営業の第一印象は、最初の30秒で決まるといわれています。
どんなに優れた商品を扱っていても、自己紹介でつまずけば、その後の商談はうまく進みません。
新人営業にとって自己紹介は、自分を売る最初のプレゼンです。
この記事では、営業初心者でも安心して使える自己紹介トークの例文を、
「初訪問」「テレアポ後の商談」「オンライン商談」などのシーン別に紹介します。
また、信頼を勝ち取るための話し方・印象づけのコツや、逆効果になるNGトークも解説。
読了後には、あなたの自己紹介が「緊張する時間」から「チャンスを作る時間」へと変わるでしょう。
新人営業がやりがちな自己紹介の失敗パターン
自己紹介は、商談のスタートを決める「営業の第一関門」です。
しかし、多くの新人営業がこの場面で“印象を下げる自己紹介”をしてしまっています。
ここでは、ありがちな失敗パターンを具体的に整理し、なぜそれが信頼を損なうのかを解説します。
よくある失敗パターン３選
| 失敗パターン | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 無難すぎる自己紹介 | 「〇〇会社の△△です。よろしくお願いします。」だけ | 相手に何も印象が残らない |
| ② 自分語りが長い | 経歴や意気込みを延々と話してしまう | 相手が退屈し、距離が生まれる |
| ③ テンプレすぎる言葉 | 「まだ勉強中ですが頑張ります」など形式的 | 未熟な印象だけが残る |
これらに共通するのは、「相手視点がない」ということ。
営業の自己紹介とは、「自分を説明する場」ではなく、「相手に安心してもらう場」です。
なぜ新人営業の自己紹介は印象に残らないのか
理由はシンプルで、“目的が曖昧”だからです。
多くの新人営業が「失礼がないように」「とりあえず丁寧に」と考えますが、
相手にとって大切なのは“この人と話す価値があるかどうか”なのです。
自己紹介で伝えるべきは、「自分が何者か」ではなく、
「相手にどう貢献できる存在か」というメッセージです。
つまり、
“名刺交換は挨拶”
“自己紹介は信頼構築”
この意識の違いが、成約率に直結します。
相手の信頼を得る自己紹介トークの基本構成
営業の自己紹介で重要なのは、「自分をどう見せるか」ではなく、
“相手にどんな印象を残すか”をデザインすることです。
ここでは、商談冒頭で信頼を生む自己紹介の構成テンプレートを紹介します。
自己紹介の基本構成テンプレート
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 挨拶・名乗り | 名前と会社名をシンプルに伝える | 明るく・はっきり・笑顔で |
| ② 背景説明 | 担当業務や簡単な役割を説明 | 「何をしている人なのか」を明確に |
| ③ 相手との関連づけ | 相手に関係ある一言を入れる | 「御社の○○に関してお話を伺っております」など |
| ④ 信頼アピール | 一言で専門性や誠実さを印象づける | 実績・心構え・姿勢のいずれかを短く伝える |
| ⑤ 会話のきっかけ | 軽い質問や雑談へつなげる | 相手が話しやすい空気を作る |
トーク構成例（ベーシック版）
「株式会社〇〇の△△と申します。
弊社では〇〇業界のクライアント様を中心に、営業支援を担当しております。
本日は御社の□□について、少し現状をお伺いできればと思います。
私自身、まだ経験は浅いですが、できるだけ具体的な提案をお持ちできるよう努めております。
どうぞよろしくお願いいたします。」
このように、自己紹介には“信頼を生む流れ”があります。
ただし、テンプレを丸暗記するのではなく、相手や状況に合わせて柔軟に使い分けることが重要です。
トーク構成例（カジュアル版）
「株式会社〇〇の△△と申します。
普段は○○の企業様の営業支援を担当しておりまして、今日はその中でも特に□□の部分をお話しできればと思います。
硬い話ばかりではなく、御社の実情に近い部分をざっくばらんに伺えれば嬉しいです。」
カジュアルな商談やオンラインミーティングでは、“親しみやすさ”を優先するトーンが効果的です。
自己紹介は「話し方」で印象が変わるため、テンションと場の空気を意識することが大切です。
トーク構成例（信頼重視・フォーマル版）
「株式会社〇〇の△△と申します。
弊社ではこれまで、□□業界を中心に約100社以上の営業支援を行ってまいりました。
本日は御社の課題や取り組みをしっかりお伺いし、次の打ち手をご一緒に考えさせていただければと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。」
フォーマルな商談では、「誠実さ」「専門性」「安心感」をキーワードに構成するのが鉄則です。
自己紹介は短くても“信頼を預けられる人”だと思わせる内容にすることがポイントです。
新人営業でも使える自己紹介トーク例【シーン別テンプレ付き】
自己紹介トークは、状況や相手によって最適な形が異なります。
ここでは、新人営業が現場でそのまま使えるシーン別の自己紹介テンプレートを紹介します。
シーン① 初訪問の商談（初対面での印象重視）
【目的】
第一印象で信頼感と誠実さを伝える。
【トーク例】
「初めまして、株式会社〇〇の△△と申します。
弊社では〇〇業界向けに□□のサービスを提供しておりまして、
本日は御社の取り組みを伺いながら、少しでもお役に立てるご提案をさせていただければと思います。
まだまだ学ぶことも多いのですが、誠実に対応いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
【ポイント】
- 「学びながらも貢献したい」という姿勢を見せることで、フレッシュさがプラスに働く。
- 冒頭の声のトーンはやや高めに。印象を明るくする。
シーン② テレアポ後の初商談（既に名前を知ってもらっている場合）
【目的】
前回の電話の印象を引き継ぎ、スムーズに会話へつなぐ。
【トーク例】
「改めまして、先日お電話させていただきました株式会社〇〇の△△です。
先日はお時間をいただきありがとうございました。
本日はその際にお話しした□□について、もう少し具体的な内容をお持ちしました。
まずは御社の現状を少しお伺いできればと思います。」
【ポイント】
- 「先日」「改めて」などの接続フレーズで、継続的な関係を演出。
- 電話の内容を1フレーズだけ復習することで、話の流れが自然になる。
シーン③ オンライン商談（リモート環境での第一印象）
【目的】
画面越しでも信頼と安心感を与える。
【トーク例】
「株式会社〇〇の△△と申します。本日はオンラインでお時間をいただきありがとうございます。
カメラ越しではありますが、できるだけ丁寧にご説明させていただきますので、
ぜひ気になる点など気軽にお話しいただければ嬉しいです。」
【ポイント】
- 画面越しは表情の印象が強い。「目線・笑顔・うなずき」を意識。
- 音声環境の確認（“声聞こえますか？”）を最初に入れると丁寧さが伝わる。
シーン④ 展示会・イベントでの短時間挨拶
【目的】
短い時間で印象を残す＆次の接点を作る。
【トーク例】
「株式会社〇〇の△△と申します。
今回の展示では、御社の□□のような課題をお持ちの企業様に好評をいただいておりまして、
ぜひ一度お話を伺いたくご挨拶に参りました。よろしくお願いいたします。」
【ポイント】
- 展示会では“スピード勝負”。
- 「御社の□□のような課題」と具体性を出すことで、相手の注意を引く。
シーン⑤ 同席営業（上司・先輩と一緒の商談）
【目的】
控えめながら存在感を出す。
【トーク例】
「株式会社〇〇の△△と申します。
本日は□□の件で同席させていただきました。
サポート役として失礼のないよう努めますので、よろしくお願いいたします。」
【ポイント】
- 主役が上司の場合でも、存在を消さない程度の挨拶を入れる。
- 発言のタイミングは上司より少し後に取ると印象が良い。
シーン⑥ 既存顧客との初対面（担当引き継ぎ）
【目的】
前任者からの信頼を引き継ぎつつ、自分を印象づける。
【トーク例】
「このたび〇〇の担当を引き継がせていただきました、株式会社〇〇の△△と申します。
前任の□□より、御社の□□についてお伺いしておりまして、
今後も変わらずしっかりサポートさせていただければと思います。
至らぬ点もあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。」
【ポイント】
- 「前任者から引き継いだ情報」を一言入れると、誠実さが伝わる。
- 引き継ぎ直後の“丁寧さ”は、その後の関係性を大きく左右します。
印象が変わる自己紹介トークの話し方テクニック５選
同じ内容の自己紹介でも、話し方ひとつで印象は180度変わります。
営業の世界では「何を話すか」よりも、「どう話すか」が信頼に直結します。
ここでは、新人営業でもすぐ実践できる話し方テクニックを５つ紹介します。
① 3秒ルールで“入りの印象”を制する
人は最初の3秒で相手の印象を判断します。
だからこそ、最初の一言目は「明るく・ゆっくり・はっきり」を意識してください。
例：
NG：「ぁ、株式会社〇〇の△△です…」
OK：「株式会社〇〇の△△と申します。本日はお時間をいただきありがとうございます。」
声のトーンを半音上げ、語尾を下げすぎないだけで、印象は一気にプロフェッショナルになります。
最初の3秒＝信頼構築のゴールデンタイムです。
② 「笑顔＋うなずき」で“聴く姿勢”を演出
自己紹介は「自分が話す時間」ですが、同時に相手に安心感を与える時間でもあります。
表情が硬いと、どれだけ良いトークでも緊張感が伝わってしまいます。
- 目線は相手の眉から目のラインへ。
- 話すときに口角を1センチ上げる。
- 相手が話した時に、「なるほど」「ありがとうございます」とうなずく。
この3点を意識するだけで、「この人は感じがいい」と思われます。
③ ストーリー構成で“人間味”を出す
自己紹介に少しだけストーリー（背景）を入れると、印象がグッと上がります。
たとえば以下のような一言を添えてみましょう。
例：
「前職では接客を担当していたのですが、その経験を活かして営業でも“人との関係づくり”を意識しています。」
こうした背景を一言添えるだけで、
「この人は仕事に対して真面目に向き合っている」と伝わります。
ストーリーは1文で十分。“長く語らず深く伝える”のがコツです。
④ “相手に触れる一言”を入れる
商談相手が企業なら、「御社のホームページを拝見して感じたのですが…」など、
相手に関心を持っていることを伝える一言を入れると好印象です。
例：
「御社の○○の取り組みを拝見して、非常に興味を持ちました。」
この一言で、「この営業はリサーチしてきている」と認識され、
信頼されるスタートを切ることができます。
⑤ 自己紹介の締めは“期待感”で終える
自己紹介の最後の一文は、印象を強く残すチャンスです。
NG例：
「よろしくお願いします。」（形式的）
OK例：
「本日は短い時間ですが、御社のお役に立てるヒントを少しでも持ち帰っていただければと思います。」
締めの一文＝あなたの営業スタイルを象徴する部分。
ここを丁寧に準備するだけで、「話ができる営業」に見えます。
話し方テクニックまとめ表
| テクニック | 目的 | 効果 |
|---|---|---|
| 3秒ルール | 最初の印象を決める | 信頼・安心感が生まれる |
| 笑顔＋うなずき | 聞く姿勢を演出 | 親近感・共感が生まれる |
| ストーリー要素 | 人間味を出す | 記憶に残る自己紹介になる |
| 相手への言及 | リサーチ力を示す | 誠実さが伝わる |
| 期待で締める | プロ意識を印象づける | 商談への関心が高まる |
新人営業ほど、「テンプレの自己紹介」で終わりがちです。
しかし本当に信頼を得るのは、“相手を意識して構成された自己紹介”だけ。
自己紹介をただの儀式で終わらせず、あなたの価値を最初の1分で伝えるプレゼンに変えていきましょう。
自己紹介を磨くための実践ステップ
営業の自己紹介は、一度作って終わりではありません。
「磨き」「検証」「修正」を繰り返すことで精度が上がる“営業スキル”の一部です。
ここでは、新人営業が自己紹介を進化させるための実践的ステップを紹介します。
ステップ① 自分のトークを録音して客観視する
多くの営業が「自分の自己紹介がどう聞こえているか」を把握していません。
自分の声を録音して聞くことで、声のトーン・スピード・語尾の癖を客観的に確認できます。
| チェック項目 | よくある課題 | 改善ポイント |
|---|---|---|
| 声のトーン | 小さくて自信がない | 1音上げて話す |
| スピード | 早口・詰め込みすぎ | 1文ごとに0.5秒間を空ける |
| 語尾 | 下がりすぎ・尻すぼみ | 語尾は「です」「ます」で止める |
| リズム | 単調・棒読み | フレーズごとに抑揚をつける |
この“音声自己分析”を繰り返すことで、言葉に説得力が宿るようになります。
ステップ② トーク内容を「目的別」に2種類作る
自己紹介は1パターンでは不十分です。
目的に応じて、「信頼型」と「親近感型」の2種類を準備しておくと効果的です。
| タイプ | 目的 | トーン | 使用シーン |
|---|---|---|---|
| 信頼型 | 専門性・誠実さを伝える | 落ち着いた声・丁寧な言葉 | 初訪問・フォーマルな商談 |
| 親近感型 | 雰囲気を和らげる | 明るい声・柔らかい言葉 | 雑談中心・オンライン・展示会など |
相手の立場や空気感に合わせて使い分けることで、「空気を読める営業」として印象が上がります。
ステップ③ 他人にフィードバックをもらう
自己紹介の改善には、第三者の視点が不可欠です。
上司や先輩に一度自己紹介を聞いてもらい、率直な感想をもらいましょう。
- 「声のトーンはどう感じたか」
- 「印象に残った一言はあったか」
- 「相手に興味を持てたか」
このフィードバックをもとに、“印象に残る自己紹介”を再構築します。
ステップ④ フレーズを“キーワード単位”で管理する
自己紹介を一文丸暗記するよりも、キーワードで整理する方法がおすすめです。
例：
「名前」「会社名」「担当業務」「相手との関連」「一言アピール」「締め」
この6項目を軸に、即興でアレンジできるようにしておくと、
どんな商談でも自然に自己紹介ができます。
準備の中に“自由度”を残すことが、プロの営業の共通点です。
ステップ⑤ “自分らしさ”を一言で表現する
最後に、自己紹介の中にあなたのキャラクターを象徴する一言を入れてください。
たとえば次のような一文が、会話のきっかけになります。
- 「小さな改善を積み重ねるのが得意です」
- 「スピード感を大事に動いております」
- 「雑談から課題を見つけるのが得意なんです」
こうした一言で、相手は「この人はどんな営業か」をイメージできます。
自己紹介とは、名刺では伝わらない“あなたの個性”を可視化するツールなのです。
ポイント：自己紹介は「営業の名刺トーク」
名刺は“情報”を伝えるものですが、
自己紹介は“印象”を伝えるための言葉の名刺です。
短く、簡潔に、しかしあなたらしく。
それが、信頼される営業パーソンへの第一歩です。
まとめ：自己紹介は“信頼を生む営業スキル”である
営業の自己紹介は、ただの形式的な挨拶ではありません。
それは、あなたという「商品」を相手に知ってもらう最初のプレゼンテーション」です。
今回の記事で解説したように、
- 自己紹介は「相手視点」で設計すること
- 構成（名乗り→関連→信頼→締め）を意識すること
- 話し方・表情・一言の工夫で印象が劇的に変わること
この３つを意識すれば、営業経験の浅い新人でも、商談の最初で確実に信頼をつかめます。
そして何より、自己紹介は「覚えるもの」ではなく「育てるもの」。
場数を踏み、相手の反応を観察しながら、自分だけの“勝てる自己紹介”を作り上げてください。
最初の1分で信頼される営業は、商談の9割を制します。
自己紹介こそ、あなたの営業キャリアを左右する最強の武器です。