商談の途中で顧客から突然、
「もう他社を使っているんですよね」
そう言われて、言葉が詰まった経験はありませんか?
新人営業にとってこの一言は“試練の壁”のように感じるものです。
しかし実際には、ここでの返し方ひとつで、商談が終わるか・続くかが決まります。
本記事では、現役トップ営業が実践する「競合を使っている」と言われたときの返し方を具体的に紹介します。
避けるべきNG対応、好印象を与える切り返し方、会話を再び前向きに戻すテクニックまで、すべて実例付きで解説。
「断られた」と思うその瞬間こそ、チャンスです。
この記事を読めば、あなたも“切り返せる営業”に変わります。
「競合を使っている」と言われたときの本当の意味を理解する
営業現場で「他社を使っている」と言われた瞬間、多くの新人が「もう無理だ」と感じてしまいます。
しかし、その反応の9割は、“拒絶”ではなく“防御”です。
まずは、顧客の発言の裏にある“本当の意図”を理解しましょう。
1. 「他社を使っている」=あなたを試している
顧客がこの言葉を出す理由の多くは、“営業の反応を見ている”からです。
つまり、完全に断るつもりではなく、あなたの対応力を試している可能性が高いのです。
例
「今はA社さんを使っているんですよね(あなたの反応を見ている)」
このとき、焦って引く営業と、落ち着いて質問を返す営業。
後者のほうが圧倒的に信頼を得ます。
2. 顧客の“3つの心理パターン”を把握する
| パターン | 顧客の本音 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| ① 現状維持型 | 面倒だから変えたくない | 手間がかからない提案を示す |
| ② 検討中型 | 他社を使っているが不満もある | 不満点をヒアリングして切り口を探す |
| ③ 比較思考型 | 複数を比較して最善を選びたい | 冷静に差別化ポイントを提示する |
重要なのは、「なぜ他社を使っているのか」を掘り下げること。
表面の“使っている”に惑わされず、“満足しているかどうか”を確認することが本質です。
3. 新人営業がやってはいけない2つのNG対応
NG①:「そうですか…」と会話を終わらせる
→ 顧客は“関心がない”と判断して、再チャンスが消えます。
NG②:「どこを使ってるんですか?」とすぐ聞く
→ 情報を取りたい意図が透けて見え、不快感を与えます。
このフェーズでは、“情報収集”ではなく“会話継続”を目的にするのが正解です。
競合を使っていると言われたときの正しい返し方ステップ
ここからは、実際の商談で「競合を使っています」と言われた際の、実践的な切り返しステップを紹介します。
ただ反論するのではなく、会話を“継続”させるのがゴールです。
ステップ①:まずは即座に否定しない
一番大事なのは、「反応を焦らない」こと。
相手の言葉に動揺せず、一度受け止めてから質問を返すのが基本です。
悪い例
「えっ、そうなんですね…ではまたの機会に。」
良い例
「そうなんですね! ちなみに、今のサービスに満足されていますか?」
一言「そうなんですね」と受け止めるだけで、顧客は安心します。
そこから“満足度”を探る質問に自然に切り替えましょう。
ステップ②:「利用中の背景」を探る質問をする
競合利用をしている理由を聞くことで、顧客の意思決定基準が明確になります。
新人営業でも使いやすい質問は以下の通りです。
質問例
- 「導入の際、どういった点を重視されましたか?」
- 「実際に使われてみて、特に満足されている点はどこでしょうか?」
- 「逆に、改善できるとしたらどんな部分だとお考えですか?」
これらの質問は、競合の強みと弱みを同時に把握できます。
不満や未解決の課題があれば、それが差別化の入口です。
ステップ③:「比較視点」を提示して再考を促す
ヒアリングで得た情報をもとに、「別の視点」を提供します。
顧客は“今の選択がベストか”を再確認したくなる心理を持っています。
切り返し例
「A社さんの強みは確かにスピード感ですよね。
ただ、弊社は“導入後のサポート”を重視していて、そこを評価いただくお客様が多いです。」
ここで大切なのは、他社を否定せず、自社の価値を提示すること。
比較ではなく「共存+差別化」というスタンスが顧客の心を開きます。
ステップ④:顧客のリスク認識を促す
「現状維持=安全」と思っている顧客には、“変えないことのリスク”を軽く示すのが有効です。
トーク例
「長く使われている分、改善が後回しになっている部分はありませんか?」
「最近の市場では、この部分が変わりつつあるんです。」
顧客が“今のままで良いのか”と感じた瞬間、あなたの提案に耳を傾ける余地が生まれます。
営業の仕事は、現状の再定義から始まる。
ステップ⑤:「試す価値」を提案して次へつなげる
会話の締めは、“今すぐ切り替え”ではなく“試してみる提案”が理想です。
顧客にとって負担の少ない選択肢を提示しましょう。
例
「いきなり変更というより、まずは一部で比較検証していただくのはいかがでしょう?」
「現在の仕組みを活かしながら、補完的に導入できる形もございます。」
“選ばせる”よりも“選びやすくする”こと。
これが、信頼される切り返しのゴールです。
競合返しのステップまとめ
| ステップ | アクション | 目的 |
|---|---|---|
| ① 受け止める | 否定せずに共感する | 顧客の警戒を解く |
| ② 背景を聞く | 導入理由と満足度を確認 | 判断基準を把握 |
| ③ 比較視点を提示 | 新たな価値を提案 | 再考を促す |
| ④ リスクを示す | 現状維持の不安を喚起 | 興味を再度引き出す |
| ⑤ 試す提案をする | “切り替えやすさ”を提示 | 次回接点を確保 |
断られた瞬間は、最初のチャンスでもある。
逃げずに聞くことで、顧客との関係が一段深まります。
状況別「競合使っている」返し方の具体例
実際の商談では、顧客の状況や心理によって、最適な切り返し方が異なります。
ここでは、代表的な3つのシーンごとに使える実践例を紹介します。
すぐ使えるフレーズを手に入れて、現場で迷わない営業になりましょう。
ケース①:完全に他社を利用中の場合
顧客の発言例
「今はA社さんを使っているので、今のところは大丈夫です。」
悪い対応例
「そうなんですね…。またご縁があればお願いします。」
→ これで会話が終了。再接点を作れずに終わります。
良い対応例
「そうなんですね! ちなみに、A社さんを選ばれた一番の理由はどんなところでしたか?」
「実際に使われてみて、“ここはもう少しこうなれば”という点はありますか?」
ポイント:
“現状の満足度”を聞くことで、潜在的な不満を引き出せます。
多くの顧客は、実は「完璧に満足している」わけではありません。
ケース②:他社に見積もりを依頼している段階
顧客の発言例
「今、B社さんと見積もり比較中なんですよ。」
良い対応例
「ちょうど良いタイミングですね。差し支えなければ、どんな観点で比較されているか伺ってもよろしいですか?」
「B社さんの提案内容に、何か懸念されている点はありますか?」
ポイント:
この段階では、“比較基準”を聞くことが大切。
顧客の判断軸をつかめば、自社の提案をその基準に合わせて再構築できます。
ケース③:他社を長年利用している顧客
顧客の発言例
「C社さんとはもう10年の付き合いで、変えるつもりはないですね。」
悪い対応例
「そうなんですか…。信頼関係が強いですね。」(会話が終了)
良い対応例
「10年というのは素晴らしい関係ですね。
ちなみに、長年ご利用されている中で“今後もっとこうなればいい”と感じる点はありますか?」
「C社さんを続けるメリットと、逆に“これからの課題”を一緒に整理してみてもいいですか?」
ポイント:
長年利用している顧客ほど、“変えない理由”を明確に意識していません。
それを言語化してもらうことで、「改善の余地」が浮かび上がります。
ケース④:競合サービスを高く評価している場合
顧客の発言例
「A社さんはサポートが丁寧で満足しているんです。」
良い対応例
「そうですよね、A社さんのサポートは非常に評判が高いですね。
実は弊社もサポート体制を強化しておりまして、“導入後の改善支援”に力を入れています。」
ポイント:
相手を褒める→自社の価値を重ねる、という流れが自然。
他社を認めたうえで差別化するのが上級トークです。
ケース⑤:価格で他社を使っている場合
顧客の発言例
「他社さんの方が安いので、そちらにしています。」
良い対応例
「価格は重要ですよね。ちなみに、価格以外で重視されている点はありますか?」
「“コスト対効果”という観点で見たとき、成果の出方などはご満足ですか?」
ポイント:
価格勝負に持ち込まれたら負けです。
価格の“背景”を掘り下げ、「安さより安心」「安さより成果」の軸に切り替えることが大切。
状況別・返し方まとめ表
| 顧客状況 | 目的 | 有効な質問・返し方 | NG対応 |
|---|---|---|---|
| 完全導入済み | 不満を引き出す | 「満足度」「改善点」を聞く | 「ではまた」で終了 |
| 見積比較中 | 判断軸を把握 | 「比較ポイント」「懸念点」を聞く | 他社批判 |
| 長年利用 | 現状維持の理由を明確化 | 「課題」「今後の理想」を聞く | 会話を終わらせる |
| 高評価中 | 共感+差別化 | 「共感」→「自社の強み」を伝える | 否定的反応 |
| 価格重視 | コスト以外の価値訴求 | 「効果」「リスク」「安心感」を示す | 値下げ勝負に持ち込む |
顧客の言葉を“壁”ではなく“扉”に変える。
それが、競合トークをチャンスに変える営業の本質です。
まとめ
「他社を使っている」と言われた瞬間に諦めてしまう営業は多いですが、
実はこの言葉こそが、“本音を聞けるチャンス”です。
顧客はあなたを試しており、「どう返すか」で信頼が決まります。
落ち着いて対応し、相手の満足・不満・判断軸を掘り下げることで、
あなたはただの“新人”から、“聞ける営業”へと進化します。
本記事のまとめ
| カテゴリ | ポイント | 効果 |
|---|---|---|
| 顧客心理 | 「競合を使っている」は拒絶ではなく防御反応 | 冷静に対応することで信頼が生まれる |
| 基本ステップ | 受け止め→背景確認→比較提示→提案 | 会話を継続し、再チャンスを作る |
| 状況別対応 | 状況ごとに“満足度”と“改善点”を聞く | 不満を引き出し差別化のチャンスを得る |
| 禁止行動 | 他社否定・情報取り急ぎ・会話終了 | 顧客との関係を壊す原因になる |
| ゴール | 断りを“提案のきっかけ”に変える | 自然に次の商談を作れる営業になる |
「他社を使っている」は、断り文句ではなく、会話の入口。
その一言に“誠実に反応できる営業”こそが、真に信頼される営業です。
断られた瞬間こそ、営業の本領が試される。
その場を終わらせず、“次につなげる一言”をあなたの武器にしてください。

