新人営業が稟議を通すコツ 社内決裁を最短で突破する営業思考と戦略

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「提案はうまくいったのに、社内稟議で止まった…」
新人営業が最初にぶつかる壁のひとつが、この「稟議の通し方」問題です。
どんなに良い提案でも、社内の決裁ルートを突破できなければ受注にはつながりません。

実は、稟議を通すためのコツは“根回し”や“勢い”ではなく、論理の積み上げと相手の心理を読む力にあります。
この記事では、新人営業でもすぐ実践できる「稟議を通すための営業思考」と「社内決裁を最短で通す戦略」を、テンプレと事例を交えて徹底的に解説します。

「なぜ通らないのか」から「どうすれば通るのか」までを明確に整理することで、
この記事を読み終えたときには、稟議を“味方”につける営業力が手に入ります。

目次

稟議とは何かを理解する 新人営業が最初に知るべき前提

営業にとって「稟議を通す」という言葉はよく聞きますが、
多くの新人がその本質を誤解しています。
稟議とは単に「上司の承認をもらうための手続き」ではなく、
社内の“合意形成を可視化するプロセス”です。


稟議は「社内営業」の最終ステージ

稟議書は、決裁者に“意思決定の材料”を提供するための文書です。
つまり、営業が顧客の課題解決を提案するのと同じように、
社内に対して「なぜこの案件を進めるべきなのか」を論理的に提案する行為が稟議なのです。

要素意味営業での対応イメージ
稟議社内決裁プロセス社内の“顧客”に提案する行為
決裁者上長・部門長・経営層顧客でいう“購買担当者”
稟議書意思決定の資料提案書・ROI資料に近い
合意形成稟議が通る条件“社内の納得”を取ること

このように整理すると、稟議は「社内営業」そのもの。
つまり、外部に対して行う営業力と同様、社内でも“説得力のあるロジック”が求められるのです。


稟議が通らない新人営業に共通する3つの誤解

新人営業の多くが「稟議を通せない」と悩むとき、
そこには次の3つの誤解が潜んでいます。

誤解実際の課題
稟議は上司の判断だけで決まる上司もさらに上に説明するための“材料”が必要
案件の規模が小さいから簡単に通る少額でも「社内方針との整合性」で止まることがある
稟議書のフォーマットを埋めれば十分書き方より“根拠の筋道”が重視される

つまり、稟議が通らない理由は「内容の弱さ」ではなく、
“社内をどう動かすか”という思考不足にあります。

稟議を通す力とは、社内の構造を理解し、論理と信頼で決裁を導く力。
営業の基礎スキルであり、成長の分岐点になるのです。

稟議を通す営業の思考 “社内を動かす”3つの鍵

稟議を通すのは、単に文書を出すことではありません。
社内の人間関係・論理構造・心理の流れを読み取り、「誰に」「どんな順番で」「どんな形で伝えるか」を設計することが重要です。
このセクションでは、稟議を通すための営業的思考の3つの鍵を解説します。


① 「意思決定の構造」を把握する

新人営業がまずつまずくのは、「誰が最終決裁者なのか分からない」状態です。
ここを曖昧にしたまま稟議を出してしまうと、途中で止まる・戻される・保留になるといった事態が発生します。

稟議は“組織のピラミッド構造”の中で動いています。
そのため、稟議書を通す前に以下の3点を明確にしましょう。

チェック項目内容行動ポイント
誰が決裁者か最終的にサインする人物上司に確認・過去案件を参照
誰が影響力を持つか稟議の途中で意見できる人部門長・経理・管理職など
誰が反対する可能性があるか稟議を止めるリスク人物事前に意見を聞く・根回しする

つまり、稟議を通すための第一歩は「社内マップを描くこと」です。
稟議は人が通すものであり、文書だけで動くものではありません。


② 「数字とストーリー」で通すロジックを組む

次に重要なのが、数字とストーリーの両立です。
上司や決裁者は、感情ではなく「納得できる根拠」で動きます。
そのため、稟議書では次の要素を明確に整理する必要があります。

要素内容書くときのポイント
投資理由なぜこの案件を進めるのか会社方針との整合性を明示
期待効果導入後の成果や改善効果売上・コスト・効率など具体的な数字で
リスク想定されるデメリットリスク軽減策を添える
代替案他の選択肢との比較“これが最適”という根拠を提示

さらに、単に数値を並べるだけでは不十分です。
数字を“ストーリーで語る”ことが稟議を通す鍵になります。

例:

現在A業務に週10時間を要しています。
本ツール導入により月40時間削減が見込まれ、年間で約120万円の人件費削減効果が期待できます。

このように、「現状→課題→効果」をストーリーで繋ぐことで、稟議が通りやすくなります。


③ 「稟議を通したい人」ではなく「通す人」を味方につける

稟議を通すには、稟議を“書く人”ではなく“通す人”を意識する必要があります。
新人営業が陥りがちなのは、「上司に出す=それで終わり」という思考。
しかし、上司もまた上司に説明する立場にあります。

つまり、あなたの稟議は「上司が上司を説得するための武器」でなければならない。
ここが分かっている営業は、稟議を通すのが早いです。

ポイントは、“上司の代弁者”になる意識を持つこと。

  • 上司が経営層に説明する時、何を聞かれるか?
  • どの数字・どの実績を押さえれば自信を持って話せるか?
  • 稟議書のどのページを一番見せたいと思うか?

これらを想定して稟議書を組み立てると、決裁のスピードが格段に上がります。


この3つの思考(構造・ロジック・人物)を理解すれば、
「稟議が通らない営業」から「稟議を動かす営業」へ進化できます。

新人営業でも通る稟議書テンプレートと書き方のコツ

ここからは、実際に新人営業でも使える稟議書テンプレートと、書き方のコツを具体的に解説します。
「どんなふうに書けば通るのか?」が明確になるよう、実例ベースで構成を紹介します。


稟議書の基本構成(テンプレート)

稟議書にはいくつかの形式がありますが、多くの企業で共通するのは以下の構成です。

セクション内容ポイント
件名案件名・提案内容を簡潔に記載一目で分かるタイトルにする
背景・目的稟議の理由や課題の説明「なぜ必要か」を明確に
提案内容導入・発注・実施の詳細誰が・何を・いつ実施するか
期待効果導入後の成果・改善内容数値・事例を交えて定量化
費用投資額・支払条件ROI(費用対効果)を明示
リスク・対策想定リスクと対応策「問題を見越している」印象を与える
参考資料提案書・見積書など添付資料決裁者の判断材料を増やす

稟議書テンプレート例(新人営業向け)

実際の文面例として、以下のように書くと効果的です。


件名

営業支援ツール「SalesFlow」導入に関する稟議申請

背景・目的

現在、営業部全体で案件管理にスプレッドシートを使用しており、
情報共有の遅れや重複入力などの課題が発生しています。
これらを改善し、営業効率を高める目的で営業支援ツールの導入を検討いたします。

提案内容

株式会社◯◯の「SalesFlow」を月額10万円で導入し、まずは営業1課にてトライアル運用を実施します。
初期導入後3ヶ月間の効果を検証し、全社展開の可否を判断します。

期待効果

・案件進捗の可視化により、上長のマネジメント負荷を軽減
・月間レポート作成時間を約70%削減(週3時間 → 1時間)
・営業活動データの蓄積により、受注率10%向上を目指す

費用

初期費用 5万円
月額利用料 10万円 × 3ヶ月(トライアル期間)
合計:35万円(税別)

リスク・対策

・ツール操作に慣れるまで工数がかかる → 初期研修を実施予定
・利用定着が不十分な可能性 → KPI(ログイン率80%)を設定して運用管理

参考資料

・製品概要資料(別紙1)
・見積書(別紙2)
・導入効果レポート(別紙3)


書き方の3つのコツ

① 「Why」を最初に書く

決裁者が最初に見るのは「なぜこれが必要なのか」です。
冒頭の背景・目的部分で、“社内の課題と会社方針の接点”を意識して書きましょう。

例:「会社全体で業務効率化が求められている中、営業部門でも〇〇の改善が急務となっています。」

② 「効果は数字で」「リスクは具体で」

稟議は感情よりも数字と事実で動くものです。
また、リスクを隠すよりも「対策を示している方が信頼される」という点も忘れずに。

③ 「決裁者が説明しやすい稟議書」を作る

あなたが通したいのではなく、上司が“さらに上に通しやすい稟議書”を意識しましょう。
図表・比較表・ROIなどを入れると、上司が説明しやすくなります。


このテンプレートをベースに、「背景→提案→効果→費用→対策」という流れを整えることで、
新人営業でも筋が通った稟議書を作成できるようになります。

稟議を通すための社内コミュニケーション戦略

稟議書の完成度が高くても、それだけで通るとは限りません。
稟議を通す最大のカギは、社内でのコミュニケーション設計にあります。
新人営業が苦手とする「根回し」「情報共有」「決裁者への伝え方」こそ、通過率を左右するポイントです。

ここでは、稟議を通すための“社内営業戦略”を3ステップで解説します。


ステップ① 「通す前」に“味方”を作る

稟議書は提出してからが勝負ではありません。
実は、提出する前にどれだけ“味方を作れるか”で9割が決まります。

社内には、稟議を通す際に次のような“見えないステークホルダー”が存在します。

立場役割アプローチ方法
直属の上司稟議の第一承認者提出前に草案を見せて相談する
経理・総務コスト・契約の妥当性をチェック条件面で懸念がないか事前確認
部門長・関連部署部門方針や影響を判断「導入後どう連携するか」を説明
現場メンバー実際に使う人利便性や負担感をヒアリング

これらの関係者と“非公式に対話”しておくことで、稟議提出時の反発を最小化できます。
つまり、稟議は「出す前に通しておく」のが鉄則です。


ステップ② 「稟議書を説明できる状態」に仕上げる

多くの新人営業がやりがちな失敗は、「稟議書を提出して終わり」にしてしまうこと。
実際には、上司が経営層へ説明する際にあなたが直接質問を受ける機会が訪れます。
その時、準備不足だと一瞬で信頼を失います。

想定質問に備えるため、次のようなチェックリストを活用しましょう。

想定質問準備すべき回答の方向性
なぜこのタイミングなのか?「業務負荷・市場動向・社内施策の時期」を根拠に説明
他社比較は?価格・サポート・実績などの比較表を用意
効果の裏付けは?他社導入事例や試算データを引用
リスクは?懸念点を率直に示し、対策を添える

このように、「稟議を提出する=プレゼンの始まり」と考えることが、通過率を高める最大のポイントです。


ステップ③ 「通らなかった稟議」こそが成長のチャンス

通らない稟議には、必ず理由があります。
そしてその理由のほとんどは、「論理の穴」か「社内の温度差」です。

通らなかったら落ち込むのではなく、次のように分析しましょう。

稟議が通らなかった理由改善の方向性
数字の裏付けが弱い定量データ・比較表を補強
コストに対する効果が不明確ROI(投資対効果)を追記
上層部の関心事とズレた経営視点(利益・リスク)に合わせる
他部署との調整不足事前共有と協力体制の明確化

特に、「なぜ止まったのか」を自分のメモとして残しておくことが重要です。
これを5件、10件と繰り返していくうちに、「通る稟議の型」が自分の中に蓄積されていきます。


稟議を通すとは、社内で信頼を積み上げることでもあります。
新人営業のうちは、「通らなかった稟議も財産」と捉えて、成長の材料にしましょう。

稟議通過率を高める“決裁者目線”のストーリー設計

新人営業が稟議を通す上で最大のポイントは、「決裁者の思考」を読むことです。
稟議書の提出先は上司であっても、最終的に判断するのは経営層や部門長です。
彼らの目線を理解して構成することで、稟議通過率は劇的に上がります。


① 決裁者は“論理”よりも“整合性”を見ている

決裁者がチェックしているのは、稟議書の「正しさ」よりも「整合性」です。
つまり、会社全体の方向性とズレていないかが最も重要です。

決裁者のチェックポイント意味すること書くときのコツ
経営方針との整合性会社の中期目標・方針に沿っているか「全社施策と連動している」旨を明記
費用対効果の合理性支出に対して見合う効果があるか数値と期間を明示する
実現可能性担当者の経験・サポート体制があるか実施スケジュールや協力体制を添える
リスク管理万一のトラブルへの備えがあるか事前対策や責任範囲を明確化

この「整合性」を抑えた稟議は、上層部が読みやすく、安心して承認できます。
逆に「自分の部署だけが得する稟議」や「目的が曖昧な稟議」は、どれだけ数字を並べても通りません。


② 「感情を動かすデータ」を入れる

決裁者は理屈で判断しますが、最終的には“感情”で決裁します。
つまり、「これはやった方が良い」と“納得”できるかどうかがすべてです。

新人営業でもできる効果的な方法は、「小さな成功事例」や「現場の声」を入れることです。

例文:

「実際に3週間のトライアルを実施した結果、担当者Aから『データ集計が格段に早くなった』との声をいただいています。」

このような一文があるだけで、稟議書の説得力は数倍に上がります。
数字×実感の両面で構成することで、「数字の冷たさ」と「現場のリアリティ」が共存する稟議になります。


③ 「決裁者が話したくなる一文」を入れる

優れた稟議書には、必ず“上層部が会議で使いたくなる一文”が入っています。
これはいわば、「決裁者の口から出るセリフを先回りして書く」テクニックです。

たとえば次のような一文があると、稟議通過率がぐっと上がります。

  • 「今回の導入により、営業部の年間生産性を約15%向上できる見込みです。」
  • 「この施策は、全社的なデジタル化方針の一環として位置づけられます。」
  • 「コストを抑えつつ、早期のROI実現が可能です。」

この一文があると、上層部は「これは他の会議でも説明しやすいな」と感じます。
つまり、稟議を通すための最短ルートは“上司の説明を代筆すること”です。


④ 稟議を「資料」ではなく「社内ストーリー」として作る

新人営業が本当に成長する瞬間は、稟議書を「書類」ではなく「社内のストーリー」として語れるようになった時です。
つまり、「この提案が通ることで誰が助かるのか」「どんな変化が起きるのか」を語れるようになること。

そのためには、以下のストーリー設計を使うと効果的です。

ストーリー構成内容例
現状営業チームが〇〇の課題を抱えている
理由この課題が解決できないと〇〇の損失が発生する
解決策ツール導入により〇〇を削減できる
効果年間で〇〇万円のコスト削減が見込める
社内への影響他部署への波及効果も期待できる

これをベースに稟議書を組み立てれば、数字だけではなく「動機のある稟議」になります。


稟議とは、社内を説得するための物語です。
数字で裏づけし、ストーリーで共感させ、上司が語れる構成にする。
この3点を意識すれば、あなたの稟議は「止まらない資料」へと進化します。

まとめ 新人営業が稟議を通す最短ルート

稟議は単なる社内手続きではなく、「社内営業の最終ステージ」です。
どんなに優れた提案も、稟議を通せなければ成果にはつながりません。

本記事で紹介した内容をまとめると、稟議を通す最短ルートは次の5ステップです。

ステップ行動ポイント
① 構造を理解する社内決裁ルート・関係者を把握稟議は人が通す
② ロジックを組む数字とストーリーをセットにする「なぜ今か」を説明する
③ 味方を作る提出前に関係者へ共有・相談根回しではなく“共感作り”
④ 決裁者目線を意識経営方針・整合性・ROIを明示上司が説明しやすい一文を入れる
⑤ 振り返りを記録通らなかった理由を分析自分の“稟議の型”を確立する

新人営業が覚えておくべき真実はひとつ。
「稟議は上司の仕事を助けるための資料」ということです。
上司を説得するのではなく、上司が上層部を説得できるよう支援する。
この発想を持つだけで、あなたの稟議は通り始めます。

稟議を通す力は、営業力そのものです。
通すたびに社内での信頼が積み上がり、あなたの提案はより速く、より大きく動き出します。

今日から、“止まらない稟議”をつくる営業を目指しましょう。


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