「新人営業の研修、どこから教えたらいいのかわからない」
「座学ばかりで、現場に出たら通用しない」――。
そんな悩みを抱える営業マネージャーや教育担当者は多いはずです。
営業研修は単なる知識の詰め込みではなく、“行動を変えるプログラム”でなければ意味がありません。
実際、成果を出している企業の研修は、共通して「実践+フィードバック+再挑戦」の流れを組み込んでいます。
この記事では、現役営業コンサルタントが提案する、新人営業が最短で結果を出せる研修カリキュラム例を紹介します。
座学・ロールプレイ・実地同行までを体系的に整理し、すぐ導入できる構成でまとめました。
「育てる営業研修」を目指す企業・チーム必見の内容です。
新人営業研修の目的と全体設計を理解する
まず最初に明確にすべきなのは、「新人営業研修のゴール」です。
多くの企業では「知識を教える」ことに偏りがちですが、真の目的はそれではありません。
1. 営業研修の目的は「行動変容」にある
営業の成果は、「知っている」ではなく「できる」で決まります。
したがって、研修設計の目的は “行動を変える” ことに置くべきです。
ゴール設定の例
| カテゴリ | ゴールイメージ |
|---|---|
| 知識 | 商品・市場を正しく説明できる |
| スキル | トークスクリプトを実践できる |
| 行動 | 自発的にアポ・提案・フォローができる |
| マインド | 「お客様の課題を解決する」意識が持てる |
この4つの要素をバランスよく伸ばす研修が、現場で“動ける営業”を育てます。
2. 研修設計の全体フロー
新人営業研修を設計する際は、「インプット → 実践 → フィードバック」の流れを明確に組み込みます。
この流れを体系的に組むことで、学びが知識で終わらず、行動として定着します。
新人営業研修カリキュラムの全体像
| 研修フェーズ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 導入(1週目) | 会社理解・営業基礎・ロールモデル紹介 | 組織文化と営業観を学ぶ |
| 理解(2〜3週目) | 商品知識・営業プロセス・顧客心理 | 理解と整理を深める |
| 実践(4〜6週目) | トーク練習・模擬商談・OJT同行 | 現場感覚を身につける |
| 定着(7週目以降) | 成果レビュー・個別面談・改善計画 | 習慣化と自走力育成 |
“教えるだけ”では人は動かない。 “体験して振り返る”ことで初めて成長する。
これが成果を出す研修の基本構造です。
3. 教える順序が成果を左右する
新人営業が混乱しやすいのは、学ぶ順序がバラバラなときです。
たとえば、「営業トーク」を学ぶ前に「営業とは何か」を理解していないと、言葉が空回りします。
教育順序の理想フロー
- 営業の目的と役割(Why)
- 顧客の心理と購買行動(Who)
- 商品・サービスの理解(What)
- トークスクリプト・商談プロセス(How)
- 実践・振り返り(Action)
この順番で進めることで、「納得→実践→定着」の流れが生まれます。
新人営業研修カリキュラムの具体的構成例
ここでは、実際に多くの営業組織で成果を上げている7日間の基本カリキュラム例を紹介します。
このプランは座学と実践のバランスを取りつつ、「考える→話す→行動する」を繰り返す構成になっています。
【Day 1】営業マインドと会社理解
目的
営業としての土台を築き、「なぜ売るのか」を明確にする。
カリキュラム内容
| 時間帯 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 午前 | 会社理念・事業理解 | 組織の方向性を理解する |
| 午後 | 営業の役割と使命 | 売上ではなく価値提供の意識を持つ |
| 終了前 | 成功営業の共通点ワーク | 成功者の行動習慣を共有 |
ポイント:
初日は「知識より価値観」。
「自分は何を届ける営業なのか?」を明確にすることが成長の第一歩です。
【Day 2】商品知識と顧客理解
目的
自社サービスを「特徴」ではなく「価値」として説明できるようにする。
カリキュラム内容
| 時間帯 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 午前 | 商品・サービス講義 | 自社の強みを把握 |
| 午後 | 顧客業界分析 | 顧客の課題構造を理解 |
| 終了前 | 「誰にどう役立つか」プレゼン演習 | 提案ストーリーを言語化 |
ポイント:
商品説明だけでなく、「お客様の悩み解決ストーリー」で語れるかがカギ。
顧客理解=武器の精度。
【Day 3】営業プロセスとトークスクリプト演習
目的
アポイント〜クロージングまでの流れを理解し、実践に備える。
カリキュラム内容
| セッション | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| STEP1 | 営業の5プロセス(アポ→ヒアリング→提案→クロージング→フォロー) | 全体構造を整理 |
| STEP2 | トークスクリプトの基礎 | 導入・共感・提案の流れを習得 |
| STEP3 | ロールプレイ(2人1組) | 現場感を再現し、即フィードバック |
ポイント:
ロールプレイでは「言葉を完璧に覚える」よりも、「間」「テンポ」「反応を見る」ことを意識。
“伝える営業”より“伝わる営業”を育てる。
【Day 4】商談力強化と顧客ヒアリング実践
目的
課題発見型のヒアリングを習得し、「売り込み営業」から脱却する。
カリキュラム内容
| コンテンツ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 講義 | 質問の設計と心理 | 信頼関係を築くヒアリング技術 |
| ワーク | 顧客インタビュー練習 | 相手の本音を引き出す質問法 |
| 振り返り | フィードバック・改善案 | 傾聴スキルの可視化 |
ポイント:
ヒアリング力は、営業力の半分を占めます。
「聞く力」は才能ではなく技術です。
【Day 5】提案スキルとストーリートーク研修
目的
顧客課題に基づいた提案書作成・プレゼン力を高める。
カリキュラム内容
| セッション | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 午前 | 成果を出す提案構成(Before→After→方法) | 提案のロジック構築 |
| 午後 | プレゼン演習・上司レビュー | 表現力と説得力を磨く |
| 終了前 | “自分の営業ストーリー”発表 | 営業のパーソナルブランディング |
ポイント:
提案は「説明」ではなく「共感の物語」。
数字よりも“納得感”を届ける練習が大切です。
【Day 6】OJT同行と現場実践
目的
実際の営業現場を体験し、緊張を超えて自信に変える。
カリキュラム内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 同行営業 | 上司または先輩と実地訪問 |
| 商談観察 | トークの流れと顧客反応を記録 |
| フィードバック面談 | 改善ポイントを整理・メモ化 |
ポイント:
この日の目的は「結果」ではなく「感覚を掴むこと」。
成功・失敗の両方を体で覚える日です。
“緊張の中で学ぶ”経験が成長を加速させます。
【Day 7】振り返り・成果発表・今後の行動計画
目的
研修内容を自分の言葉に落とし込み、行動計画を立てる。
カリキュラム内容
| コンテンツ | 内容 |
|---|---|
| 成果発表会 | 各自が1週間の成長を共有 |
| メンター面談 | フィードバック・強み発掘 |
| 今後の行動計画作成 | 30日・90日単位で目標設定 |
ポイント:
「やり切った」ではなく「これからどう動くか」を言語化させる。
研修後に行動が続くかどうかは“最後の1日”で決まります。
カリキュラムを定着させるためのフォロー施策
研修カリキュラムをどれだけ充実させても、「終わった瞬間に忘れる」ようでは意味がありません。
新人営業を本当の戦力に育てるには、研修後のフォロー体制と仕組み化が重要です。
ここでは、学びを定着させるための5つの実践施策を紹介します。
1. 1on1面談で「行動の定着度」を確認する
研修が終わった直後の新人は、理解はしていても“行動が伴っていない”ことが多いです。
そこで効果的なのが、定期的な1on1面談です。
面談の進め方
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 振り返り | 1週間の行動・成果を共有 | 事実ベースで記録する |
| 課題発見 | できたこと/できなかったことを分解 | 感情ではなく構造で分析 |
| 改善提案 | 次週の目標を一緒に設定 | 行動目標を数値化する |
目的は“叱る”ではなく“伴走する”こと。
面談で安心感を与えられる上司ほど、部下の行動定着率が高まります。
2. OJT(現場同行)は「見せる」だけで終わらせない
OJTは新人営業教育の中核ですが、“見せて終わり”では成長しません。
重要なのは、「事前説明 → 同行観察 → 振り返り」の3ステップです。
OJT実施フロー
| フェーズ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 事前 | 商談の目的・役割分担を共有 | 目的意識を持たせる |
| ② 同行 | 実際の商談を観察(30分〜1時間) | 現場の流れを体感 |
| ③ 振り返り | 良かった点・改善点を対話 | 次の行動につなげる |
同行後15分以内のフィードバックが最も効果的。
記憶が鮮明なうちに振り返ることで、行動変化が早まります。
3. トークスクリプトを「自分仕様」にアップデートさせる
研修で覚えたトークスクリプトは、時間とともに形骸化しがちです。
そのため、新人自身に“自分の言葉で再構築”させることが重要です。
実践例:
「研修で学んだスクリプトを、自分の言葉で3分以内に話してみよう」
「言い回しを3箇所、あなたの言葉に置き換えてみよう」
これにより、スクリプトが“台本”から“武器”に変わります。
4. 成長を“見える化”するスキルマップを導入
「できる/できない」の感覚は人によってバラバラです。
そのため、スキルの定量化を行う「営業スキルマップ」を使うと効果的です。
スキルマップ例
| スキル項目 | 評価基準 | 自己評価(5点満点) |
|---|---|---|
| アポイント取得力 | 架電→興味喚起→アポ設定の流れを再現できる | 3 |
| 商談設計力 | ヒアリング〜提案までを整理して話せる | 2 |
| 提案力 | 顧客の課題に合わせた資料作成ができる | 3 |
| クロージング力 | 契約までの意思確認ができる | 2 |
| フォロー力 | 顧客満足度を高める対応ができる | 4 |
可視化=成長の実感。
数字で「できるようになった」が見えると、新人の自己肯定感が高まります。
5. 研修内容を「チーム単位」で共有する
新人教育は個人だけでなく、チーム全体の営業力向上につながる機会です。
そこで有効なのが、「共有ミーティング」の仕組みです。
チーム共有の仕方
- 毎週1回、研修内容を既存メンバーと共有
- 成功事例・失敗事例をチームで振り返る
- ベテランから新人へアドバイスをもらう
この循環により、組織として“育て合う文化”が定着します。
営業チーム全体が学び続けることで、研修効果が長期的に維持されます。
まとめ
新人営業研修は、「知識を教える場」ではなく、「行動と意識を変える仕組み」でなければなりません。
短期的なインプットでは成果は出ず、体験・振り返り・再挑戦の循環が成長を生みます。
本記事で紹介した研修設計の要点をまとめると、次の通りです。
| カテゴリ | ポイント | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 目的設計 | 行動変容をゴールに設定 | 教わる→動ける営業に変化 |
| カリキュラム | 座学×実践×振り返りを組み合わせる | 学びの定着と現場応用力向上 |
| フォロー施策 | 面談・OJT・スキルマップ | 継続的な成長と離職防止 |
| 教育文化 | チームで学び続ける体制 | 組織の営業力底上げ |
新人営業が一人で成長することはありません。
「教える人」「見守る人」「支える仕組み」がそろってこそ、成果が安定します。
研修とは“育成イベント”ではなく、“成長のスタートライン”。
研修後の1か月、3か月、半年を見据えて設計することで、
新人は「教わる側」から「自走する営業」へと進化します。
育て方が変われば、売上が変わる。
今日紹介したカリキュラム例を、自社の営業育成にぜひ取り入れてみてください。

