営業職として配属されて最初に直面する壁──それが「アポ取り」です。
電話も怖い、訪問も難しい、そんなときに頼りになるのがメールでのアプローチです。
しかし、新人営業の多くが「何を書けばいいのか分からない」「送っても返信がない」と悩んでいます。
実は、アポ取りメールには“反応をもらえる型”が存在します。
上手な営業は、テンプレートをそのまま使うのではなく、「相手にとってメリットのある一文」を自然に織り込んでいます。
本記事では、
- 新人営業がやりがちなアポメールの失敗例
- 成約率を高めるメールの構成と書き方
- 業界別・状況別に使えるアポ取りメール例文集
を、営業現場のリアルな経験をもとに解説します。
読み終える頃には、「メールでアポが取れる営業」へと一歩前進できるはずです。
新人営業が陥りやすいアポ取りメールの3つの失敗
「メールでアポを取ろう」と意気込んでも、思ったように返信が返ってこない──。
新人営業の多くがこの壁にぶつかります。
実はそれ、あなたの熱意ではなく“構成”と“視点”の問題なのです。
まずは、アポ取りメールでよくある3つの失敗パターンを整理しましょう。
① 自分の都合ばかりを押し付けてしまう
新人の多くが書いてしまう典型的な文面がこちらです。
「一度ご挨拶させてください」
「弊社のサービスをご紹介させていただきたいです」
一見丁寧ですが、これは完全に“自分中心”のメールです。
相手にとってのメリットが何も伝わらず、読む気も起きません。
修正のポイント:
- 「紹介したい」ではなく、「役立てるかもしれない」を意識する
- 「会いたい」ではなく、「短時間でも話を聞いていただく価値がある理由」を添える
たとえば、
「貴社の〇〇の取り組みを拝見し、弊社の〇〇が少しでもお力になれるかと思いご連絡いたしました」
この一文で、印象がガラッと変わります。
② 長文すぎて読む気をなくす
新人ほど、誠実に説明しようとして文章が冗長になりがちです。
しかし、忙しい経営者や担当者は、長文メールを読む時間がありません。
悪い例:
「弊社は○○業を営んでおり、設立以来××の実績があり……」
良い例:
「〇〇のコスト削減に関して、貴社の業界でも導入事例が増えています。
短時間で概要だけご説明させていただければ幸いです。」
ポイントは“1メール1目的”。
「自己紹介」「製品説明」「訪問依頼」などを一度に詰め込まないことです。
③ 件名が弱い・伝わらない
どんなに本文が良くても、件名が魅力的でなければ開封されません。
メールの勝負は“開封3秒”です。
| 悪い件名 | 改善例 |
|---|---|
| ご挨拶のお願い | 【御社のコスト削減ご提案】短時間でお話させてください |
| 新サービスのご案内 | 【導入実績あり】〇〇業界の課題を解決した事例共有 |
| 営業のご連絡 | 【○○担当】〇〇様にご相談したい件がございます |
開封率を上げるポイント:
- 「御社」「貴社」など“相手”を主語にする
- 「具体性」と「短さ」を意識する
- 全角20文字以内で要点を伝える
新人営業がここを押さえるだけで、メールの効果は2倍以上変わります。
【まとめ】アポが取れないメールの共通点
| NGパターン | 問題点 | 改善方向 |
|---|---|---|
| 自分中心の内容 | 相手の関心がない | 相手視点の一文を入れる |
| 長文・説明過多 | 読まれない | 短く目的を絞る |
| 弱い件名 | 開封されない | 具体+相手軸で作る |
アポ取りメールの目的は、「返信をもらう」ことではなく、
“相手が会う気になるきっかけを作る”ことです。
成果を出すアポ取りメールの基本構成
アポ取りメールには、「読まれる構成」と「行動を促す流れ」があります。
上司やベテラン営業のメールを見ても、実はみんな無意識にこの構成を使っているのです。
ここでは、新人でもすぐ実践できる成功率の高いメール構成5ステップを紹介します。
① 件名で“読む理由”を作る
件名はメール全体の入口。
ここが弱いと、本文がどれだけ良くても読まれません。
鉄則:件名には「相手+具体性+短さ」を。
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| ご挨拶のお願い | 【貴社の〇〇施策】に関するご相談 |
| ○○株式会社の○○です | 【業界導入事例あり】〇〇のご提案 |
| 打ち合わせのお願い | 【3分でご確認可】〇〇に関する件 |
ポイント:
- “誰のためのメールか”を一目で伝える
- 数字・事例・業界ワードを入れると効果的
② 冒頭で「なぜあなたに送ったのか」を明確にする
最初の2行で、読者が「これは自分に関係がある」と感じなければ、すぐ離脱されます。
つまり、冒頭での“共通点・理由付け”が勝負です。
例文:
「貴社のホームページを拝見し、〇〇の取り組みに感銘を受け、ご連絡いたしました。」
「同業界の〇〇社様でも導入いただいた事例があり、ご参考になればと思いメールいたしました。」
NG例:
「突然のご連絡失礼いたします。」
→ 定型文すぎて印象ゼロ。
「なぜあなたにメールしたのか」を明確にすることで、“スパムではない”と感じてもらう効果があります。
③ 本文では「相手の課題→自社の価値」を提示する
アポ取りメールでありがちな失敗は、「商品の説明」ばかりしてしまうこと。
本当に大事なのは、「相手の課題を理解している」姿勢を見せることです。
良い構成例:
- 相手の状況・課題の理解を示す
- 自社がそれにどう役立てるかを一言で伝える
- 具体的な行動(面談提案)を提示する
例文:
「近年、〇〇業界でも人手不足が深刻化していると伺っております。
弊社の〇〇サービスでは、業務効率化を実現し、既に〇〇社様で成果を上げています。
短時間で概要だけご紹介させていただければ幸いです。」
④ 日程提案は「選択式」にする
「ご都合の良い日時をご教示ください」では、返信率が下がります。
忙しい相手に「考える時間」を与えてしまうからです。
ベストは“選択肢を出す”こと。
例文:
「恐縮ですが、下記のいずれかで15分ほどお時間いただけませんでしょうか。
・10月29日(火)10:00〜12:00
・10月30日(水)14:00〜16:00
上記以外でもご都合に合わせます。」
この書き方なら、相手は選ぶだけで返信できます。
“考えさせないメール”が成果を生む鉄則です。
⑤ 締めの一文で“やり取りのしやすさ”を残す
最後の一文が「堅い」と、それだけで返信率が下がります。
「柔らかく、余白を残す」ことが大切です。
悪い例:
「何卒よろしくお願い申し上げます。」
良い例:
「ご多忙の中恐縮ですが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
ご返信はお気軽にいただければ幸いです。」
「お気軽に」「短時間で」など、心理的ハードルを下げる言葉を入れるだけで反応率が上がります。
【成功メールの構成5ステップまとめ】
| ステップ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 件名 | 相手軸+具体性で目を引く | 開封率UP |
| ② 冒頭 | なぜ送ったかを明確に | 興味を引く |
| ③ 本文 | 相手課題+解決策 | 信頼を得る |
| ④ 日程提案 | 選択式 | 返信率UP |
| ⑤ 締め | 柔らかいトーン | 行動促進 |
この流れを意識するだけで、「メールしても返事がない営業」から「返信が来る営業」へ変わります。
状況別に使えるアポ取りメール例文集【新人営業向け】
アポ取りメールには“万能テンプレ”は存在しません。
重要なのは、相手の立場・状況・目的に応じて言葉を変える柔軟性です。
ここでは、新人営業でもすぐ使える「状況別の成功例文」を紹介します。
どのパターンも、実際の営業現場で高い返信率を得た構成をベースにしています。
① 初回アプローチ(初めて連絡する企業)
最も基本的なケース。
初回の連絡では「信頼される丁寧さ」と「相手メリット」を両立させることがポイントです。
件名例:
【御社の○○事業に関してご相談させてください】
本文例:
○○株式会社
○○部 ○○様突然のご連絡失礼いたします。
私、△△株式会社の□□と申します。貴社のホームページを拝見し、○○分野での新しい取り組みに非常に関心を持ちました。
弊社では同業他社様への支援実績があり、業務効率化の事例をご紹介できるかと思いご連絡いたしました。お忙しい中恐縮ですが、15分ほどお時間をいただけますと幸いです。
ご都合に合わせ、オンラインでも対応可能です。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
————
△△株式会社 □□
TEL:000-0000-0000
Mail:xxxx@xxxx.co.jp
ポイント:
- 会社紹介を最小限にして“相手中心”に書く
- 15分など短時間を提示してハードルを下げる
② 以前名刺交換した相手へのフォロー
過去に名刺交換や展示会で接点があった相手へのアプローチ。
「覚えてもらっている前提」でメールを送ると失敗します。
“きっかけを再提示”することが重要です。
件名例:
【先日の展示会ではありがとうございました/改めてご提案のお願い】
本文例:
○○株式会社
○○部 ○○様先日は展示会(〇〇EXPO)でお時間をいただき、誠にありがとうございました。
当日ご紹介させていただいた〇〇システムについて、追加の資料をお送りしたくご連絡いたしました。実際に導入いただいた企業様では、業務時間が30%削減された事例も出ております。
よろしければ、10〜15分程度で簡単に概要をご説明させていただければ幸いです。
ご都合の良い日時をお知らせいただけますでしょうか。
今後ともよろしくお願いいたします。
ポイント:
- 「当日話した内容」を具体的に1つだけ入れる
- 「資料送付+説明提案」で自然な流れにする
③ 紹介・つながりを介して連絡する場合
信頼の“橋渡し”がある場合は、それを最大限活用します。
紹介者の名前を出すことで、開封率・返信率ともに跳ね上がります。
件名例:
【○○様よりご紹介を受けご連絡いたしました(△△株式会社)】
本文例:
○○株式会社
○○部 ○○様いつもお世話になっております。
△△株式会社の□□と申します。この度、○○商事の××様よりご紹介をいただき、ご連絡差し上げました。
貴社の〇〇分野での取り組みに弊社の□□サービスが貢献できるのではと思っております。
ご都合のよいお時間に、オンラインまたは訪問で10分ほどお話しさせていただければ幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
ポイント:
- 紹介者の名前は必ず最初に書く
- 提案理由を1行で伝えることで押しつけ感を防ぐ
④ 一度アプローチして返信がなかった相手への再送信
返信がなかった相手にもう一度送る場合、同じ内容の再送はNG。
「前回からの変化」「新しい提案理由」を加えるのが鉄則です。
件名例:
【前回ご案内の件/〇〇の導入事例を共有いたします】
本文例:
○○株式会社
○○部 ○○様先日ご連絡差し上げた件につき、追加情報がございましたので再度ご案内いたします。
最近、同業の□□社様でも弊社サービスをご導入いただき、〇〇%の成果を上げられています。
ご多忙とは存じますが、〇〇様の業務にもお役立ていただける可能性があり、
一度ご意見を伺えれば幸いです。改めて、10分ほどお時間をいただけるお日にちをいただけますでしょうか。
ご検討のほど、何卒よろしくお願いいたします。
ポイント:
- 「前回の追伸」として柔らかく始める
- 新しい“事例・成果・変化”を必ず入れる
⑤ 成約後・既存顧客へのクロスセルアプローチ
既に取引がある顧客には、「感謝+アップデート提案」を意識します。
信頼関係があるからこそ、押しつけではなく“共創”の姿勢で書くのがコツです。
件名例:
【御社向け新サービスのご案内/既存取引に活用可能】
本文例:
○○株式会社
○○部 ○○様いつも大変お世話になっております。
△△株式会社の□□です。日頃より弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
このたび、〇〇機能を追加した新プランがリリースされ、既存顧客様には優先導入枠を設けております。
ご活用いただくことで、□□業務のさらなる効率化が可能になります。
10分ほどお時間を頂戴し、アップデート内容をご説明できればと思います。
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
ポイント:
- 感謝→新情報→提案の順で構成
- 「優先」「限定」「アップデート」など特別感を演出する
【まとめ表】状況別アポ取りメール例文の特徴比較
| 状況 | トーン | 成功のコツ |
|---|---|---|
| 初回連絡 | 丁寧・控えめ | 信頼よりも“興味”を重視 |
| 名刺フォロー | フレンドリー | 会話の再開を意識 |
| 紹介経由 | 誠実・端的 | 紹介者の名前を早めに出す |
| 再送信 | 謙虚+実績強調 | 新情報を必ず入れる |
| 既存顧客 | 感謝+提案 | “押し売り”でなく“共創”を |
このように、アポ取りメールは“誰に・いつ・なぜ送るか”で構成を変えることが成果への近道です。
アポ取りメールの返信率を高める実践テクニック
「メールの構成も例文も分かった。でも、実際に送っても返事がこない…」
そんな新人営業の悩みを解決するのが、返信率を上げる“仕掛け”です。
ここでは、営業メールをより実践的に活かすためのテクニックを紹介します。
① 送信タイミングは「火曜・水曜の午前中」がベスト
意外に見落とされがちなのが「送る時間帯」。
営業メールは内容以上に、“いつ届くか”で反応率が変わります。
| タイミング | 返信率 | コメント |
|---|---|---|
| 月曜午前 | 低い | 週初で忙しく、スルーされやすい |
| 火曜〜水曜午前 | 高い | 業務が落ち着き、確認されやすい |
| 木曜午後 | 中程度 | 案件整理タイムに目を通されやすい |
| 金曜 | 低い | 「週明けに返信しよう」で終わりがち |
おすすめ:
→ 火曜・水曜の「9:30〜11:00」に送るのが最も効果的です。
新人営業のうちは、「努力量」ではなく「タイミング戦略」で差をつけましょう。
② メールは「短文+改行」で読みやすく
スマホで読む担当者も多い現代では、“見た目”が読まれるかどうかを決めます。
悪い例(長文ブロック):
弊社のサービスは〜〜〜であり、〜〜〜な特徴を持ち、〜〜〜と考えております。つきましては…
良い例(短文+改行):
弊社では〇〇業界向けに、
業務効率化のサポートを行っております。特に〇〇社様では、〇〇%のコスト削減効果が出ています。
コツ:
- 1文は40文字以内に収める
- 3行ごとに改行を入れる
- 数字や社名は「太字」「箇条書き」で視認性を上げる
読みやすさは「内容の理解スピード=返信率の高さ」に直結します。
③ フォローリマインドは「3営業日後」が鉄則
返信がない場合、多くの新人は「催促していいのか分からない」と放置します。
しかし、営業メールは1通で終わりではなく“3通で1セット”が基本です。
理想のフォロー間隔:
- 1通目:初回送信
- 2通目:3営業日後に軽くリマインド
- 3通目:1週間後に新情報を添えて再送
フォロー例文:
○○株式会社
○○部 ○○様先日ご案内差し上げた件につき、念のためご確認のお願いでご連絡いたしました。
ご多忙の折恐縮ですが、ご一読いただけましたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
「催促」ではなく、「確認+感謝」のトーンが大切です。
④ 返信率を上げる“最後の一文”を入れる
実は、メールの中で最も重要なのは「最後の一文」です。
ここに“人間味のある一言”を入れることで、返信率が驚くほど上がります。
例文:
- 「お忙しい時期かと存じますので、ご返信はご都合の良いタイミングで結構です。」
- 「短時間でも構いませんので、一度お話できると嬉しく思います。」
- 「無理にとは申しませんが、ご興味を持っていただけるよう努めます。」
一方的に「お願いします」と言うよりも、“配慮+誠意”のトーンを添えることで、人は心を動かされます。
⑤ テンプレを使いすぎない
テンプレートは便利ですが、相手によって微調整しなければ逆効果になります。
特に、同じ文面を大量に送るとスパム扱いされるリスクもあります。
修正すべきポイント:
- 相手企業名・担当者名
- 相手の業界やニュースに触れる一文
- 事例紹介の部分(できるだけ業界近い例を使う)
たった数行の修正で、メールの“生きた熱量”が全く変わります。
【実践ポイントまとめ】
| テクニック | 効果 | 実践頻度 |
|---|---|---|
| 火水午前に送信 | 開封率UP | 常時 |
| 短文+改行 | 読みやすさUP | 全文に適用 |
| 3営業日後にフォロー | 返信率UP | 1通目→2通目間 |
| 最後の一言を工夫 | 感情的共感UP | 毎回必須 |
| テンプレ修正 | 誠実さUP | 各社ごとに実施 |
アポ取りメールで大切なのは、「メールを送る」ことではなく、
“相手の時間を奪わずに、興味を持たせる”こと。
ここを意識できれば、新人でも上位営業と肩を並べられます。
まとめ 新人営業は「メールで信頼をつくる」ことから始めよう
アポ取りメールは、ただの連絡手段ではありません。
それは、相手に自分の誠意と意図を伝える“最初の営業トーク”です。
営業の本質は、電話でも訪問でもなく「信頼づくり」。
メールの段階で相手が「この人は感じがいい」「話を聞いてみよう」と思えば、
その瞬間にあなたの営業はすでに半分成功しています。
本記事のポイントを振り返りましょう。
| 覚えておきたいポイント | 内容 |
|---|---|
| 失敗例を避ける | 自分中心・長文・弱い件名をやめる |
| 成功の構成 | 件名→理由→課題→提案→選択日程→柔らかい締め |
| 状況別対応 | 初回・紹介・再送・既存顧客でトーンを変える |
| 実践テク | 火水午前に送信・短文・3日後フォロー・人間味の一文 |
| 目的 | メールで“信頼の入口”をつくる |
新人営業のうちは、即成果よりも「返してもらえるメールを書く力」を鍛えましょう。
それが、商談のチャンスを何倍にも増やし、将来の営業基盤になります。
たった一通のメールが、あなたの営業人生を変える――。
その意識を持って、今日からアポ取りメールを磨いていきましょう。

