従来型の営業経験があるけれど、もっと高成長・ハイインパクトの環境で挑戦したい。そんな思いから「SaaS営業」に興味を持つ人は多いでしょう。
しかし、SaaS営業にはプロダクト理解・顧客成功志向・定量管理力など、従来営業とは異なるスキルが求められます。
本記事では、SaaS営業への転職市場動向・必要スキル・選考攻略法・年収・キャリアパスなどを網羅。これからSaaS営業を目指す人が失敗しないためのロードマップを提示します。
SaaS営業転職でキャリアを加速させる完全ガイド|市場動向・年収・成功の秘訣
SaaS営業とは?業界全体の急成長を理解する
SaaS営業の定義と特徴
SaaSとは「Software as a Service」の略で、ソフトウェアをクラウド上で提供するサービスモデルを指します。
つまり顧客は、従来のようにソフトをインストールして使うのではなく、ブラウザやアプリを通じてサブスクリプション型で利用します。
SaaS営業は、「売って終わり」ではなく「使い続けてもらう」ことが成果になる営業職です。
ここが、従来のハードウェア営業や代理店営業と決定的に異なるポイントです。
SaaS営業のビジネスモデル
SaaSビジネスの収益構造はMRR(月次収益)を基盤としています。
そのため、営業のミッションは「新規契約の獲得」だけでなく、解約率の低減やアップセル・クロスセルを通じてLTV(顧客生涯価値)を最大化することにあります。
代表的なSaaS企業の事例を見てみましょう。
企業名 | サービス例 | 営業スタイルの特徴 |
---|---|---|
freee | 会計・人事SaaS | SMB向け・インサイド中心 |
Salesforce | CRM・SFA | 大企業向け・フィールド重視 |
マネーフォワード | 経理・請求SaaS | コンサルティング営業型 |
Sansan | 名刺管理・営業支援SaaS | フィールド+インサイド連携型 |
SmartHR | 労務管理SaaS | SMB・ミドル層向けハイブリッド型 |
これらの企業に共通しているのは、テクノロジーと営業が一体化していることです。
SaaS営業は単なるセールス職ではなく、プロダクト理解・顧客支援・データ分析を複合的に扱う“ハイブリッド職種”として進化しています。
SaaS営業市場の急成長
SaaS市場は、2020年代に入ってから急速に拡大を続けています。
国内のSaaS市場規模は、2024年時点で約1兆円を突破しており、毎年10〜15%の成長率を維持しています。
この背景には、以下の3つの要因があります。
- DX推進によるクラウド導入の加速
- SMB(中小企業)へのIT活用支援の需要拡大
- サブスクリプションビジネスの定着
つまり、SaaS営業は「時代の追い風を受けている職種」なのです。
この波に乗ることで、営業キャリアを一気にスケールさせるチャンスが生まれます。
SaaS営業の主な職種と役割を理解しよう
SaaS営業には、従来の「営業担当」だけではなく、分業体制に基づく専門的なポジションが存在します。
この構造を理解しておくことが、転職後のミスマッチを防ぐ第一歩になります。
SaaS営業の職種構成
SaaSビジネスでは、一般的に以下の4つの営業ポジションが存在します。
職種名 | 役割 | 主なKPI | 特徴 |
---|---|---|---|
インサイドセールス(Inside Sales) | リード(見込み顧客)の発掘・育成 | 架電数、商談化率 | マーケティングとの連携が強い |
フィールドセールス(Field Sales) | 商談・提案・契約獲得 | 成約率、受注額 | 対面・オンラインでクロージング |
カスタマーサクセス(Customer Success) | 契約後の顧客支援・継続利用促進 | 解約率、LTV、NPS | 顧客成功を支援する伴走型 |
アカウントマネージャー(Account Manager) | 既存顧客へのアップセル・クロスセル | 継続率、売上成長率 | 関係維持と追加提案を担当 |
これらの役割は、顧客との関係フェーズに応じて分担されています。
例えば、インサイドセールスがアポイントを獲得し、フィールドセールスが契約を締結。
その後はカスタマーサクセスがフォローし、アカウントマネージャーが追加提案を行う──このように顧客のライフサイクル全体をカバーするチーム体制が特徴です。
各職種で求められるスキル
インサイドセールス
- CRM(Salesforceなど)の活用スキル
- データを基にした見込み客選定力
- シナリオ設計力と電話・メールでの提案力
「会話で価値を伝える力」+「数字を読む力」がポイントです。
フィールドセールス
- SaaSモデルのROI提案力
- ヒアリングスキル・課題抽出能力
- 自社プロダクトの深い理解
顧客課題に寄り添いながら、論理的に価値を提案する力が求められます。
カスタマーサクセス
- オンボーディング支援スキル
- データ分析による利用状況の可視化
- 顧客との長期的関係構築力
営業よりも“顧客伴走型コンサル”に近い職種といえます。
SaaS営業のキャリアパス
SaaS営業職は、実績やスキルに応じて次のようなキャリアを描けます。
キャリアステージ | 主な役割 | 次のステップ |
---|---|---|
ジュニア営業 | 商談獲得や提案補助 | フィールドセールス/CSへ |
シニア営業 | 自主的に提案・クロージング | チームリーダーやマネージャーへ |
マネージャー | チームのKPI設計・メンバー育成 | 部門長・事業責任者へ |
エキスパート | 大型案件・グローバル顧客担当 | エンタープライズ営業へ |
また、カスタマーサクセスからプロダクトマネージャーやコンサルタント職に転じるケースも増えています。
SaaS営業は、単なる営業キャリアの延長線ではなく、ビジネス戦略・プロダクト戦略に関わるキャリアパスが描ける点が魅力です。
SaaS営業の年収・待遇・働き方のリアル
SaaS営業の年収相場
SaaS営業の平均年収は、職種や担当領域によって大きく異なります。
一般的には、インサイドセールスで400万〜600万円、フィールドセールスで600万〜900万円、マネージャークラスでは1,000万円以上が相場です。
以下の表は、SaaS営業職の年収レンジを職種別にまとめたものです。
職種 | 年収レンジ | インセンティブ | 備考 |
---|---|---|---|
インサイドセールス | 400万〜600万円 | あり(商談化率など) | 若手層に人気 |
フィールドセールス | 600万〜900万円 | あり(受注額に応じて) | 実績次第で年収1,000万円超も |
カスタマーサクセス | 500万〜800万円 | 一部あり(継続率など) | 継続貢献度が評価対象 |
アカウントマネージャー | 700万〜1,000万円 | あり(アップセル成功率など) | 大企業担当は高収入傾向 |
セールスマネージャー | 900万〜1,500万円 | あり | KPI責任とチーム統括 |
SaaS業界は成果主義が明確で、個人の数字がそのまま評価・報酬に反映されやすい傾向があります。
そのため、営業スキルが高い人にとっては非常に稼ぎやすい環境です。
働き方とワークライフバランス
SaaS企業の多くはリモートワークやフレックスタイム制を導入しており、柔軟な働き方が可能です。
特にインサイドセールスやカスタマーサクセス職は、完全在宅でもパフォーマンスを発揮できる職種として注目されています。
代表的な働き方の特徴をまとめると次の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
勤務形態 | リモートワーク中心/出社ハイブリッド |
勤務時間 | フルフレックス制が主流 |
使用ツール | Salesforce・Slack・Zoom・Notionなど |
成果管理 | KPI・OKRベースの定量評価 |
働き方の特徴 | 数字責任が明確・自己裁量が大きい |
つまり、時間ではなく成果で評価される働き方が一般的です。
「効率的に働き、成果を出す」ことを重視するタイプには最適な環境と言えます。
SaaS営業で高収入を得るためのコツ
SaaS営業で高年収を狙うには、次の3つのスキルを意識的に磨く必要があります。
- データドリブンな営業思考
感覚ではなく、データと仮説で提案を組み立てる力。CRM分析・レポート作成スキルが必須です。 - プロダクト理解と業界知識
自社サービスを正確に理解し、顧客の業務課題と接続して語れる人が強いです。 - チームプレー×成果主義のバランス
SaaS営業はチーム連携が前提。成果を独占せず、チーム全体の数字を伸ばせる人が評価されます。
また、SaaS企業の多くは外資系文化に近い成果主義を導入しているため、実績を可視化して語れる人材が昇給・昇進で優遇されます。
SaaS営業の報酬構造の一例
以下は、年収800万円のSaaS営業職の一般的な給与モデル例です。
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
基本給 | 500万円 | 月給制(固定給) |
インセンティブ | 200万円 | 目標達成率120%時 |
賞与 | 100万円 | 半期業績連動 |
合計 | 800万円 | 実績次第で変動あり |
このように、インセンティブ比率が高いため、実績を積めば短期間で報酬を大きく伸ばすことも可能です。
SaaS営業転職を成功させるための戦略と準備
SaaS業界が求める人材像
SaaS営業で採用される人材には、「変化に強く、数字に強い」という2つの共通点があります。
企業側は単なる営業スキルよりも、「SaaS特有の構造を理解しているか」を重視します。
SaaS企業が特に注目しているポイントは次の3つです。
- 顧客の成功を第一に考える姿勢(Customer Centric)
単なる契約獲得ではなく、「顧客がサービスを使って成果を出す」ことに喜びを感じる人。 - データドリブンな行動思考
営業活動を数値で分析し、改善サイクルを自分で回せる人。 - プロダクト愛と成長意欲
SaaSは進化が早いため、常に学び続け、アップデートできる人が活躍する。
つまり、「売る力」より「学ぶ力・分析力・支援力」が問われるのです。
SaaS営業転職で評価される経歴・スキルセット
SaaS営業の採用では、以下のような経歴・スキルが特に評価されます。
項目 | 内容 | 補足 |
---|---|---|
業界経験 | IT、Web、広告、HR、コンサルなど | SaaSプロダクトと親和性が高い |
使用ツール経験 | Salesforce、HubSpot、Slack、Tableauなど | 実務での利用経験が有利 |
提案スキル | ROI提案、業務改善提案 | 経営層向け提案経験があると強い |
プロジェクトマネジメント | チーム連携・進行管理 | 成果再現性を証明できる要素 |
特に、BtoB営業+データ活用経験のある人は即戦力として評価されやすいです。
「SaaS業界未経験でも、構造を理解して論理的に語れるか」が採用の分かれ目です。
履歴書・職務経歴書で意識すべきポイント
SaaS営業転職では、書類の段階で「成果の可視化」と「数値の説得力」が求められます。
以下のような形式で職務経歴を記載すると効果的です。
項目 | 記載例 |
---|---|
実績 | 年間契約件数80件、目標達成率115% |
改善 | 受注リードタイムを30%短縮 |
貢献 | 顧客満足度(NPS)を+20改善 |
使用ツール | Salesforce、Google Data Portal、Slack |
SaaS企業の採用担当者は、「数値で成果を語れる人材=再現性が高い」と判断します。
逆に、「頑張りました」「努力しました」などの抽象的な表現は評価されにくい傾向です。
面接でよく聞かれる質問と回答のコツ
SaaS営業の面接では、行動のプロセスと再現性を確認する質問が多く出されます。
代表的な質問例と回答アプローチを紹介します。
質問 | 意図 | 回答のコツ |
---|---|---|
SaaS営業に興味を持った理由は? | 業界理解と志向性の確認 | 「顧客の成果を支援する営業に魅力を感じた」など明確に答える |
数字を伸ばした要因は? | 再現性の確認 | 具体的なデータ・行動を示す(例:架電数増ではなく提案構成の改善など) |
チームで成果を出す工夫は? | 協調性・コミュニケーション力 | チームKPIにどう貢献したかを具体的に伝える |
SaaSモデルの特徴を説明してください | 業界理解の確認 | サブスクリプション・LTV・解約率などを理解しているかを示す |
STAR法(Situation・Task・Action・Result)を活用して答えると、論理的で印象に残る回答ができます。
転職エージェント・求人サイト活用のポイント
SaaS営業転職は求人競争が激しいため、情報収集と戦略設計が重要です。
おすすめは「SaaS専門エージェント」を活用することです。
代表的な転職エージェントの特徴を比較します。
サービス名 | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
レバテックキャリア | IT業界特化・内定率が高い | エンジニア寄りSaaS営業希望者 |
マイナビエージェント | 未経験向け求人も多い | 20代・第二新卒 |
BizReach | ハイクラス求人中心 | 管理職・リーダー層 |
AMBI | スタートアップ系に強い | 30歳前後・挑戦志向 |
LiBzCAREER | 女性のキャリア支援に特化 | リモート希望・時短希望者 |
特にSaaS専門転職支援サービス(例:Salesbase、SaaS Careerなど)は、
職種・企業カルチャーを深く理解しているため、マッチング精度が高いです。
SaaS営業に向いている人・向いていない人の特徴
SaaS営業に向いている人の特徴
SaaS営業は、成果主義とチーム連携が共存する独特の世界です。
そのため、どんなにスキルが高くても「考え方」がマッチしていないと成果を出しにくい職種でもあります。
以下に、SaaS営業に向いている人の特徴を整理しました。
タイプ | 特徴 | SaaS営業での強み |
---|---|---|
データ思考型 | 数字や分析をもとに戦略を立てる | KPI設計やレポート分析に強い |
顧客志向型 | 相手の課題解決にやりがいを感じる | カスタマーサクセスで高評価 |
チームプレイヤー型 | 部門横断で協力し成果を出す | マーケ・CSとの連携がスムーズ |
学習意欲型 | 新しいツール・市場を常に吸収 | SaaSトレンドの変化に柔軟対応 |
成果志向型 | 数字に責任を持ち、行動量を担保 | 高い再現性と昇給スピード |
SaaS営業は「売上=成果」ではなく、顧客成功=成果という考え方が基本です。
そのため、押し売り型ではなく「課題解決型」思考の人が自然に成果を上げやすい傾向にあります。
SaaS営業に向いていない人の特徴
一方で、次のようなタイプはSaaS営業にはやや不向きとされます。
タイプ | 理由 |
---|---|
指示待ちタイプ | 自律的に行動する文化に馴染みにくい |
感覚営業型 | データ分析・KPI管理に苦手意識を持つ |
短期成果志向 | LTV重視のSaaSでは中長期的支援が重要 |
テクノロジー拒否型 | 新しいツール導入や業務自動化に抵抗感 |
協調性が低い | チームプレーより個人主義な傾向が強い |
SaaS営業は、スピード×変化×データの世界です。
そのため、「感覚で動くタイプ」よりも、構造的に考え行動するタイプが長く活躍できます。
向き・不向きの自己診断チェックリスト
以下の簡易チェックリストで、自分がSaaS営業に向いているかを確認してみましょう。
質問 | YES | NO |
---|---|---|
データや数字で物事を考えるのが得意だ | □ | □ |
チームで成果を出すことにやりがいを感じる | □ | □ |
新しいツールや仕組みを試すのが好きだ | □ | □ |
顧客の課題を深く掘り下げるのが得意だ | □ | □ |
「売って終わり」より「使って成果を出す」が大事だと思う | □ | □ |
環境が変わっても柔軟に対応できる | □ | □ |
YESが4つ以上なら、SaaS営業適性あり!
逆にNOが多い場合は、事前に業界研究を深め、SaaSビジネスの構造理解を高めるのがおすすめです。
SaaS営業で活躍するためのマインドセット
最後に、SaaS営業で成果を出す人が共通して持っている考え方を紹介します。
- 「顧客と同じ目線で課題を語る」ことを意識する
単なる商談ではなく、「顧客と一緒に成功を設計する」姿勢が大切です。 - “数字”を言語化できるようにする
成果を感覚ではなくロジカルに説明できる人が昇進・昇給しやすいです。 - 変化を恐れない
SaaS業界は日々進化しています。ツール・市場・手法が常に変わるため、変化を楽しむことが何より重要です。
まとめ|SaaS営業転職でキャリアを加速させるために
SaaS営業は、営業スキル・データ分析・顧客支援のすべてを融合した次世代型の営業職です。
単に「売る」だけでなく、顧客の成功を通じて長期的な価値を生み出す──それが他の営業職との最大の違いです。
転職を成功させるための3つのポイントを最後に整理しておきましょう。
- SaaSモデルを深く理解しよう
サブスクリプション、LTV、解約率など、SaaS特有の指標を理解することで商談の説得力が格段に上がります。 - 顧客中心の営業マインドを磨こう
契約ではなく「顧客の成功」をゴールに設定する意識が、カスタマーサクセス型営業の原点です。 - データドリブンに自分の営業を改善しよう
感覚ではなく、数字で仮説を立て、検証する。これがSaaS営業で評価される人材の共通点です。
SaaS業界は今、営業人材の需要が最も高い分野のひとつです。
もしあなたが「営業として次のステージへ進みたい」と考えているなら、
SaaS営業は間違いなくキャリアを飛躍させるフィールドとなるでしょう。