社内稟議が動く直前」です。
ここで決裁者を確認できないと、提案が宙に浮く可能性があります。
トーク例
「お見積りをお送りする際、承認ルートも合わせて確認させてください。
この資料は、〇〇部長様にもご覧いただく形でよろしいですか?」
“部長”など具体的な役職名を挙げることで、
相手に「誰の承認が必要か」を考えさせる効果があります。
ケース⑤ 商談後に決裁者へ接触したい場合
商談後、担当者から「社内で検討します」と言われた段階。
ここからの一歩を間違えると、音信不通になります。
そのため、担当者経由で決裁者へ“自然に接触する仕掛け”が必要です。
トーク例
「部長様へご説明の際にご活用いただけるよう、
資料に補足を加えて再送いたしますね。」
この一言で、担当者→決裁者へのパスが明確になるうえ、再接触の機会も作れます。
ケース⑥ 決裁者が複数いる場合(合議制)
中堅・大企業では、複数人が決裁に関与するケースが一般的です。
その場合は、「決裁プロセスそのもの」を質問しましょう。
トーク例
「御社ではこうした導入の際、どのような流れで決定が進むことが多いですか?」
この質問で、“誰が影響力を持つか”を探ることができます。
特にIT・製造・人材などの業界では、
部長+管理部門(総務・経理)+役員がセットで関与するケースが多いです。
決裁者確認トークまとめ表
| シーン | キーワード | トークの狙い |
|---|---|---|
| 初回接触 | 「ご担当者様」「確認」 | 入口で自然に特定 |
| 商談中 | 「どなたまでお話が上がるか」 | フローの把握 |
| 見積提出前 | 「承認ルート」 | 決裁者の明確化 |
| 商談後 | 「上長共有」「補足資料」 | 決裁者への導線づくり |
| 合議制 | 「決定の流れ」 | 複数決裁者を把握 |
決裁者確認は“聞き方9割”。
強引に聞くと警戒され、自然に聞くと信頼される。
この差が、新人営業とトップ営業の決定的な違いです。
決裁者を見極めた後のアプローチ戦略
決裁者を特定することがゴールではありません。
そこから先に必要なのは、どう接触し、どう信頼を獲得するかという戦略です。
ここでは、新人営業でも実践できる「決裁者アプローチの実践法」を紹介します。
ステップ1 担当者を味方につけて“紹介”してもらう
決裁者に直接電話やメールをしても、信頼ゼロの状態では突破できません。
ここで活きるのが、担当者を介した紹介ルートです。
決裁者との関係性を築くために、まずは担当者を信頼させましょう。
担当者を動かすトーク例:
「〇〇様から上司の方へお伝えいただく際に、
ご負担にならないよう補足資料を作成してもよろしいでしょうか?」
こうした一言を添えると、担当者が「自分の手間を減らしてくれる営業」と認識し、
自然と決裁者へ話を通してくれるようになります。
“押すよりも支える”姿勢が、上層ルートを開く鍵です。
ステップ2 決裁者の関心領域を調べる
決裁者は「数字」や「組織の将来性」で判断します。
担当者レベルが重視する「便利さ」「使いやすさ」よりも、
“経営効果”を語れるかどうかが突破のポイントです。
| 決裁者タイプ | 興味を持つポイント | 提案トークの方向性 |
|---|---|---|
| 経営者・役員 | 収益性・リスク・競合との差別化 | 「御社の中期目標に対して…」 |
| 部長クラス | チーム成果・コスト効率 | 「部内での成果改善に直結します」 |
| 管理部門(総務・経理) | 手続き・契約リスク・予算 | 「運用コストと承認フローを最適化します」 |
新人営業でも、相手の関心領域を事前に想定して話せば、
決裁者の反応が明らかに変わります。
ステップ3 決裁者の「時間」を奪わない
決裁者は時間が最も貴重なリソース。
つまり、短く・要点を押さえた会話設計が求められます。
効果的な初回アプローチ構成:
- 目的の明示(10秒)
「〇〇の導入効果について、簡単にご相談させていただきたく…」 - 共感・背景(20秒)
「御社の□□の取り組みを拝見しておりまして、弊社の支援実績が近いと感じております。」 - 提案価値(30秒)
「平均で△△%のコスト削減が実現しており、貴社でも効果が見込めます。」 - クロージング(10秒)
「もし可能であれば、10分だけご説明のお時間を頂戴できますでしょうか?」
この“70秒ルール”を意識すると、決裁者が最後まで話を聞いてくれる確率が上がります。
ステップ4 決裁者への提案内容は“経営視点”に変える
担当者向けと同じ資料・トークで決裁者に挑むのはNGです。
決裁者は「現場レベルの話」よりも、「会社にとって意味があるか」で判断します。
したがって、提案内容を“経営目線に翻訳”する必要があります。
| 担当者向け | 決裁者向け |
|---|---|
| 操作が簡単で現場負担が減ります | 業務効率化で年間○○時間の削減が可能です |
| 導入コストが低いです | 投資回収期間が○ヶ月以内です |
| 他社でも導入されています | 業界大手の〇〇社でも成果が出ています |
新人営業ほど、「自社サービスの説明」に終始しがちですが、
決裁者は「なぜ今やるべきか」「経営的に正しい判断か」を見ています。
数字と根拠で語るトーク設計を意識しましょう。
ステップ5 決裁者との信頼を積み重ねる
一度会えたからといって、すぐに契約になるとは限りません。
むしろ決裁者は、「継続的に誠実な対応をしてくれる営業」を重視します。
短期決着ではなく、長期的な信頼構築を前提に動きましょう。
| 信頼構築のアプローチ | 内容 | 成果 |
|---|---|---|
| 定期的な近況報告 | 新機能・市場動向を共有 | 継続接点の確保 |
| 決裁者向け資料の送付 | 短く要点だけのレポート | 情報提供として受け入れられる |
| 部下経由の再接触 | 担当者→決裁者ルートを維持 | 組織的信頼の蓄積 |
新人営業の最大の武器は「誠実さ」。
たとえ経験が浅くても、丁寧で一貫した対応が信頼を生み、最終的に契約へとつながります。
まとめ 決裁者を掴めば営業は劇的に変わる
営業の成果を決めるのは「話の上手さ」ではなく、「誰に話すか」です。
新人営業が最初に身につけるべきスキルは、トークよりもまず決裁者を正確に見抜く力です。
本記事で紹介したように、決裁者を確認・特定するには次の流れを意識しましょう。
- 企業情報を事前にリサーチして構造を把握する
- 担当者の発言や行動から決裁権を見極める
- 自然な質問トークで決裁者を確認する
- 社内決裁ルートをマッピングして提案戦略を立てる
- 決裁者への接点作りと信頼構築を継続する
営業の本質は「決裁権者と正しく話をすること」。
そこに到達できれば、提案の質も契約率も一気に変わります。
あなたが“話す相手を間違えない営業”になれれば、営業活動は確実にラクになります。
決裁者を制する者が、営業を制する。
この一文を胸に、次の商談から実践してみてください。

