営業ロープレは、新人営業が最短で成長するための「実践トレーニング」です。
しかし多くの新人が「台本がなくて進め方が分からない」「やっても緊張して本番と同じにならない」と悩んでいます。
本記事では、営業初心者でも安心して実践できるロープレ台本のテンプレートと練習のポイントを徹底解説します。
また、成果が出るロープレの進め方や、上司・先輩と練習するときのチェックリストも紹介。
読了後には、あなたも「緊張するロープレ」から「成長を実感できるロープレ」に変わるはずです。
新人営業がロープレでつまずく3つの原因
ロープレ(ロールプレイング)は、営業スキルを実践的に磨くための最強のトレーニング手法です。
それにもかかわらず、多くの新人営業が「やっても意味がない」「緊張してうまく話せない」と感じています。
なぜロープレが苦手なのか?
その理由は、単なる練習不足ではなく、練習の“設計ミス”にあります。
原因① 台本(シナリオ)が曖昧
「じゃあロープレやろう」と言われて、即興で始めてしまうケースがよくあります。
しかし、台本がないロープレ=目的がない練習です。
台本がないと、
- どんな相手を想定しているのか
- どのフェーズを練習しているのか
- どの言葉を改善すべきか
これらが不明確になり、ただの“セリフ練習”になってしまいます。
原因② 評価基準がない
ロープレ後に「よかった」「もう少し頑張ろう」と感想で終わることがありますが、
これでは改善の方向性が見えません。
営業のロープレには、「何をもって合格とするか」という基準が必要です。
例えば、
- ヒアリングの深さ
- 相手の反応を拾えているか
- クロージングの自然さ
このように評価軸を設定して初めて、ロープレは“再現性のある訓練”になります。
原因③ 本番を想定していない
「練習だから」といって、笑いながら終わるロープレをしていませんか?
本番で緊張するのは、練習の緊張感が足りないからです。
ロープレは“本番のリハーサル”であるべきです。
実際の顧客を想定し、時間・場所・トーンまで本番に寄せて行うことで、
実戦での動きが劇的に変わります。
新人営業が成果を出せるようになるロープレとは、
「目的が明確」「評価基準がある」「本番を想定している」練習です。
次の章では、それを実現するための具体的なロープレ台本テンプレートを紹介します。
新人営業でも使えるロープレ台本テンプレート【目的別】
ロープレの目的は、「営業のどの場面を強化するか」を明確にすることです。
ここでは、新人営業がよく練習する5つの場面別に、実際に使える台本テンプレートを紹介します。
① 初回訪問・自己紹介フェーズ
【目的】第一印象と信頼構築の練習
| 役割 | セリフ例 |
|---|---|
| 営業(あなた) | 「初めまして、株式会社〇〇の△△と申します。本日はお時間をいただきありがとうございます。まず簡単に自己紹介をさせていただければと思います。」 |
| 顧客(先輩) | 「お願いします。」 |
| 営業 | 「弊社では□□業界向けに××のサービスを展開しておりまして、私自身は営業支援を担当しております。本日は御社の業務状況を伺いながら、お役に立てる可能性を探れればと思っております。」 |
| 顧客 | 「なるほど、ありがとうございます。」 |
| 営業 | 「ありがとうございます。まず、御社の営業体制についてお伺いしてもよろしいでしょうか?」 |
チェックポイント:
- 自己紹介が30秒以内で完結しているか
- “自分”よりも“相手”を主語にできているか
- トーン・笑顔・姿勢が自然か
② ヒアリングフェーズ
【目的】課題抽出と共感の練習
| 役割 | セリフ例 |
|---|---|
| 営業 | 「現在、営業活動はどのような流れで行われていますか?」 |
| 顧客 | 「そうですね、主に紹介経由で新規を取っています。」 |
| 営業 | 「ありがとうございます。ちなみに、現状の課題やお悩みはどんなところにありますか?」 |
| 顧客 | 「最近は新規開拓の比率を上げたいんですが、アプローチがうまくいかなくて…」 |
| 営業 | 「なるほど。新規の割合を増やしたいけれど、アプローチが課題なんですね。御社の営業チームは何名体制で動かれていますか?」 |
チェックポイント:
- 質問がオープン(自由回答)になっているか
- 相手の回答を“繰り返し・要約”で共感できているか
- 「なるほど」「たとえば」を活用して深掘りできているか
③ 提案フェーズ
【目的】自社サービスの説明と価値訴求の練習
| 役割 | セリフ例 |
|---|---|
| 営業 | 「先ほどのお話を踏まえて、御社の課題に合いそうなポイントを3つだけご紹介します。」 |
| 顧客 | 「お願いします。」 |
| 営業 | 「まず1点目が、既存顧客へのアプローチ自動化。これにより、営業活動の効率化が可能になります。 |
| 2点目が、リード管理の仕組みづくり。チーム全体で案件を共有しやすくなります。 | |
| 最後に3点目が、レポート機能。結果を可視化して改善に活かせる仕組みです。」 | |
| 顧客 | 「なるほど、イメージ湧きますね。」 |
| 営業 | 「ありがとうございます。御社の場合は、営業フローを改善するだけで〇%の稼働削減が見込めます。」 |
チェックポイント:
- 提案は「3点構成」で整理できているか
- “相手の課題にリンクした言葉”で説明しているか
- 自社都合の話になっていないか
④ 質疑応答フェーズ
【目的】反論処理・安心感の演出練習
| 役割 | セリフ例 |
|---|---|
| 顧客 | 「価格が少し高いですね…」 |
| 営業 | 「ありがとうございます。コストの部分、気になりますよね。 |
| 実際に導入いただいた企業様も、最初は同じお声をいただきましたが、 | |
| 3か月以内に生産性が1.5倍になった事例がございます。」 | |
| 顧客 | 「それはいいですね。」 |
| 営業 | 「はい。導入効果を定量で確認いただけるので、安心してご判断いただけると思います。」 |
チェックポイント:
- 相手の反論を否定せず受け止めているか
- 事例やデータを根拠として提示できているか
- 「安心できる一言」で会話を締めているか
⑤ クロージングフェーズ
【目的】次のアクションを明確にする練習
| 役割 | セリフ例 |
|---|---|
| 営業 | 「本日の内容をもとに、御社に最適なプランを改めてご提案したいと思います。 |
| 来週中に一度、お時間をいただけそうでしょうか?」 | |
| 顧客 | 「そうですね、火曜日なら大丈夫です。」 |
| 営業 | 「ありがとうございます。では火曜日の14時にお伺いします。 |
| 本日いただいた内容を踏まえて、より具体的なシミュレーションをご用意いたします。」 |
チェックポイント:
- 「次回アクション」を必ず明確にして終わっているか
- 提案意欲をポジティブに伝えられているか
- クロージングが押しつけがましくないか
ロープレを効果的に進めるコツ5選
ロープレは、ただ「台詞を覚える練習」ではなく、本番に近い環境で“考え方と反応力”を鍛える訓練です。
ここでは、上司・先輩との練習をより効果的にするための5つのコツを紹介します。
① ロープレの前に「目的」を設定する
ロープレを始める前に、まず「今日は何を練習するのか」を明確にしましょう。
目的が明確でないロープレは、筋トレでいうと「どの筋肉を鍛えているのか分からない状態」です。
例:
- ×「とりあえずやります」
- ○「ヒアリングの深掘り質問を中心に練習します」
- ○「クロージングでの言葉選びを重点的に見てください」
目的を明確にすると、先輩も的確なフィードバックがしやすくなります。
② “録音・録画”して自分を客観視する
一度、自分のロープレをスマホで録音・録画してみてください。
最初は恥ずかしいかもしれませんが、自分の話し方・姿勢・間の取り方を客観的に見るのが一番の学びになります。
チェックポイント:
- 声が小さく聞き取りにくくないか
- 「えー」「そのー」などの口癖が多くないか
- 笑顔や姿勢が硬すぎないか
自分で聞き返すことで、「相手にどう見えているか」が明確になります。
トップ営業は例外なく、自分のトークを客観視しています。
③ フィードバックは「よかった点」から始める
ロープレ後のフィードバックで最も大事なのは、“自己肯定感を残すこと”です。
特に新人営業は、いきなり課題を指摘されるとモチベーションが下がりやすいもの。
正しい順序は次の通りです。
- よかった点を具体的に伝える
例:「第一声が明るくて印象がよかった」 - 改善点を指摘する
例:「提案の部分で、もう少し数字を使うと説得力が増す」 - 次回のアクションを一緒に決める
例:「次のロープレでは“データで説明する”をテーマにやってみよう」
“ほめてから直す”が鉄則です。
④ シナリオをアドリブで崩してみる
台本どおりに話せるようになったら、次はアドリブでの応用力を鍛えましょう。
顧客役があえて想定外の質問をしたり、否定的なリアクションを取ることで、より実戦に近づきます。
例:
- 「もう少し安いサービスはないの?」
- 「今は導入するタイミングじゃないんだよね」
- 「他社と何が違うの?」
これに即座に反応できるようになると、“営業脳”が育っている証拠です。
⑤ 1回のロープレで“1テーマだけ”改善する
よくある失敗は、「全部を完璧にしようとする」こと。
ロープレの目的は、小さな改善を積み重ねることです。
1回の練習で直すのは1つだけ——
「第一声の印象を改善」「沈黙を怖がらない」「提案を短く」など、テーマを絞ることで成長が見えやすくなります。
補足:ロープレは“やらされるもの”ではなく“自分の武器を磨く時間”
ロープレに苦手意識を持つ新人営業は多いですが、
ロープレとは「営業トークを安全に失敗できる唯一の場所」です。
本番で失敗する前に、ここで修正すればいい。
そう考えるだけで、ロープレが“苦痛の時間”から“成長の時間”に変わります。
ロープレの効果を最大化するチェックリストと評価シート
ロープレを「感覚」で終わらせないために必要なのが、チェックリストと評価シートです。
これは上司や先輩が新人営業にフィードバックする際にも有効で、客観的な成長評価ができます。
営業ロープレチェックリスト(基本版)
| チェック項目 | 評価基準 | 評価(○/△/×) |
|---|---|---|
| 第一声の印象 | 明るく・はっきり・姿勢が良いか | |
| 自己紹介 | 30秒以内で要点が伝わっているか | |
| ヒアリング | 質問がオープンで、会話が広がっているか | |
| 共感 | 相手の発言にうなずき・要約ができているか | |
| 提案構成 | 相手の課題に沿った内容になっているか | |
| データ・事例 | 説得力のある根拠を提示できているか | |
| 反論対応 | 否定せず受け止めてから返しているか | |
| クロージング | 自然に次回アクションを提示しているか | |
| 話すスピード | 速すぎず・間が取れているか | |
| 表情・姿勢 | アイコンタクト・笑顔・前傾姿勢か |
評価のポイント:
×ではなく△を中心にフィードバックし、「次回はここを○にしよう」と明確に改善点を設定します。
ロープレ評価シート(例)
| 項目 | 評価コメント(先輩・上司記入) |
|---|---|
| 第一印象 | 声のトーンが柔らかく、良い印象を与えていた。もう少し笑顔を意識できるとさらに良い。 |
| ヒアリング | 質問が的確だったが、相手の返答に対する深掘りが弱かった。共感の一言を挟もう。 |
| 提案 | 3つに整理されており分かりやすかった。資料の使い方が自然で説得力あり。 |
| 反論対応 | 「価格が高い」に対して丁寧に対応できていたが、具体的な事例を交えるとさらに信頼性アップ。 |
| クロージング | 次回アポをスムーズに設定できた点は◎。締めの一言をもう少し自信を持って。 |
このように記録を残すことで、毎回のロープレが“比較可能な学び”になるのです。
自己評価シート(本人記入用)
| 質問項目 | 自己評価(1〜5) | コメント |
|---|---|---|
| 今日のロープレで自信が持てた部分は? | ||
| 反省点・改善したい点は? | ||
| 先輩からのフィードバックで印象に残った点は? | ||
| 次回のロープレで意識するテーマは? |
自分で言語化することで、学びを“意識的スキル”に変えることができます。
チェックシート運用のコツ
- 毎回印刷して使う(デジタルでも可)
→ ロープレのたびに蓄積し、「自分専用の成長履歴」を作る。 - “評価のため”ではなく“改善のため”に使う
→ 点数化よりも「どこが良くなったか」「何を直すか」を重視。 - チーム共有で“成功の型”を作る
→ チェック項目を共通化することで、チーム全体の底上げにつながる。
補足:トップ営業は「ロープレシート」を資産化している
成果を出している営業ほど、自分のロープレ記録をナレッジとして蓄積しています。
- 成功したトークの言い回し
- 相手が反応したタイミング
- 失敗したパターン
これらをストックしておくことで、「再現性のある営業スクリプト」が完成します。
つまり、ロープレは練習ではなく“データ収集の場”。
この視点を持つだけで、営業の成長速度が格段に変わります。
まとめ:ロープレは新人営業が“最短でプロになる”ための道
ロープレは、新人営業が実戦力を最速で身につけるための「安全な練習場」です。
多くの営業が避けがちですが、トップ営業ほどロープレを“本番以上に真剣”に行っています。
この記事で紹介したポイントを振り返りましょう。
- 台本(シナリオ)を明確にして目的を設定する。
- チェックリストと評価基準を使い、感覚で終わらせない。
- 1回のロープレで1テーマだけ改善する。
- アドリブや反論対応を繰り返して実戦耐性をつける。
- 録音・記録して、自分の成長を“見える化”する。
ロープレを重ねるごとに、「言葉の説得力」「反応の速さ」「自信のある話し方」が確実に磨かれます。
つまり、ロープレとは「営業スキルの筋トレ」なのです。
本番で焦らない営業になるために、まずは練習の質を変えること。
あなたの一言一言が磨かれるほど、成果も自然と伸びていきます。
ロープレを制する者は、営業を制する。
今日から、あなたの台本を“武器”に変えていきましょう。

