営業職に就いたばかりの新人にとって、Salesforce(セールスフォース)は最初の大きな壁かもしれません。
画面が複雑そうに見える、項目が多くて何から触ればいいかわからない、そんな声をよく耳にします。
しかし、実際にはSalesforceは「正しく基本操作を理解すれば、営業効率を劇的に上げられる武器」です。
この記事では、営業初心者でもすぐに実践できるように、Salesforceの基本操作と実務で使うポイントを体系的に解説します。
アカウント登録から取引先・商談管理、タスクの追跡、レポート作成までを順序立てて説明し、実際の営業現場で「どう活かせるのか」も具体的に掘り下げます。
「上司からSalesforceの入力を頼まれたけど、正直どこを見たらいいかわからない」
「毎日入力してるけど、これって本当に意味あるの?」
そんな疑問を持つあなたが、この記事を読み終えるころにはSalesforceを“使われるツール”ではなく、“使いこなす武器”に変えられるようになります。
Salesforceの基本構造を理解しよう
まず最初に押さえておきたいのは、Salesforceがどんな構造で動いているかという点です。
表面上はデータを入力するフォームが並んでいるだけのように見えますが、実際は営業活動を「データ化して再現可能にする」ための仕組みが詰まっています。
Salesforceの基本概念
Salesforceには大きく分けて以下の5つの主要オブジェクト(データの箱)があります。
| オブジェクト名 | 意味 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 取引先(Account) | 会社や顧客組織 | 営業対象となる法人・団体情報の登録 |
| 取引先責任者(Contact) | 担当者・個人 | 取引先の中の個人担当者情報の管理 |
| リード(Lead) | 見込み顧客 | 初回アプローチ前の潜在的な顧客 |
| 商談(Opportunity) | 案件・見積もり | 成約に向けた営業案件の管理 |
| 活動(Task/Event) | 行動・予定 | 電話・訪問・メールなどの営業アクション |
これらのオブジェクトはそれぞれ独立していますが、「取引先」を中心に関連づけられていることがポイントです。
たとえば、取引先に紐づく商談があり、その商談に関連する担当者が存在し、さらにその商談の進捗を活動として記録する――そんな構造になっています。
新人営業が最初に理解すべきこと
新人営業がSalesforceで最初につまずくのは、「どこから入力すればいいの?」という点です。
最初はすべてを覚える必要はありません。まずは次の流れを理解しましょう。
- 見込み顧客(リード)を登録する
- リードが商談化したら、取引先・取引先責任者・商談を作成する
- 商談の進捗に応じて活動を記録する
- 成約したら、結果を商談に反映して完了
この流れを理解するだけで、Salesforceを「なんとなく触る」状態から「営業プロセスを意識して使う」レベルに一気にステップアップできます。
Salesforceは営業日報ではない
多くの新人がやってしまうのが、Salesforceを「日報入力ツール」だと思い込むことです。
しかし、Salesforceの真の目的はチームで営業の情報を共有し、再現性のある成果を作ることです。
入力したデータは、あなたの上司やチームメンバーが次のアクションを判断する材料になります。
つまり、あなたの入力は「報告」ではなく「チームの武器作り」なのです。
ログインから始めるSalesforceの基本操作ステップ
ここからは、実際にSalesforceを操作するうえでの基本的な流れを具体的に解説します。
初めてSalesforceを触る新人営業でも、今日から迷わず操作できるように順を追って説明します。
1. Salesforceへのログイン
まず最初に行うのが、Salesforceへのログインです。
あなたの会社専用のSalesforceドメイン(例:https://会社名.my.salesforce.com)にアクセスし、付与されたIDとパスワードでログインします。
- ポイント:ログイン情報は絶対に他人と共有しないこと。
- Tips:スマートフォンでもログイン可能なので、外出先でも商談メモをすぐに登録できます。
ログイン直後に表示されるホーム画面には「ToDo」「最近のレコード」「ダッシュボード」などが並びます。
ここから、自分の今日のタスクを確認し、営業活動をスタートできます。
2. リード(見込み顧客)の登録
Salesforceで営業活動を始める最初の一歩は、リードの登録です。
リードとは、「まだ商談には至っていないが、将来的に取引につながる可能性のある顧客情報」を指します。
リード登録の基本手順
- メニューから「リード」をクリック
- 「新規」ボタンを押す
- 以下の情報を入力
| 入力項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 氏名 | 田中 太郎 |
| 会社名 | 株式会社ABC |
| 電話番号 | 03-1234-5678 |
| メールアドレス | tanaka@abc.co.jp |
| 状況 | 新規リード/フォロー中/連絡済みなど |
| 関心商材 | クラウドサービス/コンサルティングなど |
入力が完了したら「保存」を押すだけです。
これで、リード情報がSalesforce上に登録され、チーム全体で共有できる状態になります。
3. リードから商談へ変換する
次に、リードを商談に変換します。
これは「見込み客が実際に検討段階に入った」ときに行う重要な操作です。
商談化の手順
- リード詳細画面を開く
- 右上の「変換」ボタンをクリック
- 「取引先」「取引先責任者」「商談」を同時に作成する
- 必要に応じて各項目を修正・保存する
変換後、Salesforce上では自動的にリードと取引先・商談のデータが紐づきます。
これにより、営業プロセスの「フェーズ」が一段階進み、成約に向けた管理が可能になります。
4. 商談の進捗を管理する
商談管理はSalesforceの中心機能です。
商談を開くと、金額・確度・フェーズ(例:提案中、見積提出済み、契約交渉中など)が一覧で確認できます。
商談更新のコツ
- 商談ステータスを毎回最新に更新する
- 次回アクションを「活動」に登録しておく
- メモ欄には定量情報(例:金額・日付)と定性情報(例:顧客の反応)をバランスよく残す
こうすることで、上司やチームメンバーがあなたの商談状況をすぐに理解でき、サポートが入りやすくなります。
5. 活動(アクティビティ)の登録
営業活動を見える化するうえで最も重要なのが「活動(Task/Event)」の登録です。
| 活動タイプ | 登録例 | 意図 |
|---|---|---|
| 電話 | 担当者に初回ヒアリング実施 | ニーズ確認 |
| 訪問 | 商談提案資料を持参 | プレゼン実施 |
| メール | 提案書送付済み | 資料フォロー |
| 会議 | 社内レビュー会議 | 案件共有 |
Salesforceでは、活動を登録すると自動的に日報や商談履歴として蓄積されます。
つまり「入力するほど、自分の営業履歴が資産になる」仕組みです。
営業現場で差がつくSalesforce活用テクニック
Salesforceの基本操作を覚えたら、次は「使いこなし」の段階に進みましょう。
単に入力するだけではなく、Salesforceを“営業力を伸ばすツール”として使うことが重要です。
ここでは、営業現場で実際に成果を出している人が実践している「Salesforce活用テクニック」を紹介します。
1. ダッシュボードで“今”の営業状況を可視化する
Salesforceの「ダッシュボード」機能を使えば、自分の営業活動を一目で把握できます。
特に新人営業におすすめなのは以下の3つのグラフです。
| グラフ名 | 内容 | 得られる気づき |
|---|---|---|
| 商談フェーズ別件数 | フェーズごとの商談数 | 提案中で止まっている案件の多さが見える |
| 売上予測グラフ | 確度×金額の見込み合計 | 今月の達成見込みが明確になる |
| 活動数推移 | 電話・訪問などの件数 | アクション量と成果の関係を把握できる |
ダッシュボードを毎朝チェックすることで、「今日は何を優先すべきか」が即座に判断できます。
これはただのツール操作ではなく、“データドリブン営業”の第一歩です。
2. 商談履歴を「ストーリー」として残す
商談メモを入力するとき、多くの新人は「訪問した」「提案した」などの事実だけを書きがちです。
しかし、上級営業は“物語のように経緯を残す”ことを意識しています。
たとえば以下のような書き方です。
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| 4月10日 提案書送付 | 4月10日:提案書送付。課長の反応は前向きだが、価格面に課題あり。5月に上層部会議あり、次回5月1日再訪予定。 |
良い例のように、「誰が」「何を」「どう感じたか」「次に何をするか」まで書いておくことで、
後から見たときに「営業の流れ」が再現できます。
これができる人ほど、チームからの信頼が厚くなり、成約率も上がる傾向にあります。
3. レポート機能で“改善ポイント”を見つける
Salesforceの「レポート」機能は、自分の営業を振り返るのに最適です。
レポートで見るべき3つの視点
- 商談の停滞フェーズ
どのフェーズで案件が止まっているかを可視化。ボトルネックが見える。 - 成約率の高い顧客属性
業種・規模・担当者職位などを分析し、自分が得意な顧客タイプを発見。 - アクション量と成果の相関
活動数と成約数を照らし合わせ、「努力の方向性」を確認できる。
このように、レポートはただの「集計」ではなく、次の一手を決める営業戦略ツールとして使うことができます。
4. モバイルアプリを活用して即入力・即共有
外回りが多い営業職にとって、スマホでSalesforceを使えるかどうかは大きな差になります。
Salesforceモバイルアプリを使えば、訪問後すぐに商談メモや活動を登録でき、「現場でデータを完結」させることが可能です。
実践的な使い方の例
- 訪問終了後すぐに「活動」登録を行う
- その場で「次回アクション」を入力し、上司に自動通知
- 写真(名刺・資料など)を添付して共有
これにより、情報の鮮度が高いうちにチーム全体で共有でき、“抜け漏れゼロ”の営業スタイルが実現します。
5. Slack連携で営業チームの連携をスピードアップ
最近では、SalesforceとSlackを連携させている企業も増えています。
Slack上で商談の更新通知を受け取れるようにしておくと、チーム全員がリアルタイムで情報を共有できます。
例)
🟢商談「ABC社_クラウド導入案件」が「提案中」から「見積提出済み」に更新されました。
次回アクション:5月1日 デモ実施予定。
このような通知が自動で流れることで、報告の手間が省け、上司からのアドバイスも迅速になります。
つまり、入力のスピードがチーム全体の動きの速さを決めるのです。
6. 上司や先輩の入力ログを“教材”として読む
最後に、Salesforceを上達する最も早い方法をお伝えします。
それは、先輩営業の商談履歴を読むことです。
成績上位者ほど、Salesforceへの入力が丁寧で論理的です。
どんな順番で商談を進め、どんな情報を記録しているかを観察することで、
あなたの営業力も加速度的に伸びていきます。
Salesforceは「入力が仕事」と思われがちですが、実は“思考を整理するツール”でもあります。
操作を覚えたら、ぜひこの「使いこなし」の段階まで進んでください。
ここからが本当のSalesforce営業のスタートです。
新人営業がSalesforceを使いこなすための習慣づくり
Salesforceを“使える”状態から“使いこなす”状態に進むためには、日々の習慣化が欠かせません。
ここでは、新人営業が実践すべき「Salesforce習慣」を具体的に紹介します。
1. 毎日15分だけ「入力タイム」を確保する
Salesforceを続けられない最大の理由は、「忙しくて入力の時間がない」というものです。
しかし実際は、1日15分あれば十分に更新できます。重要なのは、毎日同じ時間に入力する習慣を作ることです。
たとえば以下のようなルーティンを設定しましょう。
| 時間帯 | 作業内容 |
|---|---|
| 朝9:00〜9:15 | 前日の商談・活動の振り返り入力 |
| 昼13:00〜13:15 | 午前中の新規アポイントを登録 |
| 夕方17:30〜17:45 | 当日の活動完了報告・次回アクション設定 |
このように「短時間でも、毎日続ける」ことが、Salesforce上達の最短ルートです。
“まとめて入力”は忘れる元なので、必ずその日のうちに登録しましょう。
2. 入力基準を自分で定義する
新人営業がよく迷うのが「どこまで入力すればいいのか」という問題です。
上司や先輩が明確な基準を持っていない場合は、自分なりのルールを先に決めておくことをおすすめします。
例:自分ルールの一例
| カテゴリ | 入力ルール |
|---|---|
| 商談 | フェーズ更新は必ず当日中に実施 |
| 活動 | 訪問・電話・メールいずれかを毎日1件登録 |
| メモ | 数字と感情(顧客の温度感)をセットで残す |
こうしたルールを自分の中で確立しておくと、入力の迷いが減り、Salesforceを「自然に使い続けられる」ようになります。
3. Salesforceを“日報”の代わりにする
会社によっては、営業日報とSalesforce入力を別々に行っているケースがあります。
これは時間の無駄です。Salesforceの情報を整備すれば、日報として十分に機能します。
日報として使うポイント
- 活動内容(誰に・何を・どんな目的で)を明記
- 成果や反省を「メモ」欄に記録
- 翌日の行動を「次回アクション」として設定
上司に日報をメールで送る代わりに、Salesforceの画面を共有すればOKです。
こうすることで、「報告に追われる営業」から「仕組みで動く営業」へと進化できます。
4. 週1回は“メタ営業時間”を取る
毎週1回、30分でいいので「Salesforceを眺める時間」を作ってください。
目的は、自分の営業活動を俯瞰して見ることです。
見るべきはこの3つ。
- 商談が止まっている案件
- 最近活動が途絶えている顧客
- 成約した案件の共通点
これを定期的に振り返ることで、「次にどの案件を動かすべきか」が明確になります。
単なるデータ入力ツールだったSalesforceが、あなたの営業戦略の羅針盤に変わる瞬間です。
5. “Salesforce上級者”とつながる
社内や社外のSalesforce上級者と積極的に関わるのも、上達の近道です。
彼らは単に操作に詳しいだけでなく、「Salesforceをどう使えば売上に直結するか」を理解しています。
Slackや社内SNSで質問するだけでも、新しい使い方やショートカットを学べることがあります。
「わからないを放置しない」姿勢が成長スピードを左右します。
6. Salesforceを「営業の鏡」として使う
Salesforceに入力されたデータは、あなたの営業の姿そのものです。
数字の動き、活動の量、商談の質——それらすべてがSalesforceに映し出されています。
入力をサボることは、自分の営業を可視化する機会を失うこと。
逆に、丁寧にデータを積み上げていけば、成長の軌跡が可視化され、自信になるのです。
Salesforceの真価は、習慣化して初めて発揮されます。
最初は大変に思えるかもしれませんが、1週間、2週間と続けるうちに“Salesforce脳”が育ちます。
この習慣が、あなたの営業人生を大きく変えるきっかけになります。
まとめ 営業力を高めるためのSalesforce活用の本質
Salesforceは、単なる「入力ツール」でも「上司のための報告システム」でもありません。
本当の価値は、営業活動をデータとして蓄積し、再現性ある成果を作るための仕組みにあります。
新人営業が最初に意識すべきポイントをもう一度整理しましょう。
| ステップ | 目的 | 成果につながるポイント |
|---|---|---|
| 基本構造の理解 | データの関係性を把握 | 取引先を中心に全体像をつかむ |
| リード・商談の操作 | 顧客情報を正確に登録 | 「見込み→商談→成約」の流れを理解 |
| 活動の記録 | 行動を可視化 | 電話・訪問・メールを即時入力 |
| ダッシュボード・レポート活用 | 改善と分析 | 自分の営業傾向を“見える化” |
| 習慣化 | 継続的な運用 | 毎日15分のSalesforceタイム |
Salesforceを「営業の鏡」として使えば、あなたの努力は数字と履歴として残ります。
それは、“営業の経験値をデータ化する”という究極の自己成長法です。
明日からは、「上司に言われたから入力する」ではなく、
「自分の営業を強くするために入力する」という意識でSalesforceを使ってください。
その瞬間、あなたはすでに“Salesforceを使いこなす営業”の仲間入りです。

