営業の世界に飛び込んだばかりの新人が、最初につまずくのは「何からやればいいのかわからない」という壁です。見込み客の情報を集め、商談を進め、クロージングまで持っていく——これらを感覚でこなすには、経験が必要です。
しかし、もし「誰でも成果を再現できる営業のフレームワーク」があったとしたらどうでしょうか。
それが、世界中のトップセールスが実践している「MEDDIC(メディック)」です。
この手法を理解し、使いこなすことで、新人営業でも受注率を飛躍的に上げることが可能になります。
この記事では、
- MEDDICとは何か
- 各要素の意味と実践のコツ
- 新人営業が現場で使うための具体例
- 成果を出すためのチェックリスト
をわかりやすく解説します。
「MEDDIC」という一見むずかしそうな言葉も、この記事を読み終える頃には、自分の営業にすぐ取り入れられるレベルになっているはずです。
MEDDICとは何か?営業の成功を構造化する最強フレームワーク
まずは基本から押さえましょう。MEDDIC(メディック)とは、1990年代にアメリカのハイテク企業で生まれた営業フレームワークです。
特にBtoB営業、つまり法人相手の営業で圧倒的な成果を出すために開発されました。
このフレームワークの目的はシンプルです。
「感覚ではなく、構造で勝つ営業をする」ということ。
経験や根性に頼らず、受注の確度を科学的に高めるための思考法とも言えます。
MEDDICの6つの要素を理解する
MEDDICという言葉は、以下の6つの頭文字からできています。
| 項目 | 英語 | 意味 | 簡単な説明 |
|---|---|---|---|
| M | Metrics | 成果指標 | お客様が求める数値的な成果を把握する |
| E | Economic Buyer | 経済的決裁者 | 最終的にお金を動かす人を特定する |
| D | Decision Criteria | 意思決定基準 | どんな条件で購入を決めるのかを理解する |
| D | Decision Process | 意思決定プロセス | 社内での承認プロセスや流れを明確にする |
| I | Identify Pain | 課題の特定 | 顧客が抱える「痛み(Pain)」を正確に掴む |
| C | Champion | 推進者(味方) | 社内であなたの提案を後押ししてくれる味方を作る |
なぜMEDDICが新人営業に効くのか
多くの新人営業がやりがちな失敗は、「目の前の担当者だけを見てしまう」ことです。
しかし、企業の購買は1人で決まることはまずありません。
実際には複数の人が関わり、「誰が本当の決裁者か」や「社内での通し方」を理解していないと、いくら商談が盛り上がっても失注してしまうのです。
MEDDICはその構造を明確に見える化し、
「どの情報が足りていないのか」「どの要素を攻めるべきか」を整理できます。
つまり、新人でも“どの顧客が買ってくれる確率が高いか”を見抜けるようになるのです。
ポイントまとめ
- MEDDICは営業の成功要因を6つの要素に分解したフレームワーク
- 感覚ではなく構造で営業を進めるための手法
- 新人でも「何を聞くべきか」「誰にアプローチすべきか」が明確になる
Metrics(成果指標)を掴むことが営業の出発点
営業活動の最初のステップは、顧客が求めている「成果指標(Metrics)」を明確にすることです。
これを聞き出せない営業は、どれだけ頑張っても“ズレた提案”しかできません。
Metricsとは何を指すのか
Metricsとは、顧客が営業導入によって得たい数値的成果のことです。
たとえば以下のような指標が該当します。
| 分野 | 代表的な成果指標(Metrics) | 具体例 |
|---|---|---|
| 売上 | 売上向上、平均単価UP | 「来期に売上を20%増やしたい」 |
| コスト | コスト削減、生産性改善 | 「業務コストを年間500万円削減したい」 |
| 効率 | 業務時間の短縮 | 「1人あたりの作業時間を30%短縮したい」 |
| 顧客 | 顧客満足度、リピート率 | 「NPSを10ポイント上げたい」 |
顧客は「ツール」や「サービス」を買っているのではなく、成果を買っています。
そのため、このMetricsを具体的な数値でヒアリングすることが、商談成功の第一歩になります。
Metricsを引き出す質問例
新人営業の多くは、「何を質問すればいいのか分からない」と悩みます。
そんなときは、以下の質問を使ってみてください。
- 現状、どのような目標を設定されていますか?
- その目標に対して、今どのくらい進捗されていますか?
- もし理想的に改善できるとしたら、どんな数値を目指しますか?
- どの指標が最も重視されていますか?
これらの質問を通して、顧客の“本音のKPI”を引き出すことができます。
数字の背景にある「なぜその数字を目指すのか」まで掘り下げると、より信頼される営業になります。
新人が陥りやすい落とし穴
多くの新人が、「Metricsを聞く=数字を聞く」と誤解しています。
しかし本質は、数字の裏にある経営課題を理解することです。
単に「コスト削減したいんですね」ではなく、
「なぜコストを下げたいのか? それがどんな経営的リスクを減らすのか?」まで踏み込むと、商談の深さが変わります。
ポイントまとめ
- Metricsは「顧客が得たい成果」を意味する
- 数値だけでなく「なぜその成果が必要か」まで掘り下げる
- 正しい質問をすれば、顧客の真の課題が見える
Economic Buyer(経済的決裁者)を見抜けるかが勝敗を分ける
営業で最も重要な相手、それがEconomic Buyer(エコノミック・バイヤー)=最終決裁者です。
新人営業が成果を出せない最大の原因は、ここを見誤ることにあります。
Economic Buyerとは誰か?
Economic Buyerとは、最終的に「お金を支払う決断を下す人」のことを指します。
営業の現場では、担当者や部門長、経営層など複数のステークホルダーが関与しますが、
最終的にYesを言う人は一人です。
| 役職 | 典型的な位置づけ | 決裁権の有無 |
|---|---|---|
| 現場担当者 | 情報収集・実務検討 | × |
| 部門責任者 | 要件定義・一次判断 | △ |
| 経営層・購買責任者 | 予算決定・最終承認 | ○ |
担当者と決裁者を混同しない
新人営業がよくやってしまうのが、「担当者=決裁者」と勘違いすることです。
担当者と良好な関係を築いても、決裁者が別にいれば話は進みません。
営業では常に次の質問を自分に投げかけましょう。
「この人は、最終的にお金を払う権限を持っているか?」
もし持っていないなら、決裁者にどうアクセスするかを考える必要があります。
経済的決裁者を特定する質問例
- この提案を最終的に承認されるのはどなたですか?
- 予算の決定プロセスをお伺いしてもよろしいですか?
- ご提案内容を社内で検討される場合、どの段階で誰が関わられますか?
これらの質問を自然に会話の中に織り交ぜることで、決裁者の位置を把握できます。
重要なのは、尋問のように聞かずに「理解を深めたい」という姿勢で聞くことです。
経済的決裁者との信頼関係を築くコツ
- 数字で話す
決裁者は「感情」ではなく「投資効果」で判断します。Metricsと連動したROI(投資対効果)を示しましょう。 - 短く・明確に話す
時間が限られているため、要点を1分以内で伝える練習を。 - 相手の視点に立つ
経営者は「売上」よりも「リスク回避」「コスト削減」「将来性」を重視します。
ポイントまとめ
- Economic Buyer=最終的にお金を動かす人物
- 担当者と決裁者を混同しない
- ROIや数値的根拠で信頼を得ることが鍵
Decision Criteria(意思決定基準)を把握して「選ばれる理由」を作る
営業で勝つためには、お客様が何を基準に選定しているのかを正確に把握する必要があります。
この要素がDecision Criteria(ディシジョン・クリテリア)=意思決定基準です。
なぜDecision Criteriaが重要なのか
あなたの提案がどれだけ魅力的でも、
顧客の判断基準に合っていなければ選ばれません。
たとえばA社が「コスト削減」を最優先しているのに、
あなたが「高機能・高価格」を推しても響かないのです。
営業の本質は「自社の商品を売る」ことではなく、
顧客の判断基準に合わせて提案内容を最適化することです。
顧客のDecision Criteriaを引き出す質問例
顧客の基準を知るには、ストレートに聞くよりも、
比較や過去事例を引き出す質問が効果的です。
- 新しいツールを導入する際、どんな点を重視されていますか?
- 過去に他社のサービスを検討されたことはありますか?そのときの決め手は何でしたか?
- もし導入するとしたら、どんな条件なら即決できますか?
これらの質問で、顧客が意識している「評価軸」が見えてきます。
価格・機能・サポート体制・導入スピードなど、複数の基準を整理しておくと、提案内容をピンポイントで調整できます。
意思決定基準の4大パターン
| 分類 | 顧客が重視する要素 | 提案時のポイント |
|---|---|---|
| コスト型 | 費用対効果・予算内であること | ROIや削減額を明確にする |
| 機能型 | 製品・サービスの性能や品質 | 他社比較で優位性を強調 |
| サポート型 | 導入後の支援・対応体制 | 担当者のサポート力を示す |
| スピード型 | 導入スピード・即効性 | 導入後の短期成果を示す |
営業で勝つには、「自社が得意な領域」と「顧客の基準」を重ね合わせることが重要です。
このマッチングがズレると、商談の努力がすべて空回りします。
新人営業へのアドバイス
新人がやりがちなミスは、顧客のDecision Criteriaを一度も確認せずに提案書を作ってしまうこと。
これでは「提案がズレている」と言われて終わります。
まずはヒアリングの段階で、「何を最も重視されていますか?」と一言確認する習慣をつけましょう。
この一言で、提案の方向性が180度変わることもあります。
ポイントまとめ
- Decision Criteria=顧客が選定時に重視する基準
- 直接聞くよりも「過去・比較・理想」から探る
- 顧客の基準と自社の強みを重ねることで勝率アップ
Decision Process(意思決定プロセス)を理解して商談をスムーズに進める
営業で「良い提案をしたのに、話が止まってしまった…」という経験はありませんか?
その多くは、意思決定プロセス(Decision Process)を把握していないことが原因です。
顧客の社内で「誰が」「どの順番で」「どのように」承認していくのかを理解しておくと、
商談をスピーディかつ確実に進めることができます。
Decision Processとは何か
Decision Processとは、
顧客企業が社内で購買を決定するまでの流れや手続きのことを指します。
例えば以下のような流れが一般的です。
| ステップ | 担当者 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 問題提起 | 現場担当 | 現状の課題を共有 |
| ② 要件整理 | 部門責任者 | 要件や導入目的を明確化 |
| ③ 比較検討 | 複数部門 | 各社の提案を評価 |
| ④ 予算承認 | 経理・経営層 | コストの承認 |
| ⑤ 最終決定 | 経営陣 | 契約の実行 |
この流れを事前に把握していないと、
「誰に次に話を通すべきか」が分からず、商談が止まってしまいます。
意思決定プロセスを聞き出す質問例
営業の現場では、顧客に次のような質問をすることでプロセスを見える化できます。
- ご検討から導入までの社内フローを教えていただけますか?
- 承認をいただく際、どなたの決裁が必要になりますか?
- 過去に同じような導入をされたとき、どのような流れでしたか?
- 次回の打ち合わせには、他の関係者の方もご一緒いただけそうですか?
これらを聞いておくことで、
「次に何をすればいいのか」が明確になり、スムーズに商談を前進させられます。
意思決定プロセスの「時間軸」を見逃さない
プロセスの中で見落とされがちなのが意思決定のスピードです。
どれだけ良い提案でも、決裁が半年先なら売上にはすぐつながりません。
営業としては、以下の2点を確認するのがポイントです。
- 承認までにかかる期間(1週間なのか、3か月なのか)
- 期や予算サイクルの影響(年度末や期初で優先度が変わる)
スピード感を理解しておくことで、「今どの案件に注力すべきか」を判断できます。
新人営業がやるべき工夫
- 社内フロー図を自作する:商談相手ごとに意思決定ルートを図で整理しておく
- ステップごとにチェックリスト化:次に何をすべきかを明確にする
- 決裁スケジュールを管理表に記録:営業パイプライン管理の精度が上がる
ポイントまとめ
- Decision Process=顧客社内の承認・決裁フロー
- 「誰が」「どの順番で」「どんな基準で」決めるかを把握する
- 流れとスピードを理解して、商談を止めない
Identify Pain(課題の特定)で「本当に刺さる提案」を作る
営業が最も時間をかけるべきなのは、顧客のPain(痛み)=本質的な課題を特定することです。
この「Identify Pain」ができるかどうかで、商談の深さも、受注率も、すべてが変わります。
Identify Painとは何か
Identify Painとは、顧客が表面上は言わないが、実際に困っている課題を見抜くプロセスです。
顧客が口にする「課題」は、しばしば表層的な“症状”であり、
その奥にある「原因」こそが解決すべき本当のPainです。
たとえば次のような構造になります。
| 表層の課題(症状) | 根本のPain(原因) |
|---|---|
| 営業の成約率が低い | 顧客理解が浅く、提案が的外れ |
| 顧客対応の工数が多い | フォロー体制が属人化している |
| コスト削減が進まない | 社内承認プロセスが複雑で非効率 |
営業が提案で本当に刺さるには、表層ではなく原因を突く必要があります。
Painを見抜く質問力を鍛える
Painを特定するには、相手の言葉をうのみにせず、
「なぜ?」を3回以上掘り下げることを意識しましょう。
例:
「今、商談の成約率が低くて困っています」
→ なぜ低いのですか?
「お客様のニーズが掴めていない気がします」
→ なぜ掴めていないと感じますか?
「ヒアリングの型がチームで共有されていません」
ここまで聞けて初めて、「営業スキル教育」や「商談管理システム」など、
解決策が的確に定まるのです。
痛みを定量化する
Painを定量化できると、提案の説得力が数倍に上がります。
たとえば、次のように数値で表現します。
| 項目 | Before | After | 効果 |
|---|---|---|---|
| 営業の成約率 | 15% | 25% | +10ポイント向上 |
| 案件フォロー時間 | 10時間/週 | 5時間/週 | 50%削減 |
| 顧客満足度(NPS) | 40 | 55 | +15向上 |
こうしたデータを示すことで、顧客に「この課題を放置すると損をする」と実感させることができます。
Identify Painの実践ステップ
- ヒアリング前に仮説を立てる
業界の課題や顧客の状況から“起こりうるPain”を想定しておく。 - 質問で深掘りする
「なぜ」「どんな影響があるか」「放置するとどうなるか」を問いかける。 - 定量化して共有する
顧客が納得できる数値でPainを明確にする。
新人営業へのアドバイス
新人のうちは、課題を聞き出そうとしても「うまく掘り下げられない」と感じることが多いでしょう。
その場合は、「影響」と「原因」に分けて聞く」のがコツです。
「この課題によって、どんな影響が出ていますか?」
「その原因はどこにあると感じていますか?」
この2つの質問だけで、相手の思考が整理され、Painの本質に近づけます。
ポイントまとめ
- Identify Pain=顧客の“本当の困りごと”を掘り下げるプロセス
- 表層ではなく、原因を3段階掘り下げる
- 定量化することで提案の説得力が格段に上がる
Champion(推進者)を味方につけて社内承認を突破する
営業の現場で、社内で自分の提案を後押ししてくれる味方を見つけられるかどうかは、
受注を勝ち取るうえで決定的な差になります。
その味方こそが、MEDDICの6つ目の要素「Champion(チャンピオン)」です。
Championとは何か
Championとは、顧客企業の中であなたの提案を積極的に推進してくれる人物のことです。
単なる「担当者」や「理解者」ではなく、
社内であなたの代わりに提案を広め、決裁者を動かしてくれる存在です。
| 種類 | 特徴 | 行動例 |
|---|---|---|
| 情熱型 | 提案に強く共感し、自ら動いてくれる | 社内で提案を説明・推薦してくれる |
| 影響力型 | 社内で信頼や地位がある | 上層部に進言・承認を促してくれる |
| ハブ型 | 他部署との調整に長けている | 部門間の橋渡しをしてくれる |
Championは営業担当にとって、「社内での味方=代理営業マン」のような存在です。
なぜChampionが重要なのか
企業の購買は、営業が見えている部分よりも社内の“見えない会議”で進むことが多いです。
その場に営業は出られません。
だからこそ、あなたの提案を内部で説明してくれるChampionが不可欠なのです。
優秀な営業ほど、顧客の中にChampionを複数持っています。
Championを見つける3つのポイント
- 課題に強い危機感を持っている人
→ 現場の課題に真剣で、改善意欲が高い。 - 社内での発言力がある人
→ 役職が高いとは限らない。信頼を集める人を見極める。 - あなたの提案に共感している人
→ 「いいですね、それ!」と言ってくれる人の中から、行動してくれる人を探す。
Championを育てるコツ
Championは“作る”のではなく、“育てる”ものです。
そのために、以下のアプローチを意識しましょう。
- 情報を共有する:社内説明用の資料や要約を渡す
- 成功のビジョンを描かせる:「このプロジェクトが成功したら、あなたの部署の評価が上がる」
- 信頼関係を築く:こまめに報連相を行い、誠実に対応する
Championが社内で動きやすいように、営業側がサポートする姿勢を見せることが大切です。
Championがいない場合の対処法
「まだChampionが見つからない…」という場合は、焦らずに、
まずは課題意識の強い担当者から深く関係を築くことです。
最初は小さな成功(例:簡単なデモや改善提案)を通して信頼を得ると、
その人がやがてChampionへと成長してくれます。
ポイントまとめ
- Champion=社内であなたの提案を推進してくれる味方
- 営業の見えない場面であなたの代わりに動いてくれる存在
- 育てる意識を持ち、情報共有と信頼構築を徹底する
MEDDICを現場で使いこなすための実践ステップ
ここまででMEDDICの6要素を理解しました。
しかし、理解だけでは成果は出ません。
新人営業が現場で実際にMEDDICを使いこなすには、日々の行動に落とし込む必要があります。
このセクションでは、MEDDICを実践に変える具体的なステップを紹介します。
ステップ① 案件ごとにMEDDICシートを作成する
営業活動を始める際は、案件ごとに以下のような「MEDDICシート」を作ってみましょう。
これにより、どの情報が不足しているかを一目で把握できます。
| 項目 | 内容 | 状況(把握度) | 対応アクション |
|---|---|---|---|
| M(Metrics) | 顧客が目指す数値目標 | △ | 次回ヒアリングで詳細を確認 |
| E(Economic Buyer) | 最終決裁者 | × | 担当者経由で紹介を依頼 |
| D(Decision Criteria) | 選定基準 | ○ | コスト重視型と確認済み |
| D(Decision Process) | 社内承認の流れ | △ | フローを明文化してもらう |
| I(Identify Pain) | 顧客の本質的課題 | ○ | 成約率低下の根本要因を特定済み |
| C(Champion) | 推進者(社内味方) | × | 関係性を構築中 |
新人営業ほど、頭の中で覚えるよりも「見える化」することが重要です。
ステップ② 商談の目的を「次に進めるための要素」に設定する
MEDDICの各要素は、商談の「ゴール設定」にも使えます。
たとえば、次のようにステップごとに目的を設定すると、迷いなく商談が進められます。
| 商談の回数 | 目的 | MEDDIC要素 |
|---|---|---|
| 初回 | 顧客の課題とMetricsを掴む | M・I |
| 2回目 | 意思決定基準とプロセスを確認 | D・D |
| 3回目 | 決裁者に接触しChampionを育成 | E・C |
商談の目的を「受注」ではなく、
「次のMEDDIC要素を明確にする」ことにすると、焦りがなくなり、会話の質が上がります。
ステップ③ 社内共有にMEDDICを活用する
営業チームでMEDDICを導入すると、案件共有の精度が飛躍的に高まります。
なぜなら、曖昧な感想ではなく、具体的な要素で進捗を共有できるからです。
例)
「この案件、MetricsとPainは明確だけど、Decision Processがまだ不明確だから要注意」
こうした共通言語があるだけで、上司や同僚のアドバイスが的確になります。
ステップ④ CRMツールと連動させる
最近の営業現場では、SalesforceやHubSpotなどのCRMツールを利用している企業も多いでしょう。
MEDDICの6要素をCRMの入力項目に組み込むことで、チーム全体の営業再現性が高まります。
例:
- Metrics → 顧客目標・成果KPI
- Economic Buyer → 決裁者情報
- Decision Process → 承認フロー備考欄
このように仕組み化すれば、新人でも上級営業と同じ視点で案件を管理できるようになります。
ステップ⑤ 定期的に「MEDDICレビュー」を行う
営業は日々の忙しさで、つい「商談をこなすこと」が目的化しがちです。
しかし、週1回でもいいのでMEDDICレビューを行うことで、抜け漏れが防げます。
レビュー時のチェックポイント:
- どの要素が不明確なままか?
- Championは本当に動いてくれているか?
- 顧客のMetricsに変化はないか?
この振り返りを継続することで、営業の質が自動的に上がる仕組みが作れます。
ポイントまとめ
- 案件ごとにMEDDICシートで情報を整理
- 商談ごとに「どの要素を明確にするか」を目的化
- チームで共通言語として活用し、営業の再現性を高める
まとめ 新人営業がMEDDICを使えば「感覚営業」から卒業できる
新人営業が抱えがちな悩みは、「何をすればいいかわからない」「感覚で動いてしまう」というものです。
しかし、MEDDICを使えば営業を構造化でき、受注の再現性を高めることができます。
MEDDICの6要素の要点復習
| 要素 | 意味 | 新人営業が意識すべきポイント |
|---|---|---|
| M(Metrics) | 成果指標 | 顧客が求める“数値的ゴール”を明確にする |
| E(Economic Buyer) | 経済的決裁者 | お金を動かす最終責任者を特定する |
| D(Decision Criteria) | 意思決定基準 | 顧客の評価軸に合わせて提案を調整する |
| D(Decision Process) | 意思決定プロセス | 社内承認の流れとスピードを把握する |
| I(Identify Pain) | 課題の特定 | 表層の悩みではなく“本当の痛み”を掴む |
| C(Champion) | 推進者 | 社内であなたの提案を後押ししてくれる味方を育てる |
MEDDICを使うメリット
- 商談のどこが詰まっているのかが明確になる
- 決裁者との関係構築が早くなる
- 再現性のある営業スキルが身につく
- チーム内で共有しやすく、成約率が上がる
最後に
営業は「気合い」や「運」で勝つ時代ではありません。
今は、構造と仕組みで勝つ時代です。
MEDDICはそのための最強の地図。
このフレームワークを日々の営業活動に取り入れ、
あなた自身の「勝ちパターン」を作り上げてください。
“営業は科学できる”――この言葉を胸に、今日から一歩を踏み出しましょう。

