「無料なのに、なぜ断られるの?」
新人営業が最初につまずく壁が、「無料トライアルを勧めても断られる」という場面です。
“無料”だから受けてくれると思っていたのに、「今はいいです」「興味ありません」と断られる。
そんな経験をして落ち込んだ人も多いでしょう。
しかし実は、断られた瞬間こそが営業の腕の見せどころ。
「なぜ断られたのか」を正しく理解し、会話をつなぐことができれば、商談のチャンスはまだ残っています。
この記事では、現役トップ営業が実践する
「無料トライアルを断られた時の切り返し方」「断られる理由別対応」「次につなげる質問例」を徹底解説。
“断られた”を“関係の始まり”に変える、実践的な営業スキルを身につけましょう。
「無料トライアルを断られる」本当の理由を理解する
新人営業が陥りがちなのは、「無料だから断られないはず」という思い込みです。
しかし、顧客が断るのには、必ず心理的・実務的な理由があります。
ここを正しく理解しないまま切り返そうとすると、逆に信頼を損ねてしまいます。
1. 顧客が無料トライアルを断る主な理由
| 理由カテゴリ | 顧客の本音 | 背景 |
|---|---|---|
| 時間的理由 | 「忙しい」「今はタイミングじゃない」 | トライアル導入にリソースを割けない |
| 経験的理由 | 「以前試したけど意味がなかった」 | 過去の失敗体験・他社の印象 |
| 感情的理由 | 「面倒くさそう」「何か売りつけられそう」 | 営業への不信・警戒心 |
| 組織的理由 | 「上に確認しないと」「決裁が必要」 | 社内プロセスの制約 |
| 判断保留 | 「また検討します」 | 興味はあるが緊急性が低い |
つまり、「無料」だから受けてくれないのではなく、
“無料であってもリスクがある”と感じているのです。
2. 無料トライアル=顧客にとって「負担」
新人営業は“無料”をメリットと考えますが、顧客からすればそれでも手間がかかります。
顧客が感じる負担の例
- 導入設定や社内共有に時間を使う
- 効果が出なかったら上司に説明が必要
- 営業が後でしつこく来そう
つまり、顧客の頭の中ではこうなっています。
「無料トライアル=“タダ”ではなく“面倒”」
この認識を理解せずに「無料ですので!」と押すと、
逆に「断りたい理由」を強化してしまいます。
3. 断られた時にやってはいけないNG対応
| NG行動 | 問題点 |
|---|---|
| 「無料なのにどうしてですか?」と食い下がる | 圧迫感を与える・防御反応を強める |
| 「すぐ終わりますから!」と押し切る | 顧客のリズムを無視してしまう |
| 「ではまた機会があれば…」で終わる | 次の機会が永遠に来ない |
断られた瞬間に焦るのではなく、
「なぜ断られたのか」を聞くことが“次のチャンス”を生む第一歩です。
無料トライアルを断られた時の正しい切り返しステップ
顧客が「無料トライアルは結構です」と言った瞬間、
多くの新人営業はその場で諦めてしまいます。
しかし、断られた後こそ営業の真価が問われるのです。
ここでは、トップ営業が実践している「5ステップの切り返し術」を紹介します。
この流れを身につければ、“断られた”を“会話が続く”に変えられます。
ステップ①:まずは一度、断りを受け止める
顧客の言葉を遮らず、「理解を示す」ことで心理的ハードルを下げます。
悪い例
「そう言わずに、一度だけお試しを!」(←押しすぎ)
良い例
「承知しました。実際に試してみるのも手間がかかりますよね。」
ポイント:
まず“共感”を示すことで、相手の警戒心が解けます。
人は「理解してくれた相手」にだけ本音を話します。
ステップ②:「断る理由」を優しく確認する
次に、断られた背景を探る質問をします。
目的は「説得」ではなく、「相手の事情を知ること」です。
質問例
- 「もしよろしければ、今はどのような理由でご検討が難しい状況でしょうか?」
- 「過去に試されたことがあって、あまり良い結果ではなかった感じでしょうか?」
- 「タイミングのご都合が合わない感じでしょうか?」
この質問で、顧客の本当の理由(忙しい・信用できない・効果を疑っているなど)が分かります。
“理由を聞けた瞬間”が、切り返しのチャンスです。
ステップ③:断り理由に合わせた切り返しをする
顧客の断り理由によって、効果的な返答は変わります。
以下のように「型」を覚えておくと、落ち着いて対応できます。
| 断り理由 | 顧客の本音 | 切り返し例 |
|---|---|---|
| 時間がない | 面倒くさい・手が回らない | 「設定などはすべてこちらでサポートします。お手間はほとんどありません。」 |
| 興味がない | 効果を信じていない | 「実際に使っていただいた方の8割が“想像以上だった”と評価されています。」 |
| すでに他社を使っている | 比較するのが面倒 | 「他社さんを利用中でも、併用で試された事例が多いです。」 |
| 社内稟議が必要 | 動きづらい | 「資料だけでも共有させていただければ、検討時に参考になると思います。」 |
重要なのは、「再度提案」ではなく「ハードルを下げること」です。
「やってみてもいいかも」と思える余地を作ります。
ステップ④:「トライアル以外の価値」を提案する
トライアル自体が断られても、商談の“関係”まで終わりではありません。
切り返し例
「では、もしよければ他社さんで実施された時の課題や結果などを一度共有いただけますか?
そこを基に御社に合った改善提案をお持ちします。」「実際に使ってみる前に、導入した他社様の事例だけご紹介するのはいかがでしょう?」
無料トライアル=接点の1つにすぎない。
断られても、別の角度で会話を続けられます。
ステップ⑤:「次の機会」を約束して終える
最後は、次の接点を“自然に”確保します。
焦らず、柔らかく提案しましょう。
例
「今はタイミングが合わないとのことですので、
来月頃にまた市場動向の資料をお持ちしてお伺いしてもよろしいでしょうか?」「実際に導入が進んだ企業様の成果データをお送りしても構いませんか?」
目的は“今すぐ”ではなく、“将来の信頼”。
無料トライアルを“断られた”ではなく、“会話の入口を得た”と考えましょう。
断られた理由別・実践トーク例集
ここでは、実際に営業現場でよくある「断られ方」ごとに、
即使える実践トーク例を紹介します。
新人営業でも自然に使えるように、会話の流れをそのまま示します。
ケース①:「今忙しいので…」
悪い対応例
「そうですよね…ではまたの機会にお願いします。」
→ 会話終了。二度と接点が戻らない典型パターン。
良い対応例
「そうですよね、ちょうどお忙しい時期かと思います。
実際にご利用企業さまの中でも、“5分で概要だけ知れて助かった”と仰る方が多いんです。
1分だけ、概要だけご紹介してもよろしいでしょうか?」
ポイント:
“営業しない姿勢”を見せると、顧客は警戒を解きます。
短時間・軽負担を打ち出すことがコツ。
ケース②:「他社さんで試したけど意味がなかった」
良い対応例
「なるほど、他社さんで試されたんですね。
ちなみに、その時はどんな点が“いまいち”と感じられましたか?」
「弊社のトライアルは“効果検証の仕組み”が少し異なります。
比較の観点でも一度ご覧いただく価値はあると思います。」
ポイント:
過去の体験を聞き出すことで、「同じ轍は踏まない提案」が可能になります。
顧客が語った“不満点”を、そのままあなたの提案材料に。
ケース③:「無料ってことは後で営業されるんでしょ?」
良い対応例
「正直にありがとうございます。確かにそう感じられる方は多いです。
弊社では“導入判断を営業がしない仕組み”を取っております。
トライアル終了後に継続を希望される場合のみ、別チームが対応します。」
ポイント:
誠実に「その通り」と一度受け止める。
そして“透明性”を明確にする。これが最も信頼を得る切り返しです。
ケース④:「上に相談しないと動けない」
良い対応例
「承知しました。もし差し支えなければ、
そのご相談時に使える“1枚資料”をお渡ししてもよろしいですか?
上長の方も判断しやすいように、導入効果を整理したものです。」
ポイント:
トライアルを押さず、「判断材料の提供」に切り替える。
資料提供=次の接点確保になります。
ケース⑤:「うちは今のやり方で満足してるから」
良い対応例
「素晴らしいですね。御社のようにうまく運用されている企業様ほど、
実は“ちょっとした効率改善”で成果がさらに上がるケースも多いです。
他社様の改善事例だけでもご紹介してよろしいですか?」
ポイント:
“今のままでいい”という顧客には、「成功企業も改善している」という視点を提供。
プライドを刺激せず、再検討の余地を作ります。
ケース⑥:「興味ないです」
良い対応例
「率直にありがとうございます。
差し支えなければ、“興味がわかない”と感じられたのは、どのあたりでしたか?」
「もしよければ、同業他社さんの活用例だけ一度お見せしても構いませんか?」
ポイント:
「興味ない」=「まだ必要性を感じていない」。
原因を掘り下げる質問に変えると、会話が再び開けます。
ケース⑦:「今はタイミングじゃない」
良い対応例
「確かに、導入タイミングって大切ですよね。
実は、他社様でも“来期に向けて今から準備”というケースが多いんです。
来期の施策検討用として、最新データだけお渡ししてもよろしいですか?」
ポイント:
“今やらない”顧客にも、「将来の準備」として接点を残す。
この一言で、“今後につながる”営業に変わります。
ケース⑧:「効果があるか分からない」
良い対応例
「そうですよね、実際にやってみないと分かりにくいですよね。
ですので、トライアル期間中は“効果測定レポート”を弊社が代わりに出します。
結果が可視化できる形でご確認いただけます。」
ポイント:
“疑念”には“数値で証明”。
効果を“見える化”する提案が信頼につながります。
トークバリエーションまとめ
| 顧客の断り理由 | 悪い対応 | 良い対応の方向性 | キーワード |
|---|---|---|---|
| 忙しい | 退く | 軽負担を提示 | 「5分で概要」 |
| 過去の失敗 | 無視 | 不満を掘る | 「何がうまくいかなかったか」 |
| 不信感 | ごまかす | 正直+透明性 | 「営業しません」 |
| 社内都合 | 押す | 判断材料を渡す | 「上長が判断しやすい資料」 |
| 現状満足 | 否定 | 共感+比較 | 「成功企業も改善」 |
| 興味なし | 終わらせる | 理由を聞く | 「なぜそう感じたか」 |
| タイミング | 放置 | 未来の接点 | 「来期準備」 |
| 効果不明 | 抽象的 | 数値で補う | 「レポート提供」 |
断られた理由の数だけ、改善のチャンスがある。
トークの引き出しを増やすほど、営業の武器は増えるのです。
まとめ
新人営業にとって「無料トライアルを断られた時」は、最も落ち込みやすい瞬間です。
しかし、実際はその場こそが信頼を得るチャンスであり、
上手な対応ができれば“断り”を“関係づくり”へ変えられます。
本記事の要点まとめ
| カテゴリ | ポイント | 効果 |
|---|---|---|
| 顧客心理 | 「無料=負担」と感じる | 無理な押し売りを避ける意識を持つ |
| 基本対応 | 否定せず受け止める → 理由を探る | 本音を引き出せる |
| 切り返し方 | 理由に応じて“ハードルを下げる” | 会話が再開しやすくなる |
| NG行動 | 食い下がる・即撤退 | 信頼・再チャンスを失う |
| ゴール | “今すぐ契約”ではなく“次の接点” | 長期的関係構築ができる |
営業の仕事は、「断られた後」に差が出る職業です。
無料トライアルを断られた瞬間も、あなたの一言次第で結果は変わります。
焦らず、受け止め、理由を探り、相手の不安を取り除く。
その積み重ねこそが、トップ営業への最短ルートです。
「無料だから」ではなく、「あなただから頼みたい」と言われる営業へ。
断られた時こそ、営業の本領が試される瞬間です。

