営業は再現可能な設計で強くなります。本記事はケネディクスの営業に関心がある新人や若手を想定し反響獲得面談設計提案比較内見や現地確認条件交渉成約後フォローまでをひとつの動線に整理します。会社固有の内部情報には触れず機関投資家や法人顧客を含むBtoB寄りの会話設計にも対応できるよう普遍化した型でまとめます。読み終えれば面談化の速度と成約率を同時に底上げする実務テンプレが手元に残ります。
営業の基本設計を固める
売れる営業は偶然に頼りません。再現可能な型を用意し案件ごとの差分だけを調整します。ここではBtoB寄りの不動産アセット領域を想定し見込み化から成約後の運用連携までを五つのフェーズで設計します。
フェーズとチェック項目の早見表
フェーズ | 目的 | 初動の合図 | 重点チェック | 次の一手 |
---|---|---|---|---|
認知と接点 | 想起と関係の起点づくり | 資料請求やウェビナー登録 | 所属役職決裁階層情報の有無 | アポイント設定と事前質問票送付 |
課題仮説 | 優先テーマの明確化 | 一次ヒアリング完了 | 投資方針利回りレンジリスク許容度 | 定量サマリーと論点メモの送付 |
提案設計 | 比較可能な選択肢提示 | 意思決定者の関与 | 期待収益キャッシュフローリスクイベント | ドラフト提案とQ&A収集 |
条件交渉 | 全体最適での着地 | 相互に代替案を提示 | 価格期間条項ガバナンス | 合意形成のための決裁資料雛形提示 |
成約後連携 | 運用フェーズへの滑らかな移管 | 契約締結とキックオフ完了 | KPI報告手順エスカレーション | 初回レポートと四半期の運用計画共有 |
アカウントプランの骨子
一意思決定マップ決裁者影響者利用者の三層を整理
二価値仮説の三本柱コスト削減収益機会リスク低減
三四半期の会う理由季節要因と社内イベントを紐付け
四進捗の可視化ステージと確度を一画面で共有
五撤退条件の設定交渉コストが利回りを毀損する前に引く
決裁者に会うための導線を最初から設計面談単位での勝ち負けではなく案件単位の期待値で判断します。
法人提案の価値設計を磨く
提案は相手のKPIにひもづけるほど刺さります。投資家運用会社テナント金融機関それぞれの評価軸を言語化し、意思決定に直結する根拠で束ねます。固有名は避け、普遍的な枠組みで設計します。
主要ステークホルダーの評価軸
相手像 | 一次KPI | 二次KPI | 重視論点 | 禁則事項 |
---|---|---|---|---|
投資委員会 | 想定利回り純収益 | ボラティリティ下振れ耐性 | 想定外事象の確率と影響度 | 期待値だけの断定表現 |
AM運用担当 | 稼働率賃料改定率 | 運営費削減余地 | 改善アクションの具体性と実装期間 | 抽象的な施策列挙 |
PM現場 | テナント満足原状回復効率 | クレーム削減安全衛生 | 日次週次の運用手順 | 現場負荷を増やす提案 |
金融機関 | LTVDSCR | 出口時価と担保余力 | 下落局面の安全域 | 定量根拠のない強気見通し |
テナント決裁 | 総占有コスト | 従業員満足来客導線 | 移転後の業務生産性 | 費用以外の利点を未提示 |
誰のKPIを何で動かすかを冒頭で明示すると提案全体の筋が通ります。
提案書の骨子テンプレ
一投資テーマ要約三行
二現状認識事実三点
三価値仮説三本柱収益機会運営効率リスク低減
四アクションプラン四象限即効短期中期構造
五期待値と誤差幅中央値ベースと感度
六実行体制と責任分解
七意思決定に必要な追加検証項目と期日
最初に結論次に根拠最後に宿題の順で整えます。
感度分析の置き方
変数 | 幅 | 収益影響 | 備考 |
---|---|---|---|
賃料改定率 | マイナス三からプラス三 | 一%でCFが何%変動 | 業種構成別に感度分解 |
稼働率 | 九五から一〇〇 | 一%でCFが何%変動 | 供給新規の時期を併記 |
運営費 | マイナス五からプラス五 | 一%でCFが何%変動 | 省エネ施策の反映有無 |
金利 | プラスマイナス一 | 一%でNPVが何%変動 | ヘッジ有無で二系統 |
中央値と幅の両方を示すことで安心感が高まります。
パイプラインを増やすリード獲得設計
良い提案は出会いの数で母集団が決まります。_BtoB領域のリードは単発ではなく定点とイベントの二軸_で設計すると枯れません。ここでは再現性のある入り口とスクリーニングの型を示します。
チャネル別の役割と運用
チャネル | 狙い | 初動アクション | 主要指標 | よくある落とし穴 |
---|---|---|---|---|
ウェビナー | 課題仮説に合う層の一括接点 | 登録フォームに役職と決裁階層を追加 | 登録数出席率商談化率 | テーマが広すぎて解像度が低い |
記事ホワイトペーパー | 中長期の想起形成 | 要約スライドと三行の適合条件を先頭に | DL数読み込み率指名検索 | 事例の再現条件が不明確 |
共同イベント | 信頼の借用 | 共催先の顧客KPIに合わせてテーマ設計 | 参加企業数名刺交換数 | 共催の期待値不一致 |
紹介リレー | 高確度の獲得 | 紹介者向け三行依頼文を用意 | 紹介件数成約比率 | 依頼の具体が曖昧 |
既存顧客深耕 | LTV最大化 | 四半期レビューで未充足テーマ提示 | 追い案件数アップセル率 | 雑談で終わるレビュー |
短期はイベント中期はコンテンツ長期は関係資産の三層で積み上げます。
スクリーニングの三段質問
一今回の投資判断で最優先のKPIは何か
二意思決定の期日とはしごの段数は何か
三過去の同種案件で最も効いた施策と失敗要因は何か
この三問で温度感と勝ち筋が見えます。
リード育成のスコアリング例
シグナル | 点数 | 理由 | 次アクション |
---|---|---|---|
役員クラスが出席 | プラス三 | 決裁近接 | 一対一のディープダイブ招待 |
質問がKPI直結 | プラス二 | 課題の具体化 | 三営業日以内のミニ提案 |
期日が四半期内 | プラス二 | 短期決着 | 意思決定表の作成依頼 |
情報提供のみ | プラス一 | 関係形成期 | ライトタッチのナーチャリング |
比較対象が不明 | マイナス一 | 判断軸が未確立 | 比較軸テンプレの共有 |
スコアは合意形成の速度を測る道具数値の上下で温度を語るとチームで認識が揃います。
意思決定者に刺さる商談進行
商談は最初の十分で勝負がつきます。結論と根拠と宿題を先に配列し合意形成の道筋を提示します。BtoBでは一回の面談で完結しないため各会合の役割を明確に分担します。
会合の役割分担
種類 | 到達点 | 参加者像 | 成果物 |
---|---|---|---|
キックオフ | 論点の棚卸し | 実務担当と推進役 | 論点メモ三行と次回アジェンダ |
ディープダイブ | 仮説の検証 | 運用と財務の両輪 | 前提条件表と感度レンジ |
プリコミット | 決裁前の整合 | 決裁者と影響者 | 意思決定に必要な宿題一覧 |
クロージング | 条件の最終化 | 交渉当事者 | 合意条項のドラフト |
三十分快速アジェンダ
一所要時間と本日の到達点の宣言
二現状の事実三点の共有
三価値仮説三行の提示
四感度レンジと下振れ対策
五意思決定に必要な追加検証と期日
最初に道筋を見せると議論が逸れません。
意思決定表の雛形
項目 | 現状 | 目標 | 判断基準 | 確認手段 |
---|---|---|---|---|
利回り | 〇〇 | 〇〇 | 中央値と幅 | モデルと感度表 |
稼働率 | 〇〇 | 〇〇 | テナントミックス | リーシング計画 |
運営費 | 〇〇 | 〇〇 | 削減余地と期間 | 施策と見積り |
リスク | 列挙 | 対応 | 発生確率と影響 | 監視指標 |
判断基準をテキストで置くだけで合意が速くなります。
デューデリジェンスの設計で提案精度を上げる
意思決定の速度は前提の解像度で決まります。デューデリは資料集めではなく仮説検証の工程設計です。検証すべき事実と判断基準を最初に表で固定し空振りをなくします。
DDの論点マトリクス
領域 | 検証項目 | 判断基準 | 確認手段 | 期限 |
---|---|---|---|---|
リーシング | 稼働率賃料改定余地 | 中央値とレンジで評価 | テナントヒアリング賃料成約事例 | 日付 |
建物設備 | 法適合耐用年残工事履歴 | 是正費用と工期がNPVに与える影響 | 図面検査報告現地点検 | 日付 |
運営費 | 共益費光熱清掃警備 | 削減余地と実装の難易度 | 見積比較実績トレンド | 日付 |
法務 | 契約権利関係担保 | 致命的リスクの有無と代替策 | 契約精査専門家意見 | 日付 |
財務 | CF金利ヘッジ税務 | 下振れ時の安全域 | モデル感度表外部税務確認 | 日付 |
論点を一覧化し期限を置くだけでチームの動きが揃います。
現地確認の動線
一入口から避難経路まで一本道で確認
二設備室屋上基礎外装は写真と要点キャプションを即時記録
三テナント動線と荷捌き動線を分けて計測
四ピーク時間帯の騒音振動人流を五分刻みで観察
五発見事項は感度表の変数に直結させる
現地の気付きは数字で回収テキストだけで終わらせません。
DDレポートの骨子
一今回の前提三行
二致命的リスク有無の結論
三改善で価値が上がる論点と投資対効果
四残課題と確認手段期日担当
五意思決定に必要な最小セットの代替案
結論先行残課題明示で前に進む資料にします。
運用レポーティングとガバナンスの設計
信頼は報告の規律から生まれます。運用レポートは数字の羅列ではなく意思決定を前に進める資料にします。結論と根拠と次アクションを一枚で示しステークホルダーごとに解像度を変えます。
四半期レポートの骨子
章立て | 要点 | 到達点 | 添付物 |
---|---|---|---|
要約三行 | 今期の結論と次期の焦点 | 意思決定の準備完了 | 要約スライド |
KPI概況 | 稼働率賃料改定原価CF | 中央値と幅で可視化 | グラフと感度表 |
施策進捗 | 即効短期中期構造の四象限 | 進捗率とインパクト | ガントと成果証跡 |
リスク管理 | 発生確率と影響度の更新 | 閾値超過時のトリガー | 監視指標一覧 |
次アクション | 担当期限成果定義 | 合意形成の場を設定 | アジェンダ案 |
最初に結論次に根拠最後に宿題の順で読み手の時間価値を守ります。
KPIと閾値の設計
KPI | 定義 | 閾値 | アラート時初手 |
---|---|---|---|
稼働率 | 借上面積÷総賃貸面積 | 九七未満 | リーシング週次会議を増枠 |
賃料改定率 | 改定後÷改定前 | マイナス一を三期連続 | テナントミックス再設計 |
運営費率 | 運営費÷総収入 | 二五超 | 入札見直しと仕様分解 |
CF | 営業CFからCapexを控除 | 期中計画比マイナス五 | Capex繰延の再優先順位 |
DSCR | CF÷元利金 | 一二未満 | コベナンツ協議とヘッジ再設計 |
閾値は早めに鳴る設定小さく素早く修正します。
ガバナンスの運用ルール
一前提の最終版置き場は一か所に固定
二意思決定の記録は要点四行で日付担当を併記
三監視指標は自動集計し人手の二重入力を排除
四例外運用は期限と撤回条件を先に設定
五外部監査の指摘は再発防止を仕組みで実装
ルールは守れる形で作る仕組み化が継続性を担保します。
現場で使える一言トーク集
言葉は設計図同じ事実でも配列と言い回しで意思決定の速度が変わります。BtoB文脈を想定し初回接点提案会議交渉運用移管の五場面で使える短文を並べます。事実と解釈を分け結論根拠宿題の順で運びます。
初回接点で信頼の起点を作る
目的 | 一言トーク | 補足意図 |
---|---|---|
ゴール明確化 | 本日は三十分で論点の棚卸しを行い次回の検証項目を固定します | 面談の到達点宣言 |
前提共有 | 分かっている事実三点未確定二点を冒頭で共有します | 不確実性の見える化 |
意思決定距離 | 決裁の段数と期日を最初に確認させてください | 逆算の起点づくり |
提案会議で刺さる配列
目的 | 一言トーク | 補足意図 |
---|---|---|
結論先行 | 結論は期待値プラスマイナス幅はこのレンジです | 中央値と幅の明示 |
根拠提示 | CFは賃料改定稼働運営費金利の四変数で説明できます | 因果の分解 |
宿題固定 | 意思決定に必要な追加検証は二件だけです期日は来週火曜で置きます | 宿題の最小化 |
交渉で摩擦を下げる
目的 | 一言トーク | 補足意図 |
---|---|---|
構造提示 | 本件は価格期間条項運用の四点で階段を作ります優先を一つ選んでください | 争点の分解 |
代替案 | 価格の代わりに運用KPIの前倒し導入はいかがでしょうか | 総合最適の提案 |
期限宣言 | 本日の論点は私から文書で確定し返答期限は金曜とします | スピード担保 |
運用移管で安心を作る
目的 | 一言トーク | 補足意図 |
---|---|---|
責任分解 | 運用の責任境界はこの表で固定します異常時の一次対応は当社で受けます | 境界の可視化 |
報告設計 | 四半期レポートは要約三行施策進捗感度更新の順にします | 読み手時間の節約 |
例外運用 | 例外処理は期限と撤回条件を書面で先置きします | 逸脱の管理 |
メール件名の型
シーン | 件名例 | 狙い |
---|---|---|
初回後 | 本日の論点三行次回宿題二件 | 開封で概要把握 |
提案送付 | 提案要約三行CFレンジ表添付 | 要点先出し |
交渉中 | 四点比較表更新本日差分二行 | 差分だけ通知 |
運用期 | 四半期要約KPI閾値内残課題一件 | 安心と焦点 |
短く具体的に次の一手を一つだけこの原則で全チャネルを統一します。
まとめ
営業は設計で強くなる認知からDD交渉運用までを一本の動線に並べ結論根拠宿題の順で運ぶことで面談化と成約率が同時に伸びます
KPIにひもづく価値提案相手の一次KPIと判断基準を先に固定中央値と幅で示し感度表で揺れを見せると納得が早まります
交渉は構造で勝つ価格期間条項運用の四点で争点を分解代替案と期限を同時提示し前提を文書で固定すると摩擦が下がります
DDは仮説検証の工程論点マトリクスで検証項目判断基準確認手段期限を表で固定現地の気付きを数字に接続し精度を上げます
運用はガバナンスで信頼を積む要約三行KPI閾値施策進捗リスク更新次アクションの順で四半期レポートを標準化し早めに鳴る閾値で微修正を継続します
今日から実装する最小セット結論三行テンプレ比較軸表感度レンジ表交渉四点比較表DD論点マトリクスまずはこの五点を整えて全案件で横展開してください