新人営業として現場に出始めると、日々の仕事に追われて「振り返る時間がない」という人が多いのではないでしょうか。
しかし、営業の成長スピードを決めるのは「行動量」ではなく「振り返りの質」です。
週単位で自分の行動をレビューすることで、課題の再発防止や成功パターンの再現が可能になります。
特に新人のうちは、毎週の小さな学びを積み重ねることが、後の「数字の安定」や「自信の定着」につながります。
この記事では、現役営業マネージャーが使っている「新人営業向けの週次レビュー用テンプレート」を紹介します。
そのまま使えるフォーマット例、記入のコツ、チームでの活用方法までを網羅。
今日から使える“営業の成長を仕組み化するレビュー法”が身につきます。
なぜ新人営業に「週次レビュー」が必要なのか
営業の現場では、「数をこなせ」「動けば成果は出る」と言われがちですが、
“動きながら考える”ための仕組みがなければ、同じミスを繰り返すだけです。
週次レビュー(Weekly Review)は、単なる報告ではなく、自分の行動データを整理して、改善の仮説を立てる作業です。
新人営業にこそ、この習慣が不可欠です。
1. 週単位で振り返ることで「気づき」が早まる
月次や四半期単位では、改善のタイミングが遅すぎます。
週次レビューを行うと、「行動→結果→改善」のサイクルを最短で回せます。
| 比較項目 | 月次レビュー | 週次レビュー |
|---|---|---|
| 振り返り頻度 | 月1回 | 週1回 |
| 問題発見までの時間 | 平均30日 | 平均7日 |
| 改善スピード | 遅い(反省止まり) | 早い(即修正) |
| モチベーション維持 | しにくい | 継続しやすい |
週単位の振り返りは、「まだ覚えているうちに改善できる」点が最大のメリットです。
2. 客観的に自分の成長を見える化できる
新人営業は、自分の成長を“感覚”で判断しがちです。
しかし、週ごとにデータを記録していくと、「行動と成果の関係性」が明確になります。
例:
先週より架電件数が10件増えた → 商談数が2件増えた → 成約1件アップ
このように数字で「努力が成果に変わった」ことを実感できると、自己肯定感が上がり、行動が継続します。
3. 上司やチームとの共有がスムーズになる
週次レビューをテンプレート化しておくと、上司との1on1やチームミーティングでの共有がスムーズになります。
感情的な「頑張りました」ではなく、事実ベースで報告できる営業になれます。
| 悪い報告 | 良い報告 |
|---|---|
| 「結構頑張りました」 | 「架電80件→商談6件→成約2件。商談率改善が課題です」 |
レビューの質は、上司との信頼にも直結します。
“振り返れる営業=任せられる営業”です。
新人営業のための週次レビュー基本テンプレート
ここでは、実際に多くの営業チームで使われている「週次レビューの型」を紹介します。
このテンプレートに沿って書くだけで、自然と「行動 → 結果 → 改善」が整理されます。
週次レビュー基本テンプレート(例)
| セクション | 記入内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 【1】今週の目標 | 今週のゴール・行動目標 | 架電100件・商談5件・成約2件を目指す |
| 【2】実績まとめ | 実際の数字・結果 | 架電92件・商談6件・成約1件 |
| 【3】良かった点 | うまくいった行動・要因 | 朝イチの架電でアポ率が上がった |
| 【4】課題点 | できなかったこと・原因 | 商談準備に時間をかけすぎ、午後の活動が減った |
| 【5】改善アクション | 来週の対策・次の一手 | 商談準備を前日夕方にまとめる習慣化 |
| 【6】気づき・学び | 今週感じた成長や発見 | トークよりも“聞く姿勢”の大切さを実感 |
| 【7】上司への相談事項 | 困っていること・助言を求めたい点 | 提案書の作り方をブラッシュアップしたい |
テンプレートのポイント
- 数字+行動+感情の3軸で書く
→ データと気づきを同時に整理できる - 完璧を目指さず「気づきの記録」として残す
→ 毎週書くことに意味がある - 上司がコメントできるスペースを設ける
→ フィードバック文化が根付く
書くタイミングと所要時間
| タイミング | 所要時間 | 理由 |
|---|---|---|
| 金曜日の夕方 or 月曜の朝 | 20〜30分 | 記憶が新しいうちに書ける/次週計画に反映できる |
たった30分のレビューが、翌週のパフォーマンスを劇的に変えます。
「振り返り時間を確保できる人」が、最速で成果を伸ばす人です。
実践で使える週次レビュー記入例と解説
テンプレートを提示されても、「実際にどう書けばいいのかわからない」という新人は多いです。
ここでは、リアルな営業現場での記入例をもとに、良いレビューと改善ポイントを具体的に解説します。
【例1】新人営業(入社3か月目)の週次レビュー例
| セクション | 記入内容 |
|---|---|
| 今週の目標 | 架電80件・商談5件・成約1件 |
| 実績まとめ | 架電72件・商談4件・成約0件 |
| 良かった点 | トークスクリプトを改善した結果、アポ率が上がった(前週5%→今週9%) |
| 課題点 | 商談準備が甘く、提案内容が浅かった |
| 改善アクション | 商談前に「お客様の現状→課題→理想像」を3行でまとめる |
| 気づき・学び | 「話すこと」より「聞き出すこと」のほうが成約率を上げると実感 |
| 上司への相談事項 | 顧客のタイプ別に話し方を変えるコツを知りたい |
解説ポイント
- 数字で現状を把握している点◎
「72件→4件→0件」という流れで、どこに課題があるか明確。 - “気づき”が行動ベースで書かれている◎
「商談前に3行で整理」という具体策があるため、翌週の行動に落とし込みやすい。 - 改善点が抽象的でない=良いレビュー
「もっと頑張る」ではなく、「どう頑張るか」が明記されている。
【例2】成果が出始めた営業(入社6か月目)のレビュー例
| セクション | 記入内容 |
|---|---|
| 今週の目標 | 商談8件・成約3件・フォロー5件 |
| 実績まとめ | 商談8件・成約2件・フォロー5件 |
| 良かった点 | フォロー後にリピート発注を獲得(B社・C社) |
| 課題点 | 初回商談で「決裁者確認」が不十分なケースが多かった |
| 改善アクション | 商談時に“意思決定者確認リスト”を使う |
| 気づき・学び | 決裁者を早めに巻き込むことで商談スピードが上がる |
| 上司への相談事項 | 提案書の「まとめ方」を統一したい |
解説ポイント
- 数字・行動・結果の一貫性が取れている◎
週次レビューの目的は“数字の反省”ではなく、“行動の改善”。
この例のように「行動→結果→次の一手」が書けていれば完璧です。 - 課題発見が明確=上司が支援しやすい
「決裁者確認」という具体的課題があれば、上司も即アドバイス可能。
レビューは“上司に見せるため”ではなく、“自分を伸ばすため”に書く。
書くほどに営業の“思考力”が鍛えられます。
【例3】成果が停滞している新人の悪いレビュー例
| セクション | 記入内容 |
|---|---|
| 今週の目標 | 成約3件 |
| 実績まとめ | 成約0件 |
| 良かった点 | 特になし |
| 課題点 | 特になし |
| 改善アクション | もっと頑張る |
| 気づき・学び | 難しい週だった |
| 上司への相談事項 | 特になし |
改善のヒント
- 数字だけのレビューは意味がない。
行動・感情・仮説のいずれかが欠けると成長につながらない。 - 「特になし」は“停滞のサイン”。
1つでも気づきを書く努力をすべき。 - “がんばる”は行動ではない。
「何を・どの順で・どんな目的で」が明確なアクションに変えること。
たとえば「商談前に顧客サイトを3分調べる」など、
“小さく具体的”な改善行動に置き換えることがポイントです。
週次レビューをチームで活用する仕組みと運用方法
個人で週次レビューを続けることも大切ですが、チーム全体で共有する仕組みを作ると、
新人営業の成長スピードは格段に上がります。
ここでは、チーム内で週次レビューを活用するための具体的な方法を紹介します。
1. チームレビューの目的を「報告」から「共有」に変える
多くの新人が陥るのは、「レビュー=報告書」だと思ってしまうこと。
しかし、本来の目的は「ナレッジ共有と成長支援」です。
悪いパターン:
上司「今週どうだった?」
新人「まあまあでした」
良いパターン:
上司「何が上手くいった?」
新人「朝のテレアポ時間を変えたらアポ率が10%上がりました」
チーム「その方法、共有してもらおう!」
つまり、レビューを「結果報告」ではなく「学びの交換会」に変えることが鍵です。
2. チームミーティングで週次レビューを共有する流れ
レビュー共有を形骸化させないために、以下のフォーマットで行うのが効果的です。
週次共有ミーティングの流れ(30分)
| 時間 | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 先週の全体数字共有 | リーダー |
| 5〜15分 | 各自の良かった行動を共有(1人1分) | 全員 |
| 15〜25分 | 課題・改善アイデアのディスカッション | 全員 |
| 25〜30分 | 今週の重点行動を決定 | リーダーまとめ |
「結果の共有」よりも「成功パターンの共有」に時間を使うのがポイントです。
これにより、チーム全体の行動の質が上がります。
3. 共有レビューを活かした“チーム学習ノート”を作る
レビューの中で出てきた良い行動や学びを、チームノートやスプレッドシートに蓄積していくのがおすすめです。
チームレビュー共有ノート例
| 週 | 学び・成功事例 | 担当者 | 活用ポイント |
|---|---|---|---|
| 第1週 | 朝のテレアポが有効(9〜10時) | Aさん | 時間を固定して集中する |
| 第2週 | 商談時に“理想の状態”を聞くとクロージング率UP | Bさん | ヒアリング質問に追加 |
| 第3週 | 資料送付後のフォローを1時間以内に行う | Cさん | レスポンス速度を重視 |
こうして「チーム全員の学び」を共有資産にすることで、組織としての営業力が伸びます。
4. 上司のフィードバックは「数字」ではなく「行動」に焦点を当てる
週次レビューに対する上司のフィードバックも非常に重要です。
ただし、評価の焦点を「結果」ではなく「プロセス」に置くことが大切です。
悪い例
「成約が少ないな。もっと頑張って。」
良い例
「午前中のテレアポ時間を継続してみよう。アポ率が安定してきているね。」
数字は結果にすぎません。
行動への具体的な言葉がけが、営業の自信と再現性を生みます。
5. 週次レビューを「評価」と分けて考える
新人がレビューを避ける最大の理由は、「評価されるのが怖いから」です。
しかし、レビューは“成長支援の場”であり、査定とは別物です。
そのため、上司やチームリーダーは次のように明確に伝える必要があります。
「レビューは点数をつけるものではなく、
あなたの行動を一緒に良くしていくための時間です。」
この前提があるだけで、新人は安心して本音を書けるようになります。
6. チームでレビュー文化を根付かせるためのルール例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施頻度 | 毎週金曜日の午後または月曜朝に固定 |
| 共有方法 | Googleスプレッドシート or Notionで全員閲覧可 |
| コメントルール | 上司は必ず1コメント返す/ポジティブフィードバックを入れる |
| 表彰制度 | 月に1度「ベストレビュー賞」を発表(学び共有賞) |
「振り返りを文化にする」=「成長を仕組みにする」ことです。
この仕組みがあるチームほど、離職率が低く、成果の再現性が高まります。
まとめ
新人営業にとって、週次レビューは「振り返り」ではなく、「成長のエンジン」です。
1週間の行動を整理し、次の行動に繋げる仕組みを持つことで、成果が安定していきます。
本記事で紹介した要点を振り返ると、以下のように整理できます。
| カテゴリ | ポイント | 効果 |
|---|---|---|
| 必要性 | 週単位で改善サイクルを回す | 行動の質とスピードが上がる |
| テンプレート | 数字+行動+学びで整理 | 成果を見える化できる |
| 記入例 | 良いレビューは具体的・定量的 | 成長課題が明確になる |
| チーム運用 | 共有・フィードバックを仕組み化 | チーム全体の底上げ |
| 継続のコツ | 「完璧」より「継続」 | 成長を習慣化できる |
週次レビューは、“時間を取るための作業”ではなく、“時間を生み出すための思考整理”です。
毎週30分、自分と向き合う時間を作るだけで、半年後の営業力は見違えるように変わります。
「振り返りができる営業が、伸びる営業になる。」
今日のレビューが、明日の成果を決めます。

